女子高生・天乃リリサが、リリエルという大好きなキャラクターのコスプレをしてコスロム(コスプレの写真を収めたCDロム)を作ったり、コスプレイベントに参加したり――。
そんなコスプレイヤーの青春を描いた漫画『2.5次元の誘惑(リリサ)』(作:橋本悠/『少年ジャンプ+』で連載中)と、人気コスプレイヤー・伊織もえによる奇跡のコラボグラビアが、現在発売中の『週刊プレイボーイ7号』の表紙・巻頭グラビアを飾っている。
コスプレイヤーの間では、「一体どんな人物なのか? 本当にコスプレイヤーなのでは?」などと噂になっている橋本先生。そこで、先生の素顔から今回のコラボグラビアの感想、気になる物語の行方まで、たっぷり直撃した!
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――今回は『2.5次元の誘惑(リリサ)』とコスプレイヤーの伊織もえさんとのコラボグラビアを撮影させていただきました。まずはページをご覧になった感想からお願いします!
橋本 もう、素晴らしいのひと言です。まさかここまで再現してくださるとは。本当に驚きました。
――衣装は伊織さんの自作。細かいところまで再現したいということで、ガーターベルトの装飾部の色について彼女から問い合わせがあったそうですね。
橋本 そうです。普段、カラーと白黒で描く時の処理が変わるので、曖昧なままで。マンガを読んだだけではわからなかったのだと思います。すぐに確定し、お知らせしたのですが、作者以上にしっかりご覧になられていますよね(笑)。
――伊織さんご本人によれば、衣装では下乳周りの形状にこだわったようです。
橋本 なるほど、さすがですね。リリエルの衣装は「下乳からウエストまでしか肌の露出がない」ことがポイントなんです。腕も脚も、実は生地で隠れています。そうしたことまでわかった上で、下乳部分にこだわってくださったんですね。本当にうれしいです。
――それにしても、コスプレイヤーのラブコメマンガとは実にユニークですが、もともとどこから着想を得たんですか?
橋本 最初は可愛い女のコが主人公の作品を描こうということだけ決まっていて。さらに下着を描くのが好きなので、それならばラブコメ、いやいっそエロコメにしたらどうかと。一方でコスプレも好きなんです。だったらコスプレイヤーのエロコメをやってみようと思ったのがきっかけです。
――マンガに描くほどコスプレが好きってことは、ズバリ、先生はレイヤーですか? リリサがコスプレ衣装を自作する姿だったり、コスプレイベントの会場の様子だったり、細部までしっかり描きこまれている点がレイヤーたちの間でも評判のようです。
橋本 ありがとうございます。それについては、コスプレイヤーの知り合いが身近にいるんです。その人から話を聞かせてもらったり、イベントに一緒に連れていってもらったり。ですからコスプレイヤーの「あるある」が詰まったものにはなっていると思います。
で、描いたものはその知り合いに見てもらって意見を聞きます。「この衣装は現実では作れないからダメだ」なんて言われたりもします(笑)。
――ダメ出しを(笑)。でも、だからこそディテールまで描かれているんですね。
橋本 最近では書かれたセリフを見ながら「そうそう。確かにそう思った」なんて言ってもらえるようになりました。形だけでなく、コスプレイヤーがどんなことを考えているかなども理解できるようになってきたと思います。
――では、リリサはその方がモデルですか?
橋本 いいえ。リリサにモデルはいません(笑)。強いて言えば、ルフィやナルトのような『少年ジャンプ』マンガの主人公ですね。
――ジャンプの?
橋本 良くも悪くも行動が大胆で、やたら人を巻き込むんだけど、巻き込まれたほうも悪い気がしない。常に我が道を行く人間......そんなイメージです。
――確かにリリサってコスプレ愛が強すぎて、高校のマンガ部に押しかけて部長にエロい撮影を頼んだり、クラスメイトに撮影パートナーを頼んだり。でもなんだかんだ、みんなが一緒に楽しんでしまう。
橋本 はい。そういうジャンプのキャラクターが女のコで、オタクのコスプレイヤーだったらこうなるかなと思って作り上げました。
――なるほど。では、特に気に入ってるシーンは?
