『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。
今週はエレキコミックのやついいちろうさんが登場。自身が影響を受けた映画作品について語ります!
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──影響を受けた映画はあります?
やつい いろいろ考えたんですけど、やっぱり『南極物語』(1983年)じゃないかなと。あの映画を見て、「犬ってなんてけなげなんだ」って気持ちになったのを覚えていて。それが今、犬を飼っていることにつながってるんじゃないかって思うんです。
──やついさんは愛犬家として有名ですもんね。では、芸人として人生を動かされたものというと?
やつい 映画ではないんですが、『夢で逢えたら』(フジテレビ、88年~91年)ですね。当時は中高生でしたけど、あれを見てコントを作ってみたいなと思ったんです。
──実際に披露したことは?
やつい 人にやらせたことなら。高校のときに生徒会長をやっていて、書記のやつにやらせたんですよ。
──それはウケたんですか?
やつい ウケてたと思いますね。で、そうなるとなんか悔しくなるじゃないですか。こんなにうまくいくなら俺がやればよかったなって(笑)。でも、そこで手応えがあったから、大学で落研に入ったんです。
──何かを創作してみようと思ったのはそれが初めてでしたか?
やつい いや、もともと小学校のときに物語を書いたりしていたんですよ。架空の地図があって、それをもとにお話を作るみたいな授業で。中学時代も小説を書いて、友人に読ませたりしていました。でも、授業中に書いていたから成績がめっちゃ落ちてすぐにやめたんですけどね。
──プロの芸人になってから影響を受けた映画はありますか?
やつい 『シャイニング』(80年)は何度も見ている作品ですね。とにかく好きなんですが、見るたびに笑っちゃうんです。
──と言いますと......?
やつい だってあれ、どう考えても演技が過剰じゃないですか。キャラクターもやりすぎだし(笑)。出てくる人みんな顔が面白い。
──確かにコントっぽい(笑)。
やつい むちゃくちゃコントですよ。迎えに来た人とか意味なくすぐ死ぬし、「何しに来たんだ!?」ってツッコミたくなりますよね。もちろん、最初は怖かったんです。主人公のジャック(ジャック・ニコルソン)の頭がおかしくなる瞬間とか「うわー」ってなった記憶もあるし。
でも、今はそのシーンを見ると、同じように顔が動いちゃう。だから、コントを作る前に見ることが多いですね。
──確かに、やついさんの書くコントは狂気性がありますし、影響を感じますね。さて、ラーメンズ片桐仁さんとエレキコミックさんによるユニット「エレ片(かた)」のライブが今年も始まります。見どころは?
やつい 制約がないのが舞台の面白さだと思っています。ルールや制限時間もなければ、スポンサーも放送禁止用語もない。もちろん、制約があるなかで行なうコントもそれはそれで素晴らしいんですけど、それはボクシングでいえばプロの試合。
素晴らしい技術だけど、本当の殺し合いではない。僕らのユニットは舞台でしかコントをやらないですし、「目の前のお客さんをどうすれば笑い殺せるか?」ということだけ考えていますね。なんでもありな殺し合いを楽しんでもらいたいなと思います。
★後編⇒角田陽一郎×お笑い芸人・やついいちろう(エレキコミック)「"カウンター"気質だけど、映画に関してはひねくれない」
●やついいちろう
1974年生まれ、三重県出身。お笑いコンビ「エレキコミック」のボケ・ネタ作り担当。DJとしてライブに出演するなど、幅広く活動している
■『エレ片 Love Love コントの人』
【愛知公演】 2月5、6日@東文化小劇場
【大阪公演】 2月8日@エルおおさか・エルシアター
【福岡公演】 2月15日@都久志会館