左から、内田英治(監督・脚本)、森田望智(恵美/黒木香役)、山田孝之(村西とおる役)、武正晴(総監督) 左から、内田英治(監督・脚本)、森田望智(恵美/黒木香役)、山田孝之(村西とおる役)、武正晴(総監督)

伝説の監督・村西とおるの破天荒な生きざまが、ドラマになった。Netflixがこの8月8日に世界190ヵ国に向けて同時配信した『全裸監督』(全8話)だ。シーズン1の反響を受け、16日には早くもシーズン2の制作が発表された。

村西とおるを演じるのは山田孝之、後に村西の運命を変える女優「黒木香」として一世を風靡(ふうび)する大学生の恵美役は森田望智(みさと)が熱演。そのほか多くの豪華キャストの熱演を、綿密な時代考証にもとづくこだわりまくりな80年代の小道具・セットがひきたてる。

今回、本作のキーマンである4人、山田孝之森田望智内田英治(監督・脚本)、武正晴(総監督)が集まり、意気込みから裏話まで語りつくした!

■村西とおるの「ね」のタイミング

──まず『全裸監督』への出演を決めるに至った経緯をお聞かせください。

山田孝之(以下、山田) 最初に話があったのは2年半前です。『全裸監督 村西とおる伝』(原作本・本橋信宏著、太田出版)を基にしたドラマで、Netflixから「山田さんに村西とおるをやってもらいたいんですが」っていう感じで。

もう、本の帯(*)見て決めました。「あ、絶対面白くなるな」と。

(*)【前科7犯。借金50億。米国司法当局から懲役370年求刑。奇跡の男か、稀代の大ボラ吹きか。"AVの帝王"と呼ばれた裸の男の半生。】現在はドラマ化に合わせて違う帯になっている。

内田英治(以下、内田) 山田くんは、会議とかも率先して出てたよね。一発目の脚本の打ち合わせも。

山田 打ち合わせの場所が家から近かったので、よくひとりで行ってました(笑)。

──村西とおるという異色の人物を演じるのは、これまでの山田さんのパブリックイメージからすると非常にチャレンジングに思えるのですが、抵抗はありませんでしたか? 好感度が下がるんじゃないかとか......。

山田 こんな面白い作品に出て、嫌われるならばそれでもいいと思いました。

内田 いいですねー! 現場で心配になって聞いちゃいましたもん。「大丈夫?」って(笑)。

──劇中では独特のハイテンションな話術で人を動かす「村西監督」に対し、普段の「村西とおる」は徹底してクールというふうに演じ分けていましたが、その落差は意識されていたのでしょうか?

山田 いや、普通に、フラットにいただけです。

だって(村西さんは)テレビで高校球児が泣いてるの見て、「これだ!」と思って台本書き出す人ですから。ものを創る人は常に何かを見て、着想を得ようといろいろ考えてる。それを傍(はた)から見ると、今おっしゃったようにクールに感じられることもあるのかもしれません。

武正晴(以下、) すごいよね、手書きでねえ、あんなねえ、よくわかんないもの書いてねえ(笑)。

内田 だんだん(山田くんは)村西化してったよね。

 第2話のあたりからちょっと変わってきたじゃないですか。俺はあのラッシュ(未編集の収録映像)を見たときに「おお、来た来た来た!」って感じがした。片鱗(へんりん)が見えてきたって。

内田 本人が、もう演じきってるから。あの何ヵ月かのなかで、ひとつの人生が凝縮されてるように成長してゆく。見ていて面白かったですね。

──「村西監督」の演技は本人に生き写しでしたね。あれはどうやって習得したのですか?

山田 それは村西さんの作品や、テレビ出演した際の動画を見て、こんなペースで話すのかとか、なんとなくですけどね。例えば「会話中にこのタイミングで『ね』を入れて念を押すのか」みたいな..................ねぇ?

一同 (笑)

山田 ほんとだったら相手が返事するはずのタイミングで「ね」って言うから相手も出れなくて、そしてまた次のフレーズにいくんです。(武氏に)1話の「ね」はすごい気に入ってましたよね?

 俺、大好きですね。

山田 ねっ!

 って誰に言ってんのか(笑)。ただ、ああいうのがたまんないんですよ。台本に書かれている以外のところでフワッと山田さんの言葉が出てくるじゃない?

山田 演じていてもめちゃくちゃ楽しかったです。現場の空気もすごく良かったし、こんな現場はなかなかないなと。

森田望智、山田孝之 森田望智、山田孝之

■"ライバル"の演技に涙を流して......

