15年にわたる『ゴング格闘技』での連載を、リード文、近況欄までほぼそのまま収録した吉田豪さんの新刊『書評の星座』。サブタイトルに「吉田豪の格闘技本メッタ斬り2005‐2019」、帯に《この一冊でわかる格闘技「裏面史」!》とあるとおり、格闘技・プロレス界で起きたさまざまな事件の裏側に迫っている。
事実誤認やおかしな主張に対しては「辛口」という言葉では足りないほどの筆圧で論破するゆえに、トラブルが起きることも少なくないという。書評というリングの上で「戦い」を続ける吉田豪さんを直撃した!
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――15年間の書評を読み直すという作業を通して、何を感じましたか?
吉田 ツイッターに「吉田豪の口が悪くて驚いた」みたいな感想が異常に多いんですけど、自分でも読み直したら口の悪さに驚きましたね(笑)。特に前半は口汚い! 昔も今も自分は穏和な平和主義者だと思ってたんですけど、ツイッターを始めて以降、人格が変わった部分があったのかなと、今さら気付きました。ツイッターでケンカ腰になると何もいいことないので、常に丁寧な口調でちゃんと返す。それをやっていくうちに今の人格になったと思うんですけど、当時はここまで口が悪かったのか!と(笑)。
――でも、15年間通して切れ味は変わってないですよね?
吉田 そうですね。今でも文体こそ丁寧にはなっているけど、やってることは同じでダメな本は容赦なく潰しにいくので(笑)。この書評連載はもともと25年ぐらい前に『紙のプロレス』という雑誌で始まったんですが、そのときはもっと口汚い。ボクもまだ20代半ばとかで若かったから今よりギラギラしていて、正直読み直したくないくらい。この本に載っているのは、連載が『ゴング格闘技』に移った後の「丸くなってからの15年」のはずだったんですけど、全然丸くなってなかったという(笑)。
――特に、事実誤認や明らかにおかしな主張に対しては厳しく叩きますね。
吉田 プロとしてどうかと思う同業者(ライターや編集者)のことは容赦なく糾弾しますね。単純に文章がひどいとか、利害関係だけで誰かを上げたり誰かを落としたりしているとか、そういうのも指摘せずにはいられなくて。「これは初めて明らかになった情報だが......」という記述があったときに、「いや、それはすでに誰々の本に書いてある。しかももっと面白く!」みたいに、その本から引用してまで指摘する。タチ悪いな、と自分でも思いながら(笑)。
ボクの強みはやっぱり、これまでの蓄積ですね。プロレス~格闘技関係で25年間書評を書いてきて、それ以外にも大量に本を読んできたし、選手の取材もたくさんしているから、過去の発言とかいろんなものを引っ張り出して、話を立体的にして「答え合わせ」ができる。ここまでプロレス~格闘技本を読み続けてる人はそういないはずで、一時期は日本で出版されたプロレス本は全部買わなきゃいけないって義務感があるぐらいでした(笑)。
――さすが「プロ書評家」を名乗るだけのことはあります!
吉田 その一方、選手に対してはリスペクトがあるので、その選手の考え方が特殊だったとしても、基本的にはそこを面白がるというスタンスでやってます。例えば、桜庭和志戦で体にクリームを塗った「ヌルヌル事件」の秋山成勲(よしひろ)の本を読むと、悪いことをしたという意識がこれっぽっちも感じられないので、そこはツッコミを入れつつも「秋山は天然ボケなんだ」と解釈して楽しむ方向に持っていったり、吉田秀彦の主張には明らかに乗れないけど、その「乗れなさ」を面白がってみたり。
――選手や団体関係者に対しては、「デタラメさを愛(め)でつつ、正しくツッコミを入れる」という印象を受けました。
吉田 格闘家は天然ボケ体質の人が多いので、ツッコミを入れることでようやく完結する部分もあるし、その上で楽しむというか、最悪「面白ければよし!」というのがベースにある。そこは、格闘技が好きでマジメに格闘技ライターをやっている人たちとは決定的に違う部分だと思うんですよ。人として正しくなくても、本として正しければOKというか。文章を面白くするためだったら、ライターはいろいろな犠牲が伴うことを覚悟しなきゃいけない。その覚悟はあるのか?みたいなことを書き手にも求めているんだと思います。
――時には人間関係をも犠牲にする覚悟が必要だ、と書いてますね。
吉田 それは本当に思います。格闘家との人間関係をベースにライターをやっている人の多くは、その関係性を崩せないから、どうしても深いところに突っ込めず、優しくなっちゃう。それが目に付くと「そこは腹を括(くく)って踏み越えないと!」と厳しく書かずにはいられない。ボクは何度、それでトラブルになってきたか。でも、書いたものが結果的に評価されたら相手もわかってくれて、関係が戻ったりすることもあるんですよ。
――そういったこともすべて、「今月の豪ちゃん」という近況報告欄に盛り込んでいて、それがまた面白い!
