昨年の夏に大ヒットした映画『天気の子』のヒロインとして注目を集め、ドラマや映画に大活躍中の女優・森七菜(もり・なな)ちゃん。その勢いは2020年を迎えても止まらず、本日1月17日(金)より公開される岩井俊二監督の映画『ラストレター』では一人二役を演じている。

インタビュー前編では、弱冠18歳ながら今後ますます活躍を期待される彼女に、新作について話をうかがった。

■最初は「嘘をついてでも好かれたい」という気持ちが理解できなかった

――完成した『ラストレター』を観て、率直にどんな感想を持ちましたか?

 そうですね。人生で初めて「愛」に涙した映画でした。ずっと「好きな人のために泣くって、どんな気持ちなんだろう?」と思っていて。お芝居をするうえで、そういう気持ちがわからなくて困っていたことでもあったんです。でも、乙坂鏡史郎が未咲に向ける感情は間違いなく「愛」で、それに自分が涙したことに驚きました。

――思春期を神木隆之介さん、大人になってからを福山雅治さんが演じた乙坂鏡史郎は、広瀬すずさんが演じた未咲に学生時代から思いを寄せ、それを長年忘れられずにいる人物。一方、森さんは未咲の妹・裕里を演じており、鏡史郎に恋する彼女が、姉宛のラブレターを渡さなかったことから、それぞれの感情がすれ違っていく......というのがすべての発端でした。

 裕里みたいに好きだから嘘をついてでも相手に好かれたいというのは、最初はちょっと理解できませんでした。人を好きなったことはありますけど、そこまで真剣なものではなかったんですよね。それでも演じることができたのは、お相手が神木さんだったからだと思います。

以前、ドラマで共演させていただいたんですけど、すごく謙虚で腰が低い方でした。まだ私が映画にもドラマにも全然出ていない頃で、「芸能人ってすごい!」と衝撃を受けたんです。それからずっと尊敬していた方との共演だったので、裕里の気持ちにすっと入りやすかったと思います。

もちろん、この映画でも素敵な方で、裕里にも優しく接してくれていると感じたんですけど、完成した本編を観ると、やっぱり違うんですよね。裕里に向ける表情と、未咲に向ける表情が。未咲に向ける顔はすっかり蕩(とろ)けている。それがけっこうショックでした(笑)。「これじゃ裕里、脈ナシじゃん!」って(笑)。神木さんの演技力を思い知らされましたね。

■大好きな広瀬すずに会って「泣きました(笑)」

――森さんは裕里のほか、松たか子さんの娘である颯香も演じています。一人二役で意識したことは?

 2人は性格も年齢も違うし、その差がちゃんと伝わるようにとは意識していました。何より、裕里は松さんの学生時代でもあって。

――裕里という役は松さんと森さんの二人一役でもあるんですよね。

 だから、「確かに松さんの学生時代だよね」と思ってもらうために、どうすればいいだろうって考えて、ドラマとかバラエティ番組での松さんの振る舞いを見ながら、仕草を真似したりしました。

――どんな特徴があったんですか?

 言葉ではうまく説明できないんですけど、特徴があるんですよ。撮影当時は頑張ってやっていたので、そこも注目して見ていただけたら(笑)。

――姉の未咲を演じた広瀬すずさんについてもうかがいます。森さんは以前から、「広瀬さんのファン」と話していましたが、ついに共演してみて、いかがでしたか?

 共演すると聞いたときはびっくりしました。お会いする前日に聞いたんですよ。そうであってほしいとはずっと思っていたけど、考えすぎて逆に「絶対にないよね」と思い込んでいたので、驚きすぎて息ができないくらいになりました。

――実際に会ったら?

 泣きました(笑)。

――それは本人の前で?

 それはさすがに(笑)。広瀬さんのことが好きだっていうのは、撮影が終わるまで黙っていました。

――でも、映画を観ても大好きな人の前で緊張している感じはなかったですよ。

 好きだからこそ信用していたというか。お芝居も素晴らしい方だと知っていたので、役を通してなら何をやっても受け入れてくれそうと思っていました。私がどんなでも絶対に返してくれるという信頼感があったんです。だから、共演は楽しかったですね。

――姉妹を演じていて違和感がなかったのですが、距離を詰めるための工夫をしたり?

