テレビドラマ化されたデビュー作『悪夢のエレベーター』を筆頭に、「悪夢」シリーズで知られる作家・木下半太。映画監督を志し、大阪で劇団を旗揚げするも、ストリップ劇場で前座をするなど上京するまで売れず......。そんな木下の半生を描いた映画『ロックンロール・ストリップ』が14日(金)より公開される。

木下自身の長編映画監督デビュー作であり、ジャルジャル・後藤淳平の初単独主演映画である今作。そこに花を添えるのが、後藤演じる勇太の妹・朋美役の三戸なつめだ。モデルとしてだけでなく、近年はドラマ・映画化された『賭ケグルイ』でも注目を集めた彼女に、今作の撮影について聞いた。

――作中では人気ロックバンドのボーカルとして、兄・勇太よりも先に芸能の世界にいる朋美ですが、最初に映画の話を聞いたときはどんな印象でしたか?

三戸 すごく芯の強いキャラクターで、オーディションの時点でやってみたいと思いました。あと、勇太に向かってかなり暴言を吐くんですけど、普段は人にオラオラ言ったりしないのでどんな感じになるか楽しみでした。

――確かに勇太に説教しているシーンが多く、かなり気の強い役で、普段の三戸さんからは想像がつきませんでした。

三戸 そうなんですよ、むしろのんびり喋っちゃうクセがあるので。関西に帰った時とか友だちに怒り方とか聞いたり、まくし立てる感じとかは吉本新喜劇を参考にしました。

普段と違う自分だけど、『賭ケグルイ』で黄泉月(よもづき)るなを演じたのとは違って、今回は自分の感情も大事にしながら演じました。黄泉月るなは、いつもの自分の何百倍もネジ飛ばしてたので(笑)。

――自分の感情も大事に、ということは強気なセリフを言う朋美に共感できる部分もあった?

三戸 勇太が「こんなヤツいるの?」ってくらいダメなんですよ。自分は姉がいるんですけど、しっかりしているので信じられないくらい。だから朋美のイラつきは共感できました。ただ、愛情があるから厳しいことが言えるのかなというのも理解できましたね。

あとは「こんなこと続けてて、ほんまに映画監督になれると思ってるん」って言葉は、自分では言えないから言ってみたかった言葉ではあったかもしれないです。

――映画監督になりたいのに、ストリップ劇場の前座という遠回りをしている兄に対するセリフですね。それはご自身が芸能の世界にいるから?

三戸 そうですね。やってる本人は「こんなこと」じゃないんですけど、それしか出来なかったのもあると思うし。その気持ちもわかりつつ、確かに「こんなこと」っちゃ「こんなこと」。心苦しい反面、言ってちょっとすっきりしてたかも。自分だったら優しさのフリして「やれるだけやってみ」って背中を押しちゃいそうで。

――朋美は大金を燃やして事務所にケンカを売るくらい度胸のあるキャラですからね。

三戸 あれは自分でも、「朋美すごい」と思いました。でも、あのシーンでなかなか火がつかなくて戸惑ってたら、スタッフさんがニヤニヤ見てくるんですよ。すごいシリアスな場面なのに笑いをこらえてました(笑)。

――撮影現場はすごく和やかな雰囲気だったんですね。

三戸 そうなんです。監督が明るくて、すごくコミュニケーションとってくれるし。あと自分は出てないんですけど、ダンスシーンがあって、その撮影を見ていたんですよ。夜中のテンションで団結力がすごくて、めっちゃ混ざりたいと思いました。監督がみんなの演技見ながら、めっちゃ笑ってるんですけど(笑)。

――運動音痴で有名な後藤さんのダンスシーンも注目なんですよね?

三戸 ホント見てほしいです! 私も『アメトーーク!』の「運動神経悪い芸人」は見ていたから、めちゃくちゃ練習したんだろうなって、うるっとしちゃいました。

――ほかに印象に残ったシーンはありますか?

三戸 後藤さんが品川(祐)さんに土下座させられるシーンですね。品川さん、普通にめちゃめちゃ怖いんですよ、「こういうヤバイ人いるー!」って思うくらい。本当にめちゃくちゃ悪い人の役が上手で。

朋美の幼少期とか今までの勇太との関係を自分の中で勝手に作り上げていたので、後藤さんとお仕事をご一緒するのは初めてだったんですけど、すごい愛着が湧いていたんです。だから土下座のシーンは、朋美としても自分としてもかなりグサッときました。

――本当にいいメンバーでの撮影だったんですね。最後に今作の見どころをお願いします。

三戸 勇太や朋美が信念をもって夢に向かう姿を見て何か感じてほしいです。あとは後藤さんのダンス以外にもコメディ要素があるので笑って楽しんでください!

■『ロックンロール・ストリップ』
8月14日(金)テアトル新宿ほか全国順次公開
出演:後藤淳平(ジャルジャル)、徳永えり、智順、三戸なつめ、坂口涼太郎、ぎぃ子、町田悠宇、やべきょうすけ、木下ほうか
原作:木下半太「ロックンロール・ストリップ」(小学館文庫刊)
監督・脚本:木下半太
配給:ベストブレーン
【https://www.rocknroll-strip.com/】