吉田 完全に「吉田豪のトラブル史」ですからね。ここでトラブルが起きて、こう転がっていったっていう流れがよくわかる一冊です(笑)。
――そんな豪さんの格闘技の原点は、この本にも書いてありましたが、お姉さんの影響なんですね?
吉田 格闘技やプロレスは全然好きじゃなかったんですけど、姉が買っているプロレス雑誌を読んでいたのがベースになってますね。『ビッグレスラー』という、子供向けの雑誌が本当に異常だったんですよ。プロレスマスコミの人が作っている雑誌ではないがゆえに起こる事故があって。木村政彦をロングインタビューして、プロレスの仕組みを子供向けのプロレス雑誌に載せる......バカなの!?っていう(笑)。当然、大問題になったらしいんですけど、ボクのベースにはそういう刷り込みがある。
――で、入り口で大きなインパクトになったのは、極真空手の大山倍達(ますたつ)総裁だったと。
吉田 ちょうどこの仕事を始めた頃にハマったんですよ。だから亡くなる直前ぐらいで取材はできなかったんですけど。もともと梶原一騎先生が大好きだったので、大山総裁も大好きになって。調べれば調べるほど、裏話を聞けば聞くほど面白い。初期の本は本当にデタラメですからね(笑)。
――空手の本も多数紹介していますが、引用されているエピソードには強烈なものが多いですね。
吉田 極真関係者は完全にアウトな話も平気で本に載せちゃいますからね(笑)。昭和ならまだしも、数年前にこんなことが本に書かれてたんだ!と驚くことも多いです。あと、梶原先生の実弟で、作家・空手家の真樹日佐夫(まき・ひさお)先生は、「東京一、ケンカが強いといわれた男と引き分けた」という話を何度も書いているんですよね。実名は出してないけど、誰だかわかる感じで。まあ、安藤組の花形敬さんのことだと暗に言ってるわけですけど、そんなことを書いたらどうなるか。当然、厄介な人が出てくるに決まっているわけですよ。
真樹先生はそんな厄介な人たちのことも受け止め、「あいつなんか兄貴の顔で偉そうにしているだけで、ただの名誉段だ」とか批判していた誰よりも空手の稽古を続け、晩年まで体を維持して、最後まで酒と女の話ばかりしていた。そうやってリスクを背負った上でキャラクターを演じていたことが素晴らしいのであって、どこまでがリアルでどこからが幻想なのかは、ボクは重視していない。幻想を商売にする人の腹の括り方がカッコいいというか、それを背負う姿勢はよし!っていう感じです。大山総裁も完全にそうですよね。
――『ゴング格闘技』で連載が始まった2005年は格闘技バブル真っ只中でしたが、まもなく衰退していきます。その中で、格闘技本にはどんな変化がありました?
