2020年1月6日(月)から始まるグルメドラマ『今夜はコの字で』(BSテレ東/毎週月曜・深夜0:00~0:30)。文字通り、「コ」の形のカウンターを備えた大衆酒場"コの字酒場"を舞台に、酒と肴はもちろんのこと、恋愛要素もたっぷり詰め込んだ人間ドラマが繰り広げられる本作。撮影は実際のコの字酒場で行なわれた。
共に主演を務める田中恵子役の中村ゆりさんと、吉岡としのり役の浅香航大(あさか・こうだい)さんに、コの字酒場の魅力と撮影時の裏話を聞いた――。
■吉岡と恵子は、酒好きのふたりにとってはまり役!
――オファーを受けた際、まず率直にどのような感想を持ちましたか?
浅香航大(以下、浅香) お酒好きとしては、自分にぴったりの仕事だなと(笑)。もともと僕は、コの字酒場のような趣のあるお店で飲むことのほうが多いんです。ある意味、私生活をそのままドラマにしてもらうような感覚で、幸せでした。
中村ゆり(以下、中村) 実は私、「お酒飲んで、食べる仕事をしたい!」って、ずっと言い続けていたんです。だから今回のお話をいただいたときは、「キター」って(笑)。美味しいものを食べて美味しいお酒を飲むっていうのはライフワークというか、それを楽しみに生きていると言っても過言ではないので(笑)、「私がやるといいじゃん!」と思っていました。本当にうれしかったですね。
――おふたりとも相当なお酒好きとお見受けしました。その意味ではまさにはまり役ですね。
浅香 そうですね。飲むときはとことん飲みますし、晩酌程度で1、2杯というときもあります。今回演じた主人公の吉岡(としのり)のように、仕事に行き詰まったときなど、行きつけの飲み屋で誰かと話して気晴らしをしたり、何らかのヒントを得たりして、元気をもらって帰るということはよくありますね。
――中村さんもけっこう飲まれるんですか?
中村 私はあまり深酒はしなくなりましたけど(笑)。例えば、旅行に出かけるときなどは、いつも現地の美味しいものを調べて、それに合うお酒を飲むのが一番の楽しみだったりします。
――ドラマには自然体の中村さんが出ているわけですね。
中村 出しすぎたかもしれません......(笑)。あと、私が演じる吉岡の先輩・田中恵子は、自分のスタイルを持った大人の女性で、仕事はしっかりやるけれど、楽しむところは全力で楽しむタイプ。これは自分に似ている部分もあって、とても共感できました。
■実際のコの字酒場で行なわれた撮影
――撮影はセットではなく、実在のコの字酒場で行なわれているのが今回のドラマの大きな特徴です。ほかのドラマの撮影と比べて、どんな違いがありましたか?
中村 実際、本物の店主の方に登場していただいた回もあって、皆さんすごく上手でびっくりしました。普段、営業中にやっていることをナチュラルにやってくださった感じで、役者よりいい芝居してるかも(笑)。
浅香 あの味は演技ではちょっと出せないですよね。
中村 これはキャスティングでは出せないよねっていう、独特の味のある店主の方々が登場してくださっています。
――実際の店主がいる撮影現場はどんな雰囲気だったんですか?
浅香 台本に対して、「いや、こんなこと店で言わねえよ」とツッコミが入ってセリフが修正されたりするのも、すごく興味深かったですね。
中村 そうそう。そうやってセリフなどを微調整しながら撮っていくことで、そのお店の世界観がちゃんと守られたと思います。ちょっとしたドキュメンタリーっぽくて、楽しい現場でした。
――もともと知っていたお店も撮影で使われたそうですね。
浅香 原作のマンガにも出てくる自由が丘の「ほさかや」さんは、たまに飲みに行く店ですね。大将と撮影現場でご一緒するのは、なんだか変な気分でした(笑)。
中村 私も友人のSNSなどでよく見かけていたお店だったので、こういう形で行くことになるのは不思議な感覚でした。
浅香 完成したドラマを観てみると、僕もゆりさんも、本当に美味しそうにお酒を飲んでいるんですよね。
――撮影中は、本当にお酒を飲んでいるんですか?
