『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。
今週は『新型コロナウイルスの真実』を4月に上梓した感染症対策の専門家、岩田健太郎さんにお話を伺いました。
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――感染症対策の専門家で、横浜港に停泊したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の対応で一躍時の人になった岩田先生がまさかの登場です。子供の頃に見て印象に残っている映画はありますか?
岩田 当時、映画館で見たのは、あの頃にはやっていた『宇宙戦艦ヤマト』とか『うる星やつら』とか『ウルトラマン』とか、そういうものを見ていたような気がしますね。島根県は映画館が少なくて、あまり映画を見る環境はなかったですね。
――ではテレビに広げると? ドラマでもバラエティでも。
岩田 そうなると、覚えてるものはけっこうありますね。それこそ『8時だョ!全員集合』(1969~85年)とか。あの頃は誰でも見ていましたよね。
――事前に挙げていただいていた『カサブランカ』(1942年/日本公開は46年)、『用心棒』(1961年)、『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)は大人になってから見た?
岩田 どれも大人になってからですね。『用心棒』と『カサブランカ』は、そもそも上映されたのは僕が生まれる前ですし、『カリオストロの城』も最初に見たのはテレビですね。
――『カリオストロの城』は僕もテレビで見ました!
岩田 シンプルによくできていますよね。何回見ても面白い。宮崎駿監督の映画はだいたい好きですけど、自分は昔の作品のほうが好きなんですよ。躍動感のある、アニメっぽいアニメというのでしょうか。
――『天空の城ラピュタ』(1986年)とかですかね。
岩田 『ラピュタ』も好きです。自分は『紅の豚』(1992年)までが好きで、それ以降はあまり好きじゃなくて。『風立ちぬ』(2013年)は例外的に好きなんですけど、『もののけ姫』(1997年)や『千と千尋の神隠し』(2001年)は全然好きじゃなかった。
映画はエンターテインメントであるべきだと僕は思っていて、芸術性を押し出すより、まずは楽しくて面白いのが基本というスタンスなんです。なので政治的な作品とか、メッセージの強い作品は苦手です。
――なるほど。それを岩田先生から聞くのが面白いです。
岩田 ランキングをつけた3作品はどれもすごく手が込んでいて、「人を楽しませる」というところに全力を尽くして、徹しているのがいいんですよ。
――わかります。僕もその世界の端くれですけど、いつも思っています。くだらないことだからこそ真剣に、といいますか。
岩田 志村けんさんなんか、まさにそうですよね。最近だと、脚本家の古沢良太さんの作品も大好きですね。『リーガル・ハイ』(2012年)とか大好きで、何回も見ています。
――あの作品で堺雅人さん演じる敏腕弁護士、古美門研介(こみかど・けんすけ)って、まさに今の岩田先生の立ち位置じゃないですか? 周囲に迎合せずに自分の信念を貫くところとか。
岩田 どうかなあ(笑)。若干近い部分はあるかもしれませんね。
――「ダイヤモンド・プリンセス号」での告発はまさに忖度(そんたく)なしの振る舞いでした。著書でも岩田先生の哲学が語られていて非常に面白かったです。
★後編は6月10日(水)配信予定です
●岩田健太郎(いわた・けんたろう)
1971年生まれ、島根県出身。神戸大学大学院医学研究科感染症内科教授。セントルークス・ルーズベルト病院などを経て2008年より現職
■『新型コロナウイルスの真実』(ベスト新書)