吉田 格闘技バブルのときはいろんな選手の本が作られていましたが、バブルが弾けると本当にわかりやすくリリースが減っていきました。そんな中で書評を続けるという「苦闘の歴史」でもあるわけです。格闘技本のリリースが少ないからプロレス本を扱う機会も増えるし、経済ノンフィクションでもアウトロー系ノンフィクションでも、格闘技の要素がちょっとでもあれば紹介する。無理やりいろんなジャンルの本を出した結果、幅が広がって、普通に選手の本をいじってるよりも面白くなったと思うんですよ。普通だったら、格闘技専門誌に「石井館長の脱税の手口」を載せるとかあり得ないですからね(笑)。
――確かに(笑)。そういうキワドイ話を載せる際には特に、「引用」を多用する手法は効果的ですよね。
吉田 そうですね。でも、もともとプロレス本でもタレント本でもそのスタイルでやっていて。よっぽど面白い本だったら感想だけで文字数を埋められるけど、そうじゃない本が多数なわけで。とすると、何が一番いいかというと、「書評とは名ばかりの引用書評」というスタイルだろうなって。情報としてだけでも読む価値が出るし、書評を読んだ人がその本を読んだつもりになれるし、実際に読んでみたくもなる。「書評を読んで面白そうだと思って買ったら、面白いのは引用された部分だけだった」という苦情もあったりしますが、結果的に著者や出版社にプラスになればいいじゃないですか、という卑怯なスタイルでやってます(笑)。
――作家が書くノンフィクションは別として、選手本人の名義の本は、そのときの選手の立ち位置や周囲との人間関係によって、どこまで踏み込んで書くかが変わってくる気がします。
吉田 それは編集者のセンスにもよるし、選手本人によっぽど燻(くすぶ)ってるものがあったりしない限り、面白いものにはならないですよね。佐竹雅昭さんを取材してもそんなに面白みは感じなかったんですが、彼が現役を引退した後に出した『まっすぐに蹴る』はK-1暴露本的要素があって異常に面白かった。あれは奇跡の書! でも、その次の武道家モードの本『武師道』はマジメすぎて全然面白くなかったから、タイミングも大きいんでしょうね。守るものもなく何でも言える時期もあれば、ガード硬めにしなきゃいけない時期もあって。
――『書評の星座』は計165冊もの本を紹介しているだけあって、同じ著者の本が複数回出てきます。特定の人を定点観測しているような楽しみ方もあると思うんですが、その中で、須藤元気さんの本がやたら出てくるのはなぜですか?
吉田 「なんでコイツはこんなに須藤元気の本を推してるんだ」「何か裏でもあるのか?」って思われるかもしれないけど、さっきも言ったように格闘技本のリリースが少なすぎる時代だったんですよ。そんな中、須藤元気さんだけは毎月のようにいろんな出版社から同じような装丁で本を出していた。ただ単にそれだけの話なんですけど、出版社によって内容に違いがあるから、その流れもわかって面白いと思います。
――概ね高評価してますよね。
吉田 彼は基本、クレバーで、こまめにギャグを入れないと人には伝わらないみたいな自覚がある人だし、ちゃんと自分で本を書いている数少ない格闘家だと思います。
――「地球の時間で3000年後の惑星エササニの多次元的存在」である「バシャール」との対談集とか、ぶっとんだ内容の本も多数あります(笑)。
吉田 もう、アウトなレベルでスピリチュアルな人なんですよ(笑)。
――と思ったら、現役時代をしっかり振り返る本も書いていたり。
吉田 あの人は客観性がありますからね。自分の見せ方をちゃんとわかっている。そのへんもすごくクレバーで、格闘技が沈んでいくときに、自分の格闘技色を巧みに消した結果、業界と一緒に沈まなかった人です(笑)。
――そんな須藤元気さんもいまや国会議員ですが、立候補すると聞いたときは?
吉田 この本でも「将来的に政治に関わろうかと思っている」という発言を引用していて、ようやく伏線が活きたと思ったところなんですが、須藤元気&乙武くんはだいたい読めてました(笑)。客観性があってボクと文化的な話ができる、あのへんの位置にいる人は政治の世界に行きやすいんでしょうね。
――あと、定点観測という意味では、前田日明さんの面白さは抜群の安定感がありますね。
吉田 波風を立てるようなことを必ず言ってくれるので、怒る人が多いのはわかりますが、書評する側からしたら本当にありがたい存在です。ただ、今回引用している部分でも確実にアウトなやつがいくつかあるんですけどね(笑)。
――今日のインタビューはネットに掲載するので、具体例を挙げるのはやめておきます!