浅香 はい(笑)。普通はノンアルコールの飲み物を用意したりするんですが、今回はあえてリアルなお酒でやらせてもらいました。
中村 お酒や料理に対するリアクションがとても大切なドラマですからね。だから私は、重要なシーンでこそ、ちゃんとお酒を楽しむように心掛けていました。
浅香 今回登場するお店は、どこも甲乙つけがたいくらい美味しくて、それでいてお店ごとの個性があるから、それをドラマでどう表現するかを考えましたね。
中村 例えば、お酒と料理の組み合わせって、実際に食べてみなければわからないこともありますよね。それが絶妙に美味しかったりすると、演じている私たちも心から「美味しい!」と感じるので、その素直なリアクションを見せたかったというのはあります。......もっとも、私は酔うとセリフが飛んでしまうこともあるので注意が必要なんですけど(笑)。
■コの字酒場にはさまざまな学びと発見がある
――実際のお店で撮影を行なったからこその苦労もあったのでは?
浅香 撮影の時期が夏場だったので、とにかく暑かったです。お店のシーンは夜の設定なので、窓も扉もすべて閉め切った状態ですし、年季の入ったお店も多いですから、撮影を行なうには手狭だったり、冷房があまり効かなかったり(笑)。そこに演者さんやスタッフさんなどがぎっしり入るので、とにかく汗が止まらないときがあって大変でした。
中村 ドラマでは夏のシーンじゃないのに、撮影中に航大くんの額に汗がぽつぽつ浮いてきちゃうことが何度もあったよね。そんな中だからこそ生ビールがいっそう美味しかったのだけど(笑)。
浅香 そうですね。美味しいお酒を飲めて、美味しい料理が食べられるという意味では本当に最高の仕事でした。撮影でこれだけ飲み食いしたのに、ずっと汗をかきっぱなしだったせいか、太らずにすんだのもよかった(笑)。
中村 私はドラマの撮影以降、あらためて日本酒の美味しさに気づいてしまって。これまで日本酒は、翌日に残りやすいというイメージがあったのですが、良質の純米酒などをちゃんと見極めて飲めば、翌朝に残らないことに気がついて。今では近所の酒屋さんに旬の銘柄を相談して、気に入ったものは一升瓶で購入しているほどです(笑)。
――最後におふたりからそれぞれ、今回のドラマの見どころを教えてください。
浅香 お酒や料理はもちろんですが、グルメと恋愛の要素がとてもうまく絡み合ったドラマなので、僕としては吉岡の恋の行方にも注目してほしいです。そしてお酒や人との出会いを通して吉岡が少しずつ前へ進んでいく様子には、きっとコの字酒場の魅力がたくさん詰まっているはずです。
中村 吉岡くんの成長は、このドラマの魅力。一見客には敷居が高く感じられがちなコの字酒場ですが、一歩足を踏み入れればいろんな価値観を学べる場でもあります。それに、こうして男女がお酒を飲んで語り合うドラマは、それだけでちょっとスリリングですよね? 回を追うごとに、吉岡と恵子の関係にどんな変化があるのか、そこも楽しみに見守っていただければうれしいです。
■『今夜はコの字で』原作・加藤ジャンプ 画・土山しげる
(集英社インターナショナル/1000円+税)
コの字型のカウンターを備えた大衆酒場「コの字酒場」。そこには上座も下座もない。カウンターのどの場所に座ってもフラットな関係になれる空間だ。そんなコの字ならではの空間が生む「人のふれあい」と、その店でしか味わえない「酒と肴」を、『食キング』『喰いしん坊!』『極道めし』『野武士のグルメ』などで知られる、食マンガの大家・土山しげるが描く。原作は、コの字酒場の命名者でもある加藤ジャンプ。加藤氏がこれまで訪れた400軒以上のコの字酒場から、都内近郊の9店を厳選。マンガの舞台となったコの字酒場のコラムも収録!