──ヒロインの恵美(後の黒木香)を演じた森田さんは、オーディションから参加したそうですね。

森田望智(以下、森田) はい。こんな大きな役でオーディションがあるのはすごいことだと思いまして。

 キャスティングでいく案もあったんだけど、僕個人としては「この役をやる女優いないだろう」と思ってた。オーディションしかないよって。

内田 海外の人に見ていただくことも考えれば、日本で有名な女優がやるよりは、まっさらな人がやったほうがいいんじゃないかっていうのが一致した意見になっていたと思います。

 どこかにいい人がいないかなあと思ってたら、ドア開けて入ってきたんです、この人が。

森田 (黒木香の)しゃべり方は独特ですし、強烈で。笑顔とかはちょっと頑張ったら似せられるかな、程度で、本当に難しいなあと思いながらオーディションに行きました。

内田 今でも覚えてるんだけど、オーディションで一緒に受けたほかの候補者が、けっこう悲しい、ハードな場面を演じるのを森田さんが見てて、ポロっと泣いたんです。その表情がすごいよかった。

 俺も覚えてる。オーディション中に人がやってるのを見てそこに感情を乗っけているから、なんか面白いなと思って。感受性が豊か。

あとね、ちゃんとわき毛を生やしてきた(笑)。

内田 そうそう。

森田 生やしたと言いますか......。

 健気(けなげ)にやってるなあと思いました。この人だったら、何か可能性があるなと。

厳格な母(小雪)のもとで本当の自分を押し込めていた大学生の恵美、のちに黒木香となる彼女(写真、森田望智)は村西とおると運命的な出会いを果たす 厳格な母(小雪)のもとで本当の自分を押し込めていた大学生の恵美、のちに黒木香となる彼女(写真、森田望智)は村西とおると運命的な出会いを果たす

──すみません。わき毛を生やしたというのは......?

森田 台本に「わき毛を見せる」みたいに書いてあって、ないから描かなきゃと思って。

内田 描いたの?

森田 そうです。アイラインでピョンピョンって。オーディションまで日がなかったので。

──そこまでやってきた方は森田さん以外にいなかったと。

内田 いなかったですね。

 これ、重要ですよ(笑)。

森田 いえいえ、そんな。

内田 やっぱり彼女は、素の状態の、本当に一喜一憂してるのがハマったなと思います。

■ハードだったAVの撮影シーン

──『全裸監督』は80年代のアダルトビデオ業界を描いた青春群像劇ということで、AVの撮影シーンも出てきます。ここまでやるのか、と感動したのですが、演じる側としてはいかがでしょう。

山田 (森田さんに)筋肉痛、大丈夫でした?

森田 私はそんなに。リハーサルで武監督に教えてもらった動きをおうちで復習したおかげかな。

山田 若いですね。僕、全身筋肉痛になりました。次の日に。

森田 男性のほうが大変ですよね。

山田 同じぐらい動いてましたけどね。僕、「カット」がかかるごとに毎回ベッドに倒れてました。途中で、なんでこんなに疲れるんだろうかと思って。ひたすら有酸素運動をやってるみたいなもんだから、「ああ、じゃあきつくて当たり前だ」と自分を納得させました。

 僕は本当、ケガだけしなきゃいいなと思ってました。作り手としては、非常に危険なシーンなんですよ。ふたりの息が合わないと、腰を痛めちゃうから。

山田 僕らの前にプロの方が動きをつくって見せてくれて、本番のときに代わるっていう感じだったんです。「山田さん、こうなるときに絶対に痛くなるので、ちょっと自分で足を上げて、女優さんをサポートしてあげてください。そうしないと全部体重が自分の股関節に来て、翌日大変なことになります」ってみんな真剣に教えてくれて。

 あの人たちの意見は本当に的確でね。そういう意味で、プロですよ。

村西とおる(中央、山田孝之)の破天荒な作品づくりを支えるトシ(左、満島真之介)と川田(右、玉山鉄二)。このトリオの友情、絆も本作の見どころのひとつだ 村西とおる(中央、山田孝之)の破天荒な作品づくりを支えるトシ(左、満島真之介)と川田(右、玉山鉄二)。このトリオの友情、絆も本作の見どころのひとつだ

■ミフネ、ナカタ、ムラニシ、クロキ

──舞台となった80年代の日本、特に新宿・歌舞伎町の細部にわたる作り込みもこの作品の魅力ですが、当時を知る武監督はあの時代をどのようにとらえていますか?

 まあ未熟な時代ですよね。未熟だけど、面白かった。当時の歌舞伎町は、家にいるのがもったいない街というか。面白い人たちと、次から次へと1時間ごとに会えるような街です。でたらめだったけど、意外と面白い時代だったよというのが個人的にはあります。

──けれどもノスタルジーに浸るような見せ方は感じませんでした。

 そうですね。今の時代から見て面白いものを作るっていうのがテーマだったんで。外国の人が見ても面白いものを、常にNetflix側から求められてましたしね。80年代だから全部じゃなくて、何かこう、センスのいいところを攻めたいっていう。

内田 世代って言ったら、僕もギリ、80年代はいたんでわかるんですよね。「え、これ、ないよね」とか「これは90年代風だよね」とか。モデルも今風のギャルじゃダメなわけで。やっぱ80sなもの出てましたよね。それはこだわった気がします。小道具とかね。

 そういうのをしっかりやっとくと、それを見た俳優さんたちが喜んでくれるじゃないですか。「なんだこれ」って小道具を手にとって盛り上がったり。それを見るのがまた楽しくて。