吉田 よくこんな話を載せたなっていう本がたくさんありますけど、その話を今、こうして書評を再録して拡散するのはどうなんだろうって思ったりもして(笑)。でも、ボクが書いたものとか本当によくチェックしている人なので、その大変さはあるんですよ。一度、夜中に電話がかかってきて怒られたことがありますから。
――どんなことを書いたんですか?
吉田 前田日明のすごさを、藤子・F・不二雄先生の『劇画オバQ』に例えて『SPA!』のコラムに書いたんですよ。『劇画オバQ』っていうのは『オバケのQ太郎』の後日譚で、Qちゃんが15年ぶりに人間の世界に帰ってきたら、正ちゃんたちがみんな大人になっていた。飲み会をやって子供の頃の夢を思い出し、オバケの国で事業を立ち上げようみたいな話で盛り上がるんです。でも、翌朝目覚めたら、みんな現実の世界を生きる大人に戻って、Qちゃんは「正ちゃんはもう子供じゃないんだ」と落胆してオバケの国に帰っていく、という話です。
UWFの同志を含め、いろんなレスラーが年を重ねて大人になっていくじゃないですか。そんな中、前田日明だけは変わらないのはすごい! それはある意味、『劇画オバQ』みたいだって書いたら、「人のこと、オバQとはなんや!」ってことになって(笑)。「いや、違うんですよ!『劇画オバQ』という作品がありまして」って説明しても、「大食らいで何もできないオバQって意味か?」って解釈してるみたいで。いくら説明してもダメで1時間くらい怒られ続けて。いつか前田さんに『劇画オバQ』を渡さなきゃって思っているんですけどね。前田さんは本当に面白くて、いい人なんですよ。久しぶりにイベントで会ったときとか、えらい親身になって、「吉田君もちゃんと芸能事務所に入ったほうがいいよ。タイタンがいい」とかアドバイスしてくれたり(笑)。
――アハハハハ! 大人になるといえば、名著『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』の増田俊也(としなり)さん。最初から真剣勝負だとわかっていれば木村は力道山に負けるはずはなかったという信念のもと『ゴング格闘技』の連載で取材を続けますが、不都合な証言ばかり集まって、辛い執筆作業になっていく。《編集長に電話で「こんな誰も報われない仕事をやってなんになるんですか」と泣きながら言った。「なにを言ってるんですか。どれだけこの連載のファンがいると思っているんですか」。編集長も電話の向こうで泣いていた》というエピソードがグッときました。
吉田 その話、最高ですよね。
――でも、その後の中井祐樹さんとの対談本では、《あのとき木村先生も力道山も30代の若者だった。でも俺はいま50歳だ。だから若者たちがいつまでも若いときの喧嘩で憎み合ってるのを『もういいだろう。俺がぜんぶ受け止めるから』っておさめる立場にあるんだよね》と言っていて、あ、力道山を許容できるようになってる!って。
吉田 美しい話ですよね。それぐらい感情移入したほうがノンフィクションは面白くなるんだなって思います。「ノンフィクションは公正中立であれ」とか言われたりしますが、全然、偏ってていいんですよ。『1984年のUWF』の柳澤健さんも思い切り偏ってるじゃないですか。最近出た『2000年の桜庭和志』だって、前田日明さんと髙田延彦さんにはかなり手厳しいし。だけど、それでいい! ボクは比較的、客観的な人間なので、須藤元気さんや中井祐樹さんのような客観性のある人と話が合うんですけど、本に関してはもっと主観的な人のほうが面白くなると思ってるんです。空気が読めてないとか、周りが見えてないとか、そういう人のほうが正しくはなくても面白い本が出来上がる。
――『書評の星座』の中で、個人的に大好きなエピソードはなんですか?
