東京・お台場で行なわれた真夏のアイドルの祭典TOKYO IDOL FESITIVAL2019」(以下、TIF)。初日・8月2日をレポートした前編記事、そして2日目の中編記事に続き、後編では最終日・8月4日(日)の様子をお届けします!

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【8/4】

●えのぐ[HOT STAGE]

オープニング、曲が始まるもステージには誰もいない。見ればスクリーンの中にメンバーが! えのぐは"VRアイドル"とのこと。音と映像を単に流しているだけかと思いきや、ファンの声援に応えたり、ダンスは3人が微妙にずれていてリアルっぽい。

かつて被り物をかぶったアイドル、桃知みなみがTIFに登場したこともあるが、その進化系だろうか? ついに実体がないアイドルの登場だ!

ライブとは演者の息遣いや流れる汗を楽しむものだと思っていたが、その考えはもう古いのかもしれない。聞くところによると握手会も開催しているという。VRアイドルとどう握手をするのだろうか? 色々と興味は尽きない。

●SKE48[HOT STAGE]

ダンス動画が話題となっている、古畑奈和(なお)センターの最新シングル『FRUSTRATION』でライブスタート。激しいノリでファンを圧倒する。そして二曲目『青空片想い』でいつものアイドルモードに。

『Gonna Jump』は6期生の熊崎晴香、鎌田菜月、竹内彩姫(さき)の6期生トリオがフロントで全力パフォーマンス。『手をつなぎながら』では、最前のファンが手をつないで会場を盛り上げる。TIFにほぼ毎回参加しているお祭り女、高柳明音の真骨頂は『パレオはエメラルド』。「まだまだ騒ぎ足りないですよね? 皆さんの本気見せてくれますか!」と会場のファンを煽りまくり。

『アイシテラブル!』ではファンに「愛してる!」と叫ばせる。ラストは古畑と同期の江籠裕奈(えご・ゆうな)センターによる『未来とは』。かつての妹イメージからは考えられない、「これぞSKE!」といったハードなパフォーマンスで締めくくった。

最近のSKE48は外でのライブが面白い。アウェーに弱いと言われたSKEはもはや存在しない。今、48グループで最もアウェーに一番強いのがSKE48と言ってもいいだろう。

●≠ME[SMILE GARDEN]

指原莉乃プロデュースアイドル第二弾! =LOVEの妹分である≠MEが、スマイルガーデンでついにステージデビュー。最初にフレッシュなエメラルドグリーンの衣装に身を包み12人全員で登場。

「みなさんはじめまして、ノットイコールミーです!」と大声で挨拶。それぞれが自己紹介した後、センターの冨田菜々風(ななか)が「今日このステージから、長い人生の一ページをみなさんと一緒に過ごしたいです!」と話して、『スタート!』を披露。

さらに『届いてLOVEYOU』『部活中に目が合うなって思ってたんだ』『探せ ダイヤモンドリリー』と、=LOVEの曲をカバー、この日を待ちわびたファンは大いに盛り上がった。まだまだ固い部分もあったが、予想以上にダンスが踊れていた。

ラストに再び冨田が「まだまだ未熟な私たちですが、≠MEの幻のデビューステージを見たと言っていただけるようなグループになることを必ず約束いたします!」と力強く宣言。≠MEにとって初のオリジナルソング『≠ME』を全員で歌って終了。

初ライブはセンターの冨田が注目されることが多かったが、他にも鈴木瞳美(ひとみ)、谷崎早耶、菅波美玲、川中子奈月心(かわなご・なつみ)など、気になるメンバーがたくさん。これからもチェックしていきたい。

●青春高校3年C組[SMILE GARDEN]

テレビ東京の番組『青春高校3年C組』の女子アイドル部がスマイルガーデンに登場! 