 あまり......撮影以外は緊張するので(笑)。ただ、私が広瀬さんのことが好きだというのはバレていたみたいです。私はクランクアップのときにキャストやスタッフのみなさんに向けてお手紙を書いたんですよ。その中で初めて「ずっと好きでした」と書いたんですけど、あとからメールでお返事をもらいました。「知ってたよー」って(笑)。

■オーディションのときは「落ちたと思った」

――広瀬さんから女優として影響されたものはありましたか?

 やっぱり広瀬さんとご一緒できるということで、盗めるものは盗んで帰りたいと思っていました。ただ、広瀬さんの何よりすごいところは、そこにいるだけで映画を支配してしまうことなんですよね。それを盗むことは到底できないと、悲しいながら知ってしまいました。だから真似するどころか、一生懸命頑張らないとって。このままでは「すずちゃんにくっついている女のコがいたね」で終わってしまうと思いました。

すごく素敵な役をいただいて、私がしっかりしないと彼女たち(裕里と颯香)の思いも消えてしまうことになるんです。それはイヤだったので、広瀬さんのすごさを知ってからは、自分は自分なりにもがくことに専念していきました。

――岩井俊二監督の演出で印象に残っていることは?

 恥ずかしながら、オーディションを受けるまで岩井さんの作品を観たことがなかったんです。それでいろいろ過去の作品を観させていただいたんですけど、「こんな映画があるんだ」と驚きました。まさに自分がずっとやってみたかったものというか。

私のあこがれの女優さんたちは、役を演じて、それをカメラが撮影しているのではなく、本当にそういう人がいて、それをたまたまカメラが撮っているくらいの存在感があるんですよ。岩井さんの作品にも同じものを感じて。

だからオーディションのときに聞いたんです。「どうしたら登場人物が今もどこで生きていると思えるような映画を作れるんですか?」って。そうしたら、「僕は何もしてないけどね」と答えられて、「あ、落ちた」と思いました(笑)。だから合格を聞いたときはすごくうれしくて、その秘密を自分で見つけようと思ったんです。

――それは見つかりましたか?

 確かにいろいろと細かく演出する監督ではなかったです。でも、それがかえって良かったというか。自分は撮影期間に入ったら、役の気持ちをずっと考えていたい、切り替えができないタイプなんです。たまに「よーいスタート」が聞こえないくらい入り込んで、現実感をずっと保てていました。それは自分でも驚いたことでしたね。

■主題歌で歌手デビュー「今は誇らしい」

――『ラストレター』では一人二役のほかに、岩井俊二さん・作詞、小林武史さん・作曲の主題歌(「カエルノウタ」)も歌われています。完成前のインタビューで、「これが劇場で流れたら、穴に入りたくなるか、誇らしくなるかのどちらかだと思います」と語っていましたが、実際に聴いてみた今の感想は?

 誇らしいです(笑)。私が恥ずかしがっていると、曲を聴く人も恥ずかしくなってしまうと思い、岩井さんと小林さんを信頼して歌い切りました。私にとって宝物で、大好きな曲です。

――素晴らしい歌声でした。役を演じているときとはまた違った魅力があって。

 ありがとうございます。別の人のように感じてもらえることが私の最善だと思っていたのでうれしいです。

――オファーがあれば、また歌ってみたいですか?

 うーん、どうですかね。需要があれば(笑)。

●この続き、後編は明日(1月18日)配信!

(スタイリング/申谷弘美 ヘアメイク/佐藤寛(KOHL))

●森 七菜(もり・なな)
2001年8月31日生まれ 大分県出身 身長154cm
○2016年の夏に大分県でスカウトされ、行定勲が手がけたWebCMにてデビュー。その後は、女優としてテレビドラマや映画など数々の話題作に出演。また、昨年の夏に公開された映画『天気の子』では、ヒロイン・天野陽菜の声を演じ注目を集めた。今後も連続テレビ小説『エール』(NHK)などへの出演も控えている。
公式Instagram【@morinana_official】