吉田 これは本文ではなくリード文に書いたことですが、元『週刊ファイト』編集長・井上譲二さんの本に、『ファイト』と全日本プロレスとの間に溝があったことの理由が書いてあったんです。空手家の水谷征夫さんが、「いつなんどき誰の挑戦でも受けると言うなら、俺の鎖鎌の挑戦を受けろ!」と猪木さんに迫った事件があったじゃないですか。猪木さんの懐刀だった新間寿さんがうまく丸め込んで、猪木さんと水谷さんが「寛水流」という空手の流派を作ることで手打ちにしたという見事な話です。
その後、新間さんがジャイアント馬場さんに挑戦を迫るよう水谷さんを全日本に差し向けたら、バックからより恐い人間が出てきて逃げたという話も大好きで。馬場すげ~!と(笑)。ここまでは知っていたけど、井上譲二さんの本での発見は、馬場さんへの挑戦状を持っていったのは、『ファイト』初代編集長の井上義啓さんだったこと。記者の立場でそんなことやっちゃダメじゃないですか(笑)。すっかり忘れていたけど、今回読み返して爆笑したんですよ。そういう、ボクも忘れていたようないい話が大量に詰まってる本です!
――豪さんはこれからもスタンスを変えずに続けていきますか?
吉田 そうですね。「書評は平和ではない。書評は戦いである」というフレーズを掲げて始めた連載ですが、本当にこんな戦いになるとは思ってなかった(笑)。ボクが『紙のプロレス』に入ったとき、『大山倍達とは何か』という本を作ったんです。会社が池袋にあって極真会館に近かったので、本に激怒した空手家の方々から抗議の電話がかかってきました。電話口で「今からそっち行くぞ! 俺は気が短いんだ」と凄む空手家に対し、当時の編集長・山口日昇が「気が合いますね! ボクも気が短いんですよ!」とか返していて。格闘技って恐ろしい世界!と思ったんですよ。
――肝が据(す)わってますね!
吉田 そしたら、そんな恐ろしい世界で、明らかに当事者が読む専門誌で、ギリギリの書評連載を続けることになるという(笑)。とはいえ、プロレスも恐ろしい世界ですからね。昔、新間寿さんの息子・新間寿恒さんのことをザ・グレート・サスケとかが「バカツネ」と呼んでいて、『紙のプロレス』でボクが担当していた『プロレス用語大辞林』に「バカツネ」という項目を作ったら、激怒した新間さんに呼び出されて、息子さんの膝蹴りを食らったんですよ。
そのとき、ボクは新間さんが昔出した『プロレス仕掛人は死なず』という本を持っていって、膝蹴りをもらった直後に「サインください!」と。「そうか!」と言って日付入りでサインをくれたから、いつやられたかハッキリわかるんですけどね(笑)。その後、新間さんとも仲良くなって何度も一緒にイベントをやるようになるんですけど、ミスター高橋さんをインタビューしたとき、新間さんがまた怒って。
――ミスター高橋さんが『流血の魔術 最強の演技』でプロレスの仕組みを明かしたときですか?
吉田 そう。「あんな男にインタビューなんかするな! お前はプロレスの裏切り者だ!」って。ちょうどそのとき、新宿フェイスで興行があって、顔を出したら、新間さんが「豪ちゃん! 今すぐリングに上がってこい」と。そして、「サスケ! 4の字固めをかけてやれ!」とリング上で公開制裁ですよ。普通、4の字をかけられたら、両手でマットを叩いて派手に苦しむじゃないですか。でも、ボクは感情表現が苦手なんで、できないんですよ。「あぁぁぁ......」って感じで顔を歪めて地味に痛がることしかできない。自分は「やる側」には致命的に向いてないと痛感しましたね(笑)。
■『書評の星座 吉田豪の格闘技本メッタ斬り 2005-2019』
発行:ホーム社 発売:集英社 2700円+税
●吉田豪(よしだ・ごう)
1970年、東京都生まれ。プロ書評家、プロインタビュアー、コラムニスト。編集プロダクションを経て『紙のプロレス』編集部に参加。そこでのインタビュー記事などが評判となり、多方面で執筆を開始。格闘家、プロレスラー、アイドル、芸能人、政治家と、その取材対象は多岐にわたり、『ゴング格闘技』をはじめさまざまな媒体で連載を抱え、テレビ・ラジオ・ネットでも活躍の場を広げている。著書に『人間コク宝』シリーズ(コアマガジン)、『聞き出す力』『続聞き出す力』(日本文芸社)、『サブカル・スーパースター鬱伝』(徳間書店)、『吉田豪の空手☆バカー代』『吉田豪の"最狂"全女伝説』『吉田豪と15人の女たち』(白夜書房)など。