秋元康渾身の書き下ろし曲で、アイドルファンからの評判も高い『青春のスピード』でライブはスタート。黒木美佑が「みなさん盛り上がっていますか! まだデビューしてないんですけど一生懸命歌います。最高の夏にしようなー!」とファンを煽る。

そして学級委員長の日比野芽奈(めいな)や持田優奈らのユニットBlue Springが『サンダルガール』『チャイムの途中で』を披露。そして頓知気さきな、兎遊(うゆ)らの新ユニットハイスクールベイビーは『大っ嫌いロミオ様』をフレッシュに歌いあげた。

ラストに日比野が「TIFに出る中で最もキャリアが短いですが、一生懸命頑張っていきますのでよろしくお願いします」と挨拶。そして再び『青春のスピード』を披露。

普段はテレビでしか見れないグループだが、こうやってナマのステージに登場することで、新たなファンを獲得しそうだ。

●=LOVE[SMILE GARDEN]

数時間前に同じステージで妹分の≠MEが鮮烈デビュー。先輩としては負けるわけにいかない=LOVEは、さわやかな水玉模様の衣装で登場。

一曲目に披露したのはド直球アイドルソング『部活中に目が合うなって思ってたんだ』。そして最近シングルの切な系『探せ ダイヤモンドリリー』。全員の自己紹介のあと、大場花菜は「最終日、熱いTIF、もっともっと盛り上がって行けますか!」と声をかけ、『手遅れ caution』。今までとはガラッと変わったダークな世界観を見せた。

そして齊藤なぎさと齋藤樹愛羅(きあら)の可愛いツインテールペアが拡声器を片手に「お前ら声出せ!」と、ガンガン煽りまくる『いらないツインテール』。灼熱の会場を再びヒートアップさせる。

そしてラストはデビューシングルで看板曲の『=LOVE』。わずか20分だが、様々な表情を見せてくれたイコラブのステージだった。

●メイビーME[HOT STAGE]

TIFのメインステージ、Zepp DiverCity TOKYOへの出場権をかけて6月から熱いバトルを繰り広げてきた「TIF2019メインステージ争奪戦」。毎年恒例の企画だが、今年はTIF・10周年ということで、例年よりも多い10組のアイドルグループが参戦。

TIF一日目に開催された前哨戦LIVEでの会場投票やweb投票などの結果、見事優勝を勝ち取ったのは、昨年デビューしたばかり、顔面偏差値の高さが話題の5人組のメイビーMEだ。

厳しい戦いを勝ち抜いたメンバーはもちろん、一緒に戦ってきたファンにとっても待ちに待った"ご褒美ライブ"が、いざ開幕!

一曲目は、夏目りとのソロパートから始まる『だって夏なんだもん♡』。ワンコーラスをしっとりと歌った後は、「いくよ!」の掛け声とともに一気にヒートアップ!「みなさんこんにちは、メイビーMEです! メインステージ最後まで盛り上がって行きましょう!!」と元気よくあいさつすると、客席から「オーー!」と熱い声援が飛ぶ。

サビになると、「せーの!」の掛け声とともに客席中が一斉に右手を回して「オイ、オイ!」と大歓声。夏らしいキュートな王道アイドルソングで、会場は一瞬でメイビーMEカラーに包まれた。

続く二曲目は『ギブ・ME・サマー』。デートに誘われたい乙女心を歌った夏らしさ満載のポップなナンバーだ。メンバーたちのキュートなダンスに呼応するように、ファンたちは「っしゃー、いくぞー! タイガー、ファイヤー、サイバー、ファイバー」と熱のこもったMIXで盛り上げる。曲中では、「みんな本当にありがとうー!」と感謝の叫びを爆発!