橋本 コミックス第2巻にあるんですが、初めてコスプレイベントに参加したリリサが、リリエルになって会場に現れるシーンはすごく好きですね。
――初参加なので失敗を連発し、意気消沈していた彼女がコスプレして登場した途端、会場中のオタクたちから絶賛されるという、2巻のクライマックスですね。すごくグッときました。
橋本 私はマンガを描くにあたっては前々から山場を決めていて、そこが盛り上がるようにある程度逆算して組み立てているので、やっぱり一番盛り上がるところに思い入れがあります。読者と同じかもしれませんね(笑)。
――この作品を読んで思うのは、悪者がひとりも出てこないところ。例えばイベントのシーンで、右も左もわからないリリサたちにイヤミをいうオタクの男性も、最後はリリサを手伝ってくれる。
橋本 そうですね。確かに意識してイヤなキャラクターを出さないようにしていますね。これから先も悪役は出てこないと思います。
――それはどうして?
橋本 オタクばかりが出てくる作品なんですけど、私自身もオタクで、オタクが好きなので、そういう人たちを悪く描きたくないんです。
それと時代がそういう流れ、読者に過度なストレスを与えないのが今風のエンターテイメントなのかな、というのもあります。
――ストレスを与えないのが時流だと。
橋本 やはりYouTubeなどがこれだけ普通になって、みんなが見たいものだけを見るようになると、特に若い読者はストレスのかかるものをわざわざ見ないと思うんです。もちろんすべてのエンタメがそうだというわけではないですよ。ただ、私が現在連載している『少年ジャンプ+』はプラットフォームがスマホですから。特にそういう性質はあると思います。
でもそんなこと言いつつ、そのうち悪役が登場するかもしれないですけど(笑)。
――ちなみに先生は、いつ漫画家を志したんですか?
橋本 本格的に考えたのは高校3年生の時です。
――影響を受けた漫画家さんはいるんですか?
橋本 ひとり挙げるなら、矢吹健太朗先生です。
――矢吹先生の作品も女のコが可愛いですよね。
橋本 影響を受けて、自分の絵も矢吹先生に似ていた時期はあります。でもマンガ自体、たくさん読んだというタイプではなくて。どちらかというとアウトプットタイプというか、自分の中にあるものを描きたいだけなんです。例えば、『2.5次元の誘惑(リリサ)』に出てくるオタクたちは、マンガ部のときの仲間をイメージしています。
――先生自身を描いているわけではないと。
橋本 違います(笑)。
――では本作以降、コスプレイヤーをどう思うようになりましたか?
橋本 改めて素晴らしいと思いました。前以上に好きになりました。私はマンガのキャラクターを本気で好きになるという経験をしたことはありませんが、でもコスプレイヤーがそのキャラになって登場してくれたら素直に可愛いと思えるんです。だから、ありがとうという気持ちですよね。
――先ほど山場は先に考えるとお話しされてましたけど、この作品の結末もすでに決めてあるんですか?
橋本 いえ。もともとこれは、1話完結でエロいことだけ描こうと編集さんと話し合って始めた作品なんです。それがイベントの話を描いたあたりから読者の反応が劇的によくなって、そこから今のような「熱血青春コスプレマンガ」のような感じになっていきました。なので、この先もまた変わっていくと思います。
――今後、もしアニメ化したらファンもさらに増え、リリエルのコスプレイヤーが次々出てきたり......。
橋本 そうなったらうれしいです。今回の伊織さんのコスプレは本当に感激しましたので。とはいえ、まずは描かないと(笑)。この先の展開もぜひ期待してほしいですね。