『週プレNEWS』連載中(毎週月曜更新)の漫画『キン肉マン』(ゆでたまご作)のジャンプコミックス(以下、JC)各巻の中から、ゆでたまご先生ご自身にお気に入りの原画を選んでご紹介いただくシリーズ企画"ゆで原画"第18回。
ついに開戦した"フルメタルジャケッツ"(ソルジャー&ブロッケンJr.組)vs"オメガ・グロリアス"(オメガマン・アリステラ&マリキータマン組)のタッグマッチの激闘模様が描かれる最新JC70巻が、まもなく3月4日(水)発売に!
そんな期待値MAXの最新刊を読む前に......おさらいを兼ねて、その前巻JC69巻から作者・ゆでたまごの両先生に思い入れの深い漫画原稿一枚をそれぞれ理由も添えて選んでもらった。
まずは原作シナリオ担当・嶋田隆司先生に選んでいただいたのがこの一枚(JC69巻/66ページより)。
あの強豪フェニックスを倒し、いよいよオメガの仇敵ザ・マンの本拠地である超人墓場へ乗りこもうと息巻くオメガマン・アリステラ。しかしそれを阻む謎の黒い影がワームホールの向こうから近づいてくる。せりあがってきたその影の正体は...行方不明になっていたキン肉マンの実の兄、キン肉マン ソルジャーこと絆の軍団"超人血盟軍"のリーダー、キン肉アタルその人であった!
――嶋田隆司先生(ゆでたまご・原作担当)コメント
「五王子の最後にソルジャーをここで出すのは、僕らはこのシリーズ開始前から決めてたんですけど、もちろん読者は誰が出てくるか知らずに読んでくれているわけです。だからそれがギリギリまで誰だかわからないようシルエットにして、さあ誰だとページをめくる直前までドキドキしてもらって、めくって初めて姿を見せる。そんな真打ち級の超人のファーストインパクトになる大事なシーンですから、どういう表情で、どういうポーズで出てくるのか......何度も考えて。イメージとしてはお芝居の舞台で、舞台中央の奈落から看板役者がせりあがってくる感じを目指しましたが、中井君がバッチリまとめてくれました。
その満足感が大きかったのがひとつと、もうひとつここを選んだ理由は、この回は久しぶりに週プレ本誌で掲載した回でした。40周年の特別記念号にしてくれるということで。でも誌面掲載となると、いつものWEB連載より締切がかなり早まるんです。だからこの前の数話の展開を考えつつ、同時にこの回の展開も考えないといけなかった。その記念号のラストページでアタルを出すとなるとつまり、数週後の原稿のラストだけ決まってて、そこに帳尻が合うようにその前の数話も作らなきゃいけない。これがなかなか大変なんですけど、思えば昔のジャンプ時代は、カラー原稿の時にそういう作り方をしてたんですよね。カラーページの方がモノクロページより締切が早くて入稿号数の順番が逆になる。WEB連載ではカラー原稿がないから、そんなやり方はしばらくすっかり忘れてたんです。でも久しぶりにその感覚を思い出しながらやれたのが......大変だけど楽しかったですね。それもあって、ここは思い入れ深いシーンになりました。帳尻が合ってよかったです(笑)」
そして作画担当・中井義則先生に選んでいただいたページはなんと......図らずも嶋田先生が選んだのと同じ一枚、やはりソルジャーの初登場シーンだった!(JC69巻/66ページより)
――中井義則先生(ゆでたまご・作画担当)コメント
「久しぶりにソルジャーの全身を描くということで、緊張しながら臨みました。目指したのはとにかくキン肉マン以上の貫禄、それと兄の風格、優しさを出すこと。それにオメガのふたりと同じページに収まるということで、決してそこに負けない存在感。あとソルジャーはマスクに覆われて表情が出せないので、目だけで芝居をさせることが必要になってくるんですが、それもあって瞳をキン肉マンより大きくしていて、その瞳で何を語るのか。大きな瞳はもちろん小さいよりは感情を乗せやすいですけど、ひとつ間違うと全く別の芝居になってしまいかねない怖さもあるので、そこはいつも気を遣います。そしてポーズは腕組み一択でした。シンプルに飾りすぎず威厳を見せる。
話はややそれますけど、その兄の貫禄を出すうえで僕が少しイメージしたのは『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(1965年、本多猪四郎監督)という昔の怪獣映画でした。このサンダとガイラというのは兄弟の怪獣なんですけど、まず弟のガイラが人間に危害を加える大暴れをしている。それで自衛隊にこらしめられてるわけですけど、そこに心優しい兄怪獣のサンダがガイラの暴挙を止めにやってくる。その兄の登場時の安心感がすごいんです。やっと止めにきてくれた!......って。要はサンダは、暴れて退治されそうになっているガイラを含めたみんなを助けに来たんですよね。その兄の大きさが僕は大好きで、アタルのお兄さんっぽさをどうやって出そうと考える時は、ついその映画のことを思い出しながらやってるところはありますね。このシーンもそれをちょっと思い出しながら描きました。
ちなみに、ソルジャーの迷彩も昔はみんな手描きでしたけど、今回専用のスクリーントーンを新たに作って統一感を出すようにしました。相棒とかぶったかもしれませんが、そうして色々準備して描いたシーンだけに、やはり僕もここは思い入れが深い一枚ですね」
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ついに始まったこの世の命運をかけたタッグマッチ! 久々に闘う姿を見せるソルジャー、己の人生をかけてこの闘いに望むアリステラ、さらにその両者をそれぞれ支えるブロッケンJr.とマリキータマンの活躍も見逃せない!
今回ゆでたまご先生におさらいしてもらったJC69巻の続き、最新JC『キン肉マン』70巻はまもなく3月4日(水)発売! 乞うご期待!
★次回"ゆで原画"第19回はJC『キン肉マン』71巻(2020年6月4日発売予定)の発売直前、2020年5月末頃にお届けいたします。お楽しみに!