MCでは、「メインステージ争奪で一位を獲れたということで、ここに立てています。みなさん本当にありがとうございます!」と深々と頭を下げて感謝を伝える5人。そして、「この20分間でメイビーMEのことをもっと知ってもらえるように精一杯頑張るので、最後まで観ていっていただきたいです!」と語るメンバーからは、優勝した勢いをここで止めることなく、さらに未来につなげていきたいという気合いが感じられた。

後半戦は、「メイビー!」と小指を立てる振りが印象的な『FabulousDays』、大きなバツを作り「ダメ、ダメ」とかわいく嫉妬する『NO MORE DD宣言♡』で幕を閉じた。ステージギリギリの位置でファンと目を合わせるメンバーと、「L・O・V・E」と声を枯らして声援を送るファンたちには、とても熱い絆が感じられた。

ウィナーステージにふさわしく、めいっぱいの笑顔で喜びを爆発させながら全力で踊るメンバーたちは、フレッシュなエネルギーに満ち溢れていた。

●こぶしファクトリー[HOT STAGE]

ハロプロからやってきた実力者集団、こぶしファクトリー。

まずは一曲目、『ドカンとBREAK』からスタート。拳を回し、こぶしを効かせ、観客をどんどん盛り上げる。盛り上がりまくる。

続くMCでは、10月2日に新しいアルバムをリリースすることを発表。さらに「こちらのアルバムの中には、前からずっとやらせていただいていた"アカペラ"も収録されています。自分たちの曲はもちろん、モーニング娘。さんの『LOVEマシーン』のアカペラバージョンも収録しています!」「ちょっとここで一曲、アカペラを披露させていただきます。『GO TO THE TOP!!』のアカペラバージョンです!」

そう言った瞬間、井上玲音(れい)がボイスパーカッションで口火を切る。続く4人のハモりが始まる。

一瞬で、会場が静まり返る。まさに息を飲むとはこのこと。ただでさえ高い歌唱力を誇る彼女たち。見事すぎるアカペラでフル尺の『GO TO THE TOP!!』。身震いが止まらない! 歌い終わった瞬間、割れんばかりの会場。その興奮をそのままに『ラーメン大好き小泉さんの唄』へ。ボルテージは上がり続け、連続で『Oh No 懊悩(おうのう)』『シャララ!やれるはずさ』へ。

『シャララ!やれるはずさ』のサビ、「タイムリミットが来る前に~」。毎年、ここで全部持って行かれる。歌い上げる浜浦彩乃の声に、鼻の奥がツンとする。彼女たちの見事な仕上がり感に鳥肌が止まらない。そして最後はタオルを回しながら『亀になれ!』でフィニッシュ。

技術と努力。そして「伝えるために全てをかけられるか」。ハロプロの完成系を彼女たちに見た気がした。

●WACK presents DREAMLIGHTS in TIF[SMILE GARDEN]

BiSH、GANG PARADE、EMPiRE、そしてWAggといった"WACKファミリー"が勢揃いする「WACK Presents DREAMLIGHTS in TIF」。昨年、Zepp DiverCityを満員にしたこの夢のステージが、会場を屋外のSMILE GARDENに移して帰ってきた。

50分のステージは、こういった"お祭り事"ではもはや定番となったアイナ・ジ・エンド(BiSH)&松隈ケンタ氏(WACKの主なサウンドプロデューサー)&吉岡紘希(SCRAMBLES)の3人によるアコースティックライブからスタート。

過去に三度披露している『SMACK baby SMACK』や『屋上の空』に加え、BiSHの新曲『DiSTANCE』も初披露する3人。アコギとパーカション、そしてあえてコブシを効かせたアイナの歌声の奥には、鳴り止まないセミの鳴き声も聞こえる。いい意味でTIFらしくない、フジロックのような空気だ。疲弊した3日目のアイドルファンたちは、ゆったりとこの瞬間を楽しむ。

