染谷将太氏(左)の演技論に角田陽一郎氏が迫る!

『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。

前回に引き続き、最新主演映画『最初の晩餐(ばんさん)』が公開中の俳優・染谷将太(そめたに・しょうた)さんが"演技論"について語ります!

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――誤解せずに聞いてほしいんですけど、染谷さんってすごく変な役をやられるじゃないですか。

染谷 ああ、はい(笑)。そういう役割を監督に求められることは多いと思います。なんでですかね......。

――染谷さんが脇にいると、いい意味ですごく「邪魔をする」印象なんですよね。タイプは違うと思うんですけど、僕の中で田中邦衛さんがそういうイメージでして。邦衛さんってちゃんとしゃべらないし、落ち着きないし、ストーリーと関係ないことやってる感じじゃないですか(笑)。

なのに、彼がいないと映画が成立しない。染谷さんもそうで、ストーリーじゃなくて、染谷将太という役者が演じるキャラクターそのものから目が離せなくなるんです。

染谷 そう言ってもらえるとうれしいですね。ただ、自分が「邪魔をしよう」と思って演技をしてるわけではなくて。あくまでも監督さんの要求に応える気持ちで、台本を読んだときに「今回はこういう役割だな」と理解した上でその役に徹するようにしています。

――そんな流れで最新主演作『最初の晩餐』についてお伺いします。父の死をきっかけに家族が集まり、今まで知らなかった一家の秘密が明かされていくお話ですが、演じられた主人公・麟太郎はどんな役?

染谷 すごく受け身の役です。今まで演じてきた「邪魔をする」のとは逆の役柄なので、とにかく「何もしない」ことに専念しました(笑)。

――やってみて手応えは?

染谷 正直、難しかったです。というのも、ただ受け身なだけなら素直に受けていればいいんですけど、「受けた上でどうすべきか」ということがずっとわからなかったんです。この作品では家族であったり、自分の将来であったり、すべてがわからないままストーリーが進んでいくんですね。それがすごく難しかった。

――「わからない」という演技をするってことですよね。

染谷 そうですね。役者としては、「わかっている」という演技のほうが「わからない」という演技をするよりも楽だと思っているんです。

というのも、「わかっていない」ことを演技として提示するには、「わかった上でわかっていないフリをする」のでは成立せず、「自分自身が本当にわからないままでいる」という必要があると自分は思っていて。

――お客さんはどんなふうに楽しむのがいいんでしょう。

染谷 この作品はまるでパズルが埋まっていくように、父親が生前に抱えていた秘密がストーリーが進むなかで少しずつ明かされていく。でも、ピースがそろったところで、この映画では「家族とはこういうものである」という答えが出るわけじゃない。

最初に台本を読んだとき、「すごく新しいな」と思いました。なので、観客の皆さんにもそうやってピースがそろっていくなかで、麟太郎がどう受け身でいるかを見守っていただければうれしいですね。

――新しい染谷さんが見られそうですね!

染谷 僕はどうなんだろう? 映画としてはすごく新しいと思うんですけど......。まあでも、そうですね。新しい染谷将太が見られるということにしておいてください(笑)。

●染谷将太(そめたに・しょうた)
1992年生まれ、東京都出身。9歳で映画デビューを果たし、日本アカデミー賞新人俳優賞、エランドール賞新人賞など受賞歴多数

■『最初の晩餐』新宿ピカデリーほか全国で公開中
(c)2019「最初の晩餐」製作委員会

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