丸山ゴンザレス氏(左)の映画体験を角田陽一郎氏がひもとく!

『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。

『クレイジージャーニー』で一躍、名を上げた危険地帯ジャーナリストの丸山ゴンザレス氏が先週に続いて登場!

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――最近の作品で好きなモノは?

丸山 一番評価しているのは『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』(2014年)。旅だし、食べ物だし、アメリカだし、自分の好きなモノが詰まっていて最高なんですよ。何よりキューバサンドがうまそう。

監督・脚本・主演のジョン・ファヴローが作中で作るんですけど、ハイカロリーすぎて、もはやカロリー表示がない。キューバサンドはもともと大好きで、アメリカに行くとキューバ人コミュニティにあるカフェで絶対食べちゃいます。

――そういう食への興味って、何かきっかけはあったりします?

丸山 もともと食いしん坊でしたけど、食べ物とかそれを取り巻く場を書くようになったのは、辺見庸(よう)先生の『もの食う人びと』を読んでからですね。インドの安宿に泊まったときにちょうど置いてあって、暇だったからずっと読んでいたんです。

でも、食べ物で表現できることって限界があるし、もっと広い世界を表現したいなって思うようになって。その集大成といえるのが、メキシコの麻薬戦争ですね。

――『クレイジージャーニー』(TBS)の。ある意味、代表作ですね。

丸山 現地で銃撃戦が起きたりトレーラーが燃やされたり、麻薬カルテルに追い込まれたり......。一週間しかないなかで、よくあれだけ映画みたいなことが起き続けたなと思います。

――確かに衝撃的でした。

丸山 実はあの企画は、TBSすらダマし討ちで行ったんです。「全然大丈夫です」「安全です」って張って、現地でディレクターが「ふざけんなっ!」ってキレるという(笑)。

でも、そこにこぎ着けるまでがものすごく大変で、コーディネーターはもちろんのこと、通訳すらなかなか見つからない状況でした。で、現地である男たちを雇ったんですけど、ここに『カルテル・ランド』(2015年)という映画が影響していまして。

――まさにMoving Movieですね!

丸山 実はこの作品の日本公開前に、配給元の会社が映像を見せてくれたんですよ。そしたらもう、衝撃を受けて。「ひとりのドキュメンタリー監督がここまでやるんだ」と感服すると同時に、ひとりのジャーナリストとして、物書きとして悔しかったんですね。

それで、字幕に「メキシコユニット」という単語があるのに気づいて、居ても立ってもいられず、マシュー・ハイネマン監督に「日本で影響力のある番組で紹介するからつないでくれ」と大きく出てみたら、快く紹介してくれたんです。

実際にコンタクトを取って予算の話をしたら、とても個人では払いきれないことがわかって......そういう流れでTBSに持ち込んだんです。

――自分で監督をやられる予定はないんですか?

丸山 自分でやれたら楽だなとは思います。映像は行った先で撮ってくるんだけど、編集してくれる人を探すのが面倒なんですよね。『クレイジージャーニー』が終わってからたくさん撮りためたのがあるんですけど......。

とはいえ、僕は物書きでスタートして、これからもそこでやっていきたいから、そこを外してまで映像をやる気持ちはありません。浮かれることなく、どんなときでも文章で表現していきたいですね。

●丸山ゴンザレス(MARUYAMA GONZARES)
1977年生まれ、宮城県出身。国内外の裏社会や危険地帯の取材を続けるジャーナリスト。國學院大學学術資料センター共同研究員

■『世界の混沌カオスを歩く ダークツーリスト』(講談社文庫)

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