しかし、そんな牧歌的な雰囲気は、次に現れた5人によって急転! なんと、前日まで顔出しを禁止されていた、生まれたばかりの第3期BiSがサプライズ出演したのだ。

新たにBiSを名乗った5人は、『STUPiD』『BiS-どうやらゾンビのおでまし-』『thousand crickets』といった新曲3曲を披露。「3度目の行かなくちゃ」というフレーズや、第1、2期でおなじみのヘドバン&スクワットを盛り込んだパフォーマンスに、研究員(BiSファンの意)が沸いていく。「35℃の炎天下で、スクワットし続ける5人+1000人以上のファン」の図には、プロデューサー・渡辺淳之介氏もほくそ笑んでいたことだろう。

その後は、ユイ・ガ・ドクソンのパラパラ楽曲『Like a Virgin』や、選抜メンバーによる『WACK is FXXK』(SAiNT SEX)、『WACK is SHiT』(HOLY SHiTS)と続け、最後は今年のTIFのために制作された『WACK is BEAUTiFUL(this is lovesong)』を、総勢36名で大合唱。

現WACKファミリーと、サプライズで現れた、第2期BiSメンバーのパン・ルナリーフィ&YUiNA EMPiRE。全員でゆっくりと手を振りながら、「TIF is GRATEFUL」と讃えていく。

過去にはTIFでのパフォーマンスが原因でメンバーが活動休止になったりと、いろいろあったTIFとWACKだが、このステージが"歴史的和解"の瞬間だったのかもしれない。

●アイドルカレッジ[SKY STAGE]

なんと今年で10回目の参加となるアイカレ。TIFのために用意されたオリジナルのTシャツにも、TIFに10回出演しているグループであることをアピール。

一曲目は『あの子が髪を切らない理由』、二曲目『青春ライナー』と歌う。そしてラストはおなじみの『YOZORA』でフィニッシュ。

3日間フル参加のアイカレ、スカイステージがラストということもあって、ぎっしりのファンが集まった。そのファンを一番盛り上げていたのは、すべてのアイドルグループのメンバーの中で、唯一10回連続出場をしている南 千紗登(ちさと)。ミスターTIF(?)として、今回、運営から表彰されてもよかったのではないかと思っている。

●大阪☆春夏秋冬[SMILE GARDEN]

灼熱の日差しが傾きかけた16時40分。西日が刺さるスマイルガーデンに登場したのは、大阪☆春夏秋冬。白い衣装に身を包み、気合い十分といった表情でメインボーカルのMAINAがマイクを握る。

歓声が静まるのを待ち、一瞬の静寂の後に歌い出した曲は『Let you fly』。アカペラで歌う力強いMAINAの声が響いた瞬間、会場の空気を"しゅかしゅん"が一気に制圧! 「スマイルガーデン、みんなこのクソ暑い中、よぉきてくれたな!」と叫ぶ声を合図に盛り上がりが爆発! メンバーのエネルギーに、観客も「オイ!オイ!オイ!」と呼応する。

「辛いこと悲しいことあるやろ? この20分間は一緒に忘れへんかー!」というMAINAの呼びかけに「お――!」と歓声が上がり、クラップ、ヘドバンとロックな世界観でファンたちもボルテージを高めつつ、2曲目の新曲『MY STYLE』へ。

MCでは、まさに今日、8月4日が誕生日だというRUNAに向けて突然のバースデーソングが! ファンも一緒に「ハッピーバースデートゥ~ユ~」と大合唱し、プチサプライズは大成功。メンバーも知らなかったようで「やばい!」「鳥肌立った!」と感動しきり。

RUNAは、「毎年、誕生日はTIFで迎えさせていただいているんですけど、19歳はラストティーンなのでこれからも気合い入れて大阪☆春夏秋冬としてステージに立ち続けたい」と決意を語った。

