昨年の夏に大ヒットした映画『天気の子』のヒロインとして注目を集め、ドラマや映画に大活躍中の女優・森七菜(もり・なな)ちゃん。その勢いは2020年を迎えても止まらず、1月17日より公開されている岩井俊二監督の映画『ラストレター』では一人二役を演じている。
インタビュー後編では、映画でも描かれた"恋文"へのあこがれから、尊敬する女優から言われたこと、もうすぐ卒業を迎える高校生活についてまで、お話をうかがった。
■スマホ世代もラブレターにはあこがれる
――『ラストレター』は2つの世代の男女の"恋文"が鍵を握る物語です。この時代には古風な設定ですが、スマホ世代の森さんから見て、"恋文"にはどんな印象を持っていますか?
森 すごく素敵ですよね。私たちはスマホでやり取りするから、フォントはみんな一緒なんですよ。名前を伏せたら誰が送ったのかまったくわからない。それだと仮に「好き」と送ったとしても、手書きよりフラットに見えると思うんです。
でも、手書きで「好き」だと、すごく直球に感じられるじゃないですか。手紙の時代の人からすると普通なのかもしれないですけど、私たちの世代からすると、手書きで「好き」は、「そんなにも好きなんだ」って思います(笑)。スマホよりも上級な感じがします。
だからきっと、この映画は観る人の世代によって感じ方が違うんです。そこも面白いです。
――スマホ世代からすると"恋文"にはあこがれがある?
森 あこがれますね、やっぱり。手紙だって失くしたら消えてしまうけど、データよりは好きな人からもらった証みたいなものが残るじゃないですか。同じ高校の女のコだって、好きな人に教科書を貸して、付箋で「ありがとう」と書いてあるだけで喜んだりしていますから、そうことが日常的にやり取りされて、好きな人の筆跡が手元にどんどん残っていくのは、すごくいいなって思います。
■日常で泣きそうになっても「これは演技に役立つ」
――『天気の子』が大ヒットしたことで、今では映画やドラマのほかにも、宣伝でバラエティ番組に出ることも増えたと思いますが、そういう場で求められる自分と、素の自分とのギャップを感じることはありますか?
森 みんな、いろんな自分がいると思うんです。「この人にはこういう話し方」みたいな。それと同じ感じで、「テレビではこういう話し方をするんだ」っていう自分がいて。猫を被っていると言われるかもしれないですけど、テレビに出させていただくのは作品のためで、自分としてはもっと作品を好きになってもらうようにしているだけなので、そこで悩んだりはしていないです。
むしろ、素の自分が見えたときに、誰かが面白がってくれたらいいなとは思っています。今度、『オールナイトニッポン0(ZERO)』に出させていただくんですよ(1月2日に放送された)。
いつもMCの方に振ってもらって話すばかりなので、自分の考え方や普段のことを話す時間があるといいなと思っていたんです。だから、『オールナイトニッポン0(ZERO)』はすごく楽しみです。
――お話を聞いていると、演技以外のところでも、自分を常に客観視されているんですね。
森 そうですね。お芝居に役立てたいって思いが強いんですよ、何でも。日常で泣きそうになったときも、「この気持ちは演技に使えるかもしれない」と思ってしまいます(笑)。
――素直に感情が出てくるわけじゃなくて、「自分はこういうスイッチが押されると泣きたくなるんだ」と観察してしまう、と。
森 そうなんですよ。それが今一番の悩みです(笑)。
――それだけ常に演技のことを考えているわけですね。まさに女優は天職じゃないですか。
森 そうなるために頑張っています(笑)。
■舞台で初共演した満島ひかりに言われた強烈なひと言
――昨年はあこがれの脚本家・坂元裕二さんの舞台(『不帰の初恋、海老名SA female/female』)にも出演されました。
森 すごくドキドキしました。舞台が始まってからは緊張しなかったんですけど、そこまでは「どんなふうになるんだろう」って。本番一回きりの舞台で、リハーサルも途中までしかやらなかったんです。愛とか恋の話で、私には全然経験したことがないものでしたから、自分にできるだろうかって不安ではあったんですけど、何とか頑張りました。
――共演は満島ひかりさんでしたね。こちらも以前からあこがれの女優さんとして名前があがっていた方です。
森 『ラストレター』で共演した広瀬すずさんは私のミューズなんですけど、満島さんは尊敬していて。だから、リハーサルのときはずっとお芝居を観察していました。
でも、このリハーサルのときに満島さんから声をかけられて驚いたことがあるんです。いろいろやり取りする中で、「七菜ちゃんは魂が古いのかもしれないね」と言われて。
――魂が古い?
森 はい。「大人っぽいね」と言われたことはあるんですけど、「魂が古い」なんて言われたことがなくて。そのひと言ですごく引き込まれました。私が信じてきた満島さんは、やっぱり私の神様だと思いました。
■いつ来てもいいように学校の靴箱は開けてあります
――3月にはいよいよ高校卒業ですが、学生でなくなることに対する寂しさはありますか?
森 学生のうちにやっておきたいことはいろいろあったんですけど、けっこう楽しく過ごせたので思い残すことはほとんどないですね。
東京と地元(大分県)を行ったり来たりする生活だったのが良かったと思います。ずっと地元にいるわけじゃないからこそ、友だちとの時間を大切にしようと思えました。だから3年生になってからもいろいろやったんですよ。
みんなでご飯に行ったり、花火をやったり、お花見したりピクニックしたり、いろんな人にドッキリをしたり、ドッキリをやられたり......。すごく充実していて、高校生のうちにやりたいことをやりきりました。今は満足です。
――じゃあ、やり残したことはない?
森 でも、ラブレターはほしいです(笑)。
――ラブレターがほしい?
森 お母さんが高校生のときに手紙で告白された話とか聞いていて、「いいなあ」と思って期待していたんです。でも、いまだにゼロなんですよ。だから、いつでもラブレターをもらえるように学校の靴箱を開けてあります。
――今の世代でも靴箱にラブレターなんてあるんですか?
森 連絡先を知らない人にはあるんじゃないですか? 私があんまり学校の中で連絡先を交換してないので、「ほしいな~、誰かくれないかな~」と思っています。卒業までに一通くらいは(笑)。
――本当に来たらどうするんです?
森 靴箱を見て、「あ!」となって、「(友だちに)見て~」ってやります(笑)。
――送った男の子が恥ずかしくなるから絶対にダメですよ!
森 来なさそうですね、これは(笑)。
(スタイリング/申谷弘美 ヘアメイク/佐藤寛(KOHL))
●森 七菜(もり・なな)
2001年8月31日生まれ 大分県出身 身長154cm
○2016年の夏に大分県でスカウトされ、行定勲が手がけたWebCMにてデビュー。その後は、女優としてテレビドラマや映画など数々の話題作に出演。また、昨年の夏に公開された映画『天気の子』では、ヒロイン・天野陽菜の声を演じ注目を集めた。今後も連続テレビ小説『エール』(NHK)などへの出演も控えている。
公式Instagram【@morinana_official】