『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。
前回に続き、現在公開中の映画『ひとよ』に出演されている俳優の鈴木亮平さんが「人生を変えた映画」を語ります。
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――ご出演されている『ひとよ』が現在公開中。愛する3人の子供のために夫を殺害した母親が、15年ぶりに子供と再会するというお話で、鈴木さんが演じるのは長男。白石和彌(かずや)監督らしい、非常に硬派な作品ですが、鈴木さんご自身の感想は?
鈴木 自分の演技に対して思ったのが、「この役者、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997年)の影響を強烈に受けてるな」ということ(笑)。
僕が演じた長男の大樹という人間は妻から離婚を突きつけられた結果、抱えていたものがワーッと出るんです。どうしようもない、どこにぶつけていいのかわからない感情を爆発させるシーンは、われながらマット・デイモンのようだなと。
――ちなみに僕は鈴木さんの役柄に共感しながら見ていました。
鈴木 それは少数派ですよ。僕の役で見たという人は、周りでは離婚を経験している人が多い印象です(笑)。この作品はそれぞれみんな違った立場で見られますし、自分が家族に対してどんな思いを持っていたか気づかされる映画だと思います。
――白石和彌監督とは初めてだったそうですが、どうでした?
鈴木 素晴らしい映画人だなって。映画監督っていろんなタイプがいますけど、白石監督はとにかく柔らかい人で。作品と全然違いますよね。
――ルックスとのギャップも(笑)。
鈴木 役者からもスタッフからも一番愛されている監督じゃないですか。白石監督の現場では怒鳴るのが禁止らしくて、実際、『ひとよ』の現場もひたすら和やかに進んでいきました。
――意外ですね。
鈴木 映画づくりで暴力的な面を発散しているからこそ、というのもあるのかなとも思います。というのも、僕自身がそうなんですよ。演技でネガティブな感情を発散できているから、日常生活では「いい人ですね」とよく言われます。演技していない期間が長くなると、心に黒いものが交ざっていくのがわかるんです。
――最後に、人生を変えた映画の作品名を記入していただけますか?
鈴木 まずは『フル・モンティ』(97年)。これは人生で一番見た映画ですね。『居酒屋兆治』(83年)も好き。高倉健さんのようになれたらいいなって思いますね。『天使のくれた時間』(2000年)も本当にいい映画で、何回見ても感動します。(マネジャーさんに)スマホ取ってもらえます? 実は自分の中での映画ベスト50をメモしてるんですよ。
――見せていただくというのは?
鈴木 それはできません(笑)。内緒です。それに入れ替わりますし。
――ホントに映画好きですねえ。
鈴木 あとはベン・スティラー監督・主演の『LIFE!』(13年)。フォトグラフ雑誌で長年働きながら海外に出たことのない主人公が、写真家のフィルムを受け取りにグリーンランドに向かうというお話なんですけど、ラストシーンが素晴らしい。コツコツと地下室で頑張ってきた男が報われる。泣けますね......。
――驚くべきことに、前編であれだけ熱く語っていた『グッド・ウィル・ハンティング』が入ってません。
鈴木 ですね。でも、人生を変えたという意味ではこういうラインナップになるんですよ。
●鈴木亮平(すずき・りょうへい)
1983年生まれ、兵庫県出身。東京外国語大学卒業。NHK大河ドラマ『西郷どん』、映画『HK/変態仮面』『俺物語!!』などに主演
■『ひとよ』全国公開中
(c)2019「ひとよ」製作委員会 配給:日活