そして、「ロックがしたい」「もっとスマイルガーデンで暴れたい!」「ここをライブハウスにしていいですかー!」というMAINAの煽りで後半へ突入。

「限界を突破しろよ! アニメ『FAIRY TAIL』オープニング曲『NO-LIMIT』!」

その掛け声と同時にメンバー、観客ともに拳を突き上げる。そして、「オーオーオーオー!」と歌う声が大空に響き渡った。

「ラストです」と告げると、会場からは「え――」と出番を惜しむ声が沸き起こる。「つらくなったらこの曲を聞いてください。ぜひ、一緒に手を上げて。『その手』」。高く掲げられた観客たちの手のひらがスマイルガーデンを埋めつくす。そこに、オレンジがかった西日が差し込む光景はとても幻想的だ。

圧倒的な歌唱力、激しく踊りながらもブレない声量、堂々たるMC力、顔にかかる髪も気にせず全霊で踊るメンバー。アイドルという固定概念を超え、どれもすべて圧巻のパフォーマンスだったが、なにより"魂の熱量"が胸を打つ最高に熱いステージだった。

●EMPiRE[HOT STAGE]

2年目にして早くもメインステージの座をつかんだ、WACK所属グループ・EMPiRE。ダース・ベイダーのテーマとして知られる『帝国のマーチ』のアレンジを出囃子(でばやし)に、ゆっくりと現れた彼女たちは、最新曲『SUCCESS STORY』を一曲目にセレクト。不敵な笑みを浮かべながらクールに歌い踊る。

数時間前に出番を迎えた先輩グループ・GANG PARADEは、WACKファミリーの"お家芸"といえる一曲リピートセットリストを組んできた。EMPiREもそれに倣ってくると踏んでいたが、彼女たちが二曲目に選んだのは『SO i YA』。正攻法の選曲に合わせ、「そいやそいや! かかってこいや!!」と熱くファンを煽っていく。

その後は、昨年のTIFで4回連続披露した『Buttocks beat! beat!』や、「何回かやり直して僕は何してんのかな...」という歌詞からサビが始まる『S.O.S』を続ける。

MCの時間こそないが、曲中に隙があれば「まだまだ私たちと、最高のTIFにしようぜぇえ!!」「初めての人も、そうでない人も、みんな跳びましょう!」と、煽りを入れていく6人。MiDORiKO EMPiREに関しては、腰の骨が砕けそうなくらいに海老反ってシャウトしている。今年の彼女たちは、昨年以上に本気だ。

帝国軍の猛攻は続く。5曲目『MAD LOVE』では、「NO CHANGE!!」、「NO PAIN」といった歌詞に合わせてファンとともにXジャンプ。ラスト『FOR EXAMPLE??』では、MAYU EMPiREが「Zepp、全員跳べぇ!!」と叫び、会場全体を大きく揺らす。最後まで「まだ足りない」と言わんばかりの煽りを続け、全6曲を披露したEMPiRE。

さて、このあとのBiSHのセットリストはいかに......?

●原田珠々華[SKY STAGE]

昨年のTIF。それはスカイステージ。

元アイドルネッサンスの原田珠々華(すずか)が、アイルネ解散後、はじめてソロとしてステージに立ったのがTIFだった。そして、スカイステージで事件は起きた。

2曲目の『今年の夏休みは君とデートに行きたい』を歌っていたときに機材トラブルが発生。結局、ステージは途中でストップしてしまったのだ。結局、トラブルは復旧せず、最終的にアコースティックギターで、歌う予定のなかった曲を弾き語りで熱唱。思い出深いステージとなった。

そんな彼女に、最後にスタッフから「これに懲りずに、来年も必ずスカイステージに来てください!」とマイク。彼女は「スカイステージ、呼んで下さい!」と応えた。

そんな物語があったスカイステージに彼女は戻ってきた。ステージ前にスタッフから「昨年はすみませんでした。今年は我々も精一杯頑張りますんでよろしくお願いします」とアナウンス。夕暮れがやってくる。さぁ、舞台は揃った。

