最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が公開中のクエンティン・タランティーノ監督を直撃! 最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が公開中のクエンティン・タランティーノ監督を直撃!

ハリウッドのカリスマ監督、クエンティン・タランティーノの最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が全国公開中だ。どんな作品? 初共演を果たしたディカプリオ×ブラピの相性は? 監督自身に熱く語ってもらった!

■ディカプリオとブラピは「相性完璧だよ!」

本作は観客を50年ほど前にタイムトリップさせる。舞台となるのは1969年のハリウッド。今回、この時代に焦点を当てたのはなぜ?

「この時代、俺は6歳か7歳で、ロサンゼルスの郊外に住んでいた。映画やテレビに夢中になり始めた頃だよ。俺はかなり優秀な記憶力の持ち主でさ、当時のことをすごくよく覚えているんだ。テレビやラジオでどんな番組をやっていたか、どんな映画が上映されていたか、どんなCMやビルボード(屋外の看板)が見られたか。

60年代後半はヒッピーカルチャーがすごい勢いでやって来て、一夜にしてハリウッドを変えた時代だった。小さな男の子だった俺にも『時代が変わった』という空気がわかるくらいにね。俺はこうした時代の変遷、"ヒッピー・ハリウッド"を描くってアイデアを思いついて、大興奮したんだよ!」

主人公は50年代後半からテレビの西部劇で人気を博していたが、今やすっかり落ちぶれてしまったスター、リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)と、彼のスタントマン兼お世話係、親友でもあるクリフ・ブース(ブラッド・ピット)。

「このふたりは50年代から60年代に実在した何人かのスターたちからちょっとずつパーツをいただいて、俺が新たに生み出したキャラクターなんだ。リックのモデルは、スティーブ・マックイーンみたいにテレビ俳優から映画俳優への移行に成功していたら長く活躍できたかもしれないのに、それがうまくできずに人気がガタ落ちしてしまった人たちだよ。

当時、アクションスターとスタントマンは濃密な関係を築いていたんだけど、リックとクリフの関係性は、そういうところからもインスピレーションを受けてる。

面白いのは、映画が"ヒッピー・ハリウッド"を描いているのに、主人公は完全に時代から取り残された男たちだってこと! 彼らは時代の外側から、ラブ&ピースの波を遠巻きに見ているって感じなんだ。そんなふたりの視点で描くというのが、俺のアイデアのイケてるところさ(笑)」

レオとブラピ、初共演したふたりの相性はどうだった?

「見ていて最高に楽しかったよ! ふたりは当代トップを走る俳優だし、最初からやたらウマが合って、共演を心から楽しんでいるのが伝わってきた。『明日に向って撃て!』(69年)のブッチとサンダンスみたいに完璧な相性だと思ったね」

そしてリック邸の隣に住んでいるのが、当時、気鋭の監督として鳴らしていたロマン・ポランスキーの妻で、美しい新進女優のシャロン・テート(マーゴット・ロビー)。主役コンビの数日間と並行して、シャロンの日常も描かれる。

実は1969年は、ハリウッド史にとって最悪の年。当時、妊娠8ヵ月だったシャロンが、カルト的ヒッピー集団、マンソン・ファミリーのメンバーに友人もろとも惨殺されるという信じ難い事件が起こったのだ。

しかし、この映画は事件そのものを描いた作品じゃない。「おっと、結末については言わないでくれよ。観客にはこれが何を描いているか、映画館で味わってほしいからね」と、タランティーノ監督は念を押す。ひとつ言えるのは、これが彼から映画と映画業界、そして俳優たちへのラブレターだということだ。

「俺は映画と、映画を取り巻くすべてを心底、愛している。特に俳優たちについてはものすごく尊敬し、信頼し、入れ込んでるんだ。だから彼らの立場や気持ちがわかるつもりさ。

今回、自分でいちばん気に入っているシーンは、映画中に出てくる西部劇ドラマ『対決ランサー牧場』の撮影現場なんだ。自分が楽しかったのもあるけど、俳優という人間を描けたと思ってる。

あと好きなのは、シャロンが映画館にふらりと立ち寄って、自分の出ている映画を見るシーン。何げない日常のひとコマで"事件の被害者"じゃなく、生き生きと人生を楽しんでいるシャロンに会ってほしかったんだ。それにあれは、自分の映画を見た観客の反応に幸せを感じる俺自身の姿でもあるんだよ(笑)」

タランティーノ監督は以前から「10本撮ったら映画監督はやめる」と宣言してきた。これが9本目なので、残り1本ということになる。

「俺は自分のフィルモグラフィを完璧なものとしてフィニッシュしたい。それには10本がいい節目だからね。この映画に満足したからこれで最後にしてもいいな、とも思ったけど、あと1本は撮るよ(笑)。絶対に観客をガッカリさせないつもりだから安心してくれ。

ハリウッドは今も大きな変遷のときを迎えているよね。デジタルの台頭でいろいろな変化を感じるけど、まだ俺自身は取り残されたって感じてはいない。まだ俺はここにいて、自分のやり方で映画を撮っている。まだまだ映画に対する純粋さを失ってはいないつもりだよ。

そしてこの作品で、俺のキャリアはクライマックスを迎えたと思ってる。俺の集大成と呼ぶにふさわしい映画だし、それくらい誇りに思っているんだ!」

●クエンティン・タランティーノ(Quentin Tarantino)
1963年生まれ、米テネシー州ノックスビル出身。22歳からビデオショップの店員として働きながら脚本を書き始めた。92年、『レザボア・ドッグス』で監督デビュー。94年、『パルプ・フィクション』でゴールデン・グローブ賞の最優秀脚本賞とアカデミー脚本賞を獲得。以降、『キル・ビル』(03年)、『イングロリアス・バスターズ』(09年)、『ジャンゴ 繋がれざる者』(13年)、『ヘイトフル・エイト』(15年)などの作品で脚本・監督を務める。入り組んだ脚本、激しいバイオレンス描写、長セリフによる会話劇、キレッキレの選曲センス、そして強烈な映画愛(日本映画びいきでも有名!)など、唯一無二の映画作家として世界中の映画ファンから動向が注目されている

■『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』全国公開中
監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビーほか
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

「むかしむかし、ハリウッドで......」。リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)は人気のピークを過ぎたテレビ俳優。クリフ・ブース(ブラッド・ピット)はリックに雇われた付き人でスタントマン、そして親友だ。映画俳優への転身をもくろむも、うまくいかない日々に焦るリックと、彼を陰ひなたで支えるクリフは強い絆で結ばれている。そんなある日、リック宅の隣に当時、気鋭の映画作家として名を上げていたロマン・ポランスキー監督と、新進女優シャロン・テート(マーゴット・ロビー)夫妻が引っ越してくる。そして、1969年8月9日、それぞれの人生を巻き込み映画史を塗り替える「事件」は起こる