『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。
先週に引き続き、3月6日公開予定の『劇場版 おいしい給食Final Battle』に主演される俳優・市原隼人(いちはら・はやと)さんが登場!
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──幼少期に見て記憶に残っている作品はありますか?
市原 とにかく好きだったのはジャッキー・チェンの作品です。自分が普段できない体験を見せてくれる、周りにはないドキドキする環境を提供してくれるのが彼の映画でした。
──「カッコいい」と「面白い」だとどっちが先でした?
市原 「カッコいい」から入ったと思います。空手を始めてみたり、父に本を持ってもらってパンチの練習をしてみたり(笑)。今思うと、「映画にそこまで影響されたんだ」という感じですけど。小学校低学年の頃の話ですね。
──ほかに影響を受けた映画は?
市原 ジャッキー以外だと『蒲田行進曲』(82年)。あれを初めて見たときは「やられた!」って思いましたよね。人間の泥くささとかひたむきさ、男の生きざまが美しく描かれていて。DVDで見たんですけど、「映画ってこれだけ人の心を動かすんだよ」「映画を作ってる人たちってこんなに楽しいんだよ」って言われているような気がしたのを覚えています。
──それは何歳のときですか?
市原 学生の頃でしたね。
──ほかに好きな作品は?
市原 『イントゥ・ザ・ワイルド』(07年)。決められたレールの上で生きてきた主人公が「本当に自分に必要なものは何か?」と考えて旅に出るんですけど、その過程が本当に人間くさくて、うらやましかったんです。なかなかそういう旅には出られないから、素直に「ああ、こんな生き方したいな」って思いましたね。
──あれ、超最高ですよね! 原作も読んだくらい好きです。市原さんでリメイクしたら超カッコいいと思うんですよ。
市原 やりたいです。自分はもともと旅がすごく好きなんです。10代の頃は「ニューヨーク行きたい」と思って3日後に行ったりとかしていたんですね。国が違えばルールも習慣も価値観も違う。旅人のように自由に生きるのって、自分の責任も問われるじゃないですか。『イージー・ライダー』(69年)とかを見てるとそんなふうに感じますね。
──今のお話って『おいしい給食』で演じられている甘利田先生みたいですよね? 「自由に生きたいけどできない。でも給食をおいしく食べることに命をかけてる」みたいな。
市原 確かに彼も人に理解されることなく、ずっと孤独だったんですよね。だからこそ、自分だけのロマンを給食に対して抱いていたけど、それを生徒が救ってくれたんです。
──本当に市原さんの熱演はすさまじいです。生徒の給食の食べ方に驚いて足をピーンとさせるシーンなどを見ていると、カメラに映るのが苦手とおっしゃっていたことが「説得力なくない?」と思ってしまうほど(笑)。
市原 まあ、あれは自分ではないので(笑)。役者って作品ごとに役柄を作って壊して、切り替えていくんです。だから、監督やスタッフが違うと自分の入り方、感じ方、モノの見え方も全然変わる。
『おいしい給食』はそれを特に感じられた作品でした。80年代が舞台なんですけど、年配の方からお孫さんまで一緒に見て話せる作品になったと思うので、ぜひ劇場に足を運んでください。
(スタイリング/小野和美[Post Foundation] ヘア&メイク/福間友香[VANITES])
●市原隼人(いちはら・はやと)
1987年生まれ、神奈川県出身。04年に日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。主な代表作は『ウォーターボーイズ2』『ROOKIES』など
■『劇場版 おいしい給食 Final Battle』2020年3月6日(金)より全国公開予定
配給:AMGエンタテインメント/イオンエンターテイメント