ステージにギターとともに現れた彼女はひと言、「ただいま」と言うと、ギターをかき鳴らす。『Fifteen』から。明るい青空から薄いオレンジへのグラデーション。響き渡る凛とした声。「さよなら15の私」と歌う、17歳となった原田珠々華。さまざまな感情がこちらにも流れ込んでくる。ギターのさまざまな感情も流れ込んでくる。

続く『聞いてよ』。「私の声を聞いてよ。あのときは『聞かないで』だったけど」少女の1年の成長と心の揺れ。そして今、少女が握りしめている決心。なんとせつなく、なんと美しいのだろう。なんとこの歌詞を書ける彼女の才能と、彼女の青春に嫉妬した。

「私が、このスカイステージに立たせていただくのは今年で(アイルネ時代も合わせて)4度目なんですけど。毎年、いろんなことが変わっていってて。あの夏にこのステージに一緒に立って、一緒に『暑いね』って笑ってたコとかも、この後ろから『頑張れ!』って叫んでくれたコとかも、みんな近くにいなくなっちゃったんですけど。

そんなときに『自分にとって音楽ってなんなんだろう?』とか、自分が音楽をやってる意味とか。そういうのを問い詰めていたときに、やっぱり答えを教えてくれたのは......あの夏休みで。私は音楽が大好きで、音楽に救われてて、それがきっと、それがすべてだなと思いました」

そう、今の原田珠々華を語ったあと、ラストは『Sixteen』。

「音楽は君にとってのなんだ?」「夢に抜かされるのが怖くって」「今日も目一杯背伸びをしてみるよ」「私の生きた数は私の価値数ではないんだ」ゆっくり噛みしめるように歌う。かき鳴らすギターが夕日を呼んでいる。空を見上げると、夕焼け前の青。その空にさえ嫉妬した。

●BiSH[SMILE GARDEN]

日没直前のスマイルガーデンに現れたBiSH。出番を待ちわびた清掃員(BiSHファンの意)たちが歓声を上げる中、彼女たちが1曲目に歌いだしたのは、TIFではまだ披露したことがなかった名曲『オーケストラ』。

例年、TIFでの彼女たちは『BiSH-星が瞬く夜に-』という一曲のみを徹底的に披露してきた。それを知る者は困惑しつつも、この場所でこの曲を聴く興奮を抑えられない。セントチヒロ・チッチが静かに歌うイントロから、何百本もの拳がお台場の屋外で突き上がる。

続く二曲目は『スパーク』。TIFでは4年前に一度だけ、リフトやジャンプ防止のために"オケなし"で歌っていたこの曲だが、今回はもちろん"オケあり"。清掃員は肩を組みながら右へ左へ飛び跳ね、三曲目『DA DANCE!!』を迎えていく。

「ダンスしようよ! ダンスしようよ!」。そう叫ぶ清掃員たちに「待て!」と言わんばかりに、彼女たちは最新曲『DiSTANCE』を続ける。サビ以外はひっそりと歌うこの曲で、静かにボルテージを上げていくアイナ・ジ・エンド。

「次あたり、もしや......」と考えていると、その予想は的中。響くスネアドラムの連打、「もっと一緒になれますか!?」というチッチの叫び――TIFではおなじみ、5年間で26回目の『BiSH-星が瞬く夜に-』だ!

やっと出たGOサインによって、清掃員たちの"感情のダム"は決壊。「はいせーの! はいせーの!!」という大きなコールが飛ぶ! 観客たちが前へ前へと圧縮を強める! プレスエリア近くの柵が倒れそうになる!!