小道具と言えば、あれだけ大人のオモチャが集まった現場はないですよ(笑)。

山田 よその現場からも借りに来たらしいですよ。全部、集めちゃってるから(笑)。

武正晴総監督(左)、内田英治監督 武正晴総監督(左)、内田英治監督

──どんな小道具だったかは見てのお楽しみといたしまして、最後に、世界190ヵ国で同時配信されることへの思いをお聞かせください。この作品を通じて日本文化の一面が世界に紹介されることになると思います。

内田 最初は少し抵抗がありましたけど、「エロ」のなかに日本のカルチャーをちりばめることはできるねっていう話になって、実際に今回それをやりました。出来上がったらやっぱり、カルチャードラマにもなっている。

エロだと思って書いてた脚本家はたぶん誰もいなかったと思います。本当に80年代を切り取りたかった。いい部分も悪い部分も包み隠さず。村西とおるだって、ただのいい人でもヒーローでもない。

山田くんと森田さんのふたりがそれを見事に形にしてくれたということですよね。あとは外国の人がどう受け止めるか、ビクビクしながら待つという感じですね。

──山田さんは?

山田 期待してますね。海外行って、「ムラニシ!」て言われたい。

 ああそれね、それが一番だ。昔ね、メキシコとか行くと日本人は「ミフネ!」って言われたんですよ。それが「ムラニシ!」になったらすごいね。

内田 ミフネ、ナカタ、ムラニシ(笑)。

──森田さんはいかがでしょう?

森田 どう受け取ってもらえるのかなっていう不安がすごくありますけど。でも、こんなにたくさんの方々に同時に見ていただけるのもNetflixならではですし、楽しみです。

山田 一番有名な日本の女優になるかもよ。「クロキ!」って呼ばれるかも(笑)。

ハワイでAVを撮影(パールハーバー上をセスナ機、スカイセックス!)した後、FBIに逮捕され、総量刑を懲役370年として求刑された村西とおるの「伝説の事件」もドラマ化! ハワイでAVを撮影(パールハーバー上をセスナ機、スカイセックス!)した後、FBIに逮捕され、総量刑を懲役370年として求刑された村西とおるの「伝説の事件」もドラマ化!

■Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』世界190ヵ国同時配信中!
原作:本橋信宏『全裸監督 村西とおる伝』(太田出版)
総監督:武 正晴 監督:河合勇人、内田英治
出演:山田孝之、満島真之介、森田望智/小雪、國村 隼/玉山鉄二、リリー・フランキー、石橋 凌
【STORY】
1980年、英語教材のセールスマン・村西(山田孝之)は独特で押しの強いトークで売り上げトップになるものの、会社が倒産。さらには妻の浮気現場を目撃して一家離散の憂き目に遭う。失意にくれる村西だったが、チンピラのトシ(満島真之介)や出版社社長・川田(玉山鉄二)との出会いをきっかけに、ビニ本の流通販売会社を設立。たちまち業界の風雲児となる。だが、商売敵の池沢(石橋凌)や刑事・武井(リリー・フランキー)の暗躍で逮捕されてしまう。村西の出所後、世はアダルトビデオの時代になっていた。村西は仲間と共にAVへの挑戦を決意するが、池沢や武井の妨害で窮地に。そんななか、後に黒木香の名で人気女優になる大学生・恵美(森田望智)との運命の邂逅が目前に迫っていた──

●山田孝之(やまだ・たかゆき、村西とおる役)
1983年生まれ、鹿児島県出身。99年デビュー。ドラマ『ウォーターボーイズ』(2003年)、映画『電車男』(05年)、『闇金ウシジマくん』シリーズ(10年~16年)、映画『凶悪』(13年)、映画『ハード・コア』(18年)など。近年はプロデューサーや脚本にチャレンジするなど活動の幅を広げている

●森田望智(もりた・みさと、恵美/黒木香役)
1996年生まれ、神奈川県出身。2011年、栄光ゼミナールのCM「高校受験編」に出演。出演作は映画『生贄のジレンマ』(13年)、ドラマ『パパ活』(17年)、映画『世界でいちばん長い写真』(18年)、ドラマ『Iターン』(テレビ東京系、毎週金曜24時12分~)など。本作にはオーディションで抜擢

●内田英治(うちだ・えいじ、監督・脚本)
1971年、ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。テレビのADや本誌の記者などを経て、ドラマ『教習所物語』(99年)で脚本家デビュー、2004年に映画『ガチャポン!』で監督デビュー。監督作は『グレイトフルデッド』(15年)、『下衆の愛』(16年)、『獣道』(17年)、ドラマ『Iターン』(テレビ東京系)など

●武正晴(たけ・まさはる、総監督)
1967年生まれ、愛知県出身。『ボーイ・ミーツ・プサン』(2007年)で長編映画デビュー。『百円の恋』(14年)が日本アカデミー賞5部門をはじめ数々の映画賞を受賞。監督作に『イン・ザ・ヒーロー』(14年)、『リングサイド・ストーリー』(17年)、『嘘八百』(18年)、『きばいやんせ!私』(19年)など