賛否あるBiSHの"TIFでの戦い方"だが、やはりお台場でこの曲を聴かなければ、夏は、TIFは終えられない。そう感じさせながら、彼女たちは最後に『生きててよかったというのなら』をゆったりと歌って去っていった。

●Task have Fun[SMILE GARDEN]

この一年で、大きく成長したTask have Funが、TIF最終日のトリ前に登場した。会場は、BiSHの客にも劣らないほどの数だ。

「あ、これはこのTシャツ、あとで脱ぐな」と一瞬でわかるような、ぶかぶかのTシャツ姿。赤と青と黄色のポンポンを持った3人。Tシャツにはそれぞれ「暑い」「楽しい」「好き」と大きく書かれている。前髪をあげている里中菜月が新鮮で可愛い。

一曲目は、『キミなんだから』メンバーと会場が一体になって左右に揺れる。ニコニコのメンバーに捧げられる叫びのメンバーコール。盛り上がってきた!

そして二曲目はオトナっぽい恋を疾走感に乗せた『けどハニカミ』。この曲の白岡今日花の表情はすごい。イントロで3人のTシャツが破られ、いつもの衣装に。それにしても熊澤風花のTシャツに書かれた「好き」の文字がまっぷたつに破られているさまは、複雑な気持ちになる。

サビの卓球の素振りのような振りを、「腕よもげろ!」と言わんばかりに振る。会場も必死に素振る。客とTask、どっちが先に倒れるか!

そして三曲目は、とうとう抜いた、伝家のアイスラッガー。彼女たちの最強ソング『3WD』。3人がポーズを決めた瞬間、会場から歓声が上がる。

インディーズアイドルとして、2017年の楽曲大賞で日本一になったこの曲。頭からサビまで、会場も一体となってフリコピる。

二番では、「戦国時代からの低迷期、今だって戦ってますし」の歌詞を熊澤風花が「今だって戦ってんだよ!」と、うっすら笑いながら歌う。ゾクッとくる。会場が叫ぶ。

お台場の夜。ウルトラマンセブンのアイスラッガーのような振りを何度も何度も繰り返す。里中菜月が「スマイル行くぜぇ――!!」と声を裏返しながらシャウトる。

3曲、踊りまくったメンバーと観客。疲れ切ったあとのラストソングは、しっとりとしたラブソング『逆光』。なんと癒されることか。

真っ暗な夜。輝くステージの中で歌う3人を見ていると、彼女たちの戦いの先は勝利しかない。そんな気がした。

●AKB48 TIF2019選抜[HOT STAGE]

TIF2019のホットステージ大トリはAKB48。姉妹グループやチーム8メンバーのいない、純AKB48メンバーによるステージで、中心となったのはレジェンド柏木由紀、総監督・向井地美音。

パフォーマンスでは村山彩希(ゆいり)が絶好調。先日テレビでセンターポジションを務めて評判だった『フライングゲット』をファンの前で披露した。また、『Only TODAY』や『Seventeen』では西川 怜、久保怜音、山内瑞葵といった次世代エースメンバーがセンターに抜擢。そのまま休むことなく武藤十夢(とむ)センターの『前しか向かねえ』まで、8曲連続のガチンコパフォーマンスで会場を大いに沸かせた。

向井地はMCで「大トリは思いきり盛り上がろうということで、8曲連続で披露させていただきました」と、その意図を明らかにした。

そしてラストは「好きという気持ちを全力で伝えてほしい」とファンに呼びかけて、『大声ダイヤモンド』。集まったファンはメンバーに全力で「好き!」と叫んでステージは終了。

AKB48は4年半ぶりに全国ツアーをスタートさせ、前日に広島公演を終えたばかり。非常にいいパフォーマンスを見せてくれた。最近のAKB48はメンバーの気合いが違う。これがもっと多くの人々へ届いてほしい。

●amiinA[SKY STAGE]

上空で赤と青が交じる"マジックアワー"。この時間にスカイステージに登場したのが、少女デュオ・amiinA(あみいな)だ。

彼女たちのパフォーマンスは、「ここにいるみんなと、たくさんの人たちの力で、TIFのラスト......ここに立てました。ありがとう」というmiyuのひと言から、牧歌的な楽曲『nana』でスタート。「旅の途中でたくさんのお友達もできた」「今見上げたこの空 あかね色」という歌詞を聴いていると、この瞬間のために作られた曲なのではないかと錯覚してしまう。

続く『Jubilee』。「連れてってよボ――――イ!」という、ふたりの爆発魔法的な歌い出しと、その攻撃を増幅させるように手のひらをかざす観客。歌う彼女たちにとっても、対面する観客にとっても、今年のTIFで一番楽しい瞬間だっただろう。なんだか、ただ写真を撮っているのがもったいなく感じた。

そして、夕景に駆け込むようにステージを走り回った『Caravan』のあと、ふたりは最後の1曲の前に、ひと言ずつこう語る。

「この一年間は、自分たちでいろんなものを選び取って、楽しいこと、辛いことを経験した一年でした」(miyu)

「もっともっと、みんなで大きな楽園を目指して、向かっていきたいです!」(ami)

17歳と18歳。進級や進学のために数カ月間ライブ活動を休止したこともあった。そんな少女たちが最後に選んだのは『Avalon』。汗か涙かわからないが、水滴で顔をびしょびしょにしながら、ときにはふたりで手を取り合いながら、壮大な世界観で明日を歌っていく。

「この旅団には、いつまでも真っ直ぐ突き進んでいてほしい」。そう祈りたくなる15分間だった。

●amiinA × sora tob sakana[SKY STAGE]

先述のamiinAと、そのamiinAの直前に出番を終えた"オサカナ"ことsora tob sakana。今年のスカイステージでトリを務めるのは、そんなイノセンスな少女2組の豪華コラボステージだ。

夏の終わりを告げるような切ないSEが流れる中、5人の少女は全員、白いワンピースをまとって登場。赤暗くなったお台場の天空を、5人は真っ直ぐに見つめている。早くも、これからものすごいものが始まる予感がする。

風が吹き、ピアノの旋律が聴こえる。まずはオサカナの『夜空を全部』だ。顔が真っ赤になるまで、全身をバネのように使って歌うamiinAと、涼しげに、軽やかに歌うオサカナ。

一見対照的な2組の声が混ざり合って、いつの間にか完全に夜を迎えた空へと溶けていく。この共鳴度の高さはなんだ?

「このスカイステージのラストを、私たちが務めさせていただきます!」。神崎風花(オサカナ)が堂々と、手短に挨拶をする。10分"しか"用意されていないこのコラボステージ。おそらく次が最後の曲だろう。

miyu(amiinA)が「一緒に歌ってください」と呼びかけ、ラストナンバー・amiinAの『Canvas』へと続けていく。

右手の人差し指を夜空に突き上げ、「あ~~あ~あ~! ああ~あ~!」と叫ぶ5人と観客。長年、夜のスカイステージを見てきたが、ここまで一体感を生んだグループはいなかったんじゃないかとも思う。あの場にいた誰もが「この瞬間が終わらなければいいのに」と願ったに違いない。

夏が終わっていく寂しさにあらがうように、この景色をもっともっと楽しんで、明日からの日常も頑張れるように――そんな願いを込めた叫びで、今年のスカイステージは幕を降ろしたのだった。

* * *

こうして「TOKYO IDOL FESITIVAL 2019」は終了した。令和という新しい時代を彩ったアイドルたち。最高の夏だったのではないだろうか。

来年も、きっとここに戻ってきたい。

2020年。東京にオリンピックがやってくる。その影響で、もしかしたらお台場での開催が難しくなるかもしれない。でも、オリンピックがそうであるように、TIFも「平和の祭典」である。アイドルが汗をかいて歌う。ファンが汗をかいて応援する。そこはとびっきりのピースフルな空間になるに決まっているのだ。

青春の力の前に悪は栄えない。少女たちの歌は、きっと世界を救う。少なくてもボクたちの世界は救ってくれる。だからこそ、来年のTIFを待ちましょう。11年目のTIFは、きっとボクらを救ってくれるはずだ。

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