８月１７日（月）発売の『週刊プレイボーイ３５号』から９年ぶりに本誌に復帰。週プレと週プレＮＥＷＳで、紙とｗｅｂのダブル連載がスタートする『キン肉マン』。その復帰と新シリーズ開始に先駆けて、２日連続で作者ゆでたまご両先生に今の思いを直撃取材。

前回登場の原作担当・嶋田隆司（しまだ・たかし）先生に続き、今回は作画担当・中井義則（なかい・よしのり）先生に新展開の意気込みを伺った！

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■休載中の新たな学びを生かせるシリーズに

――まず今年前半の話題として新型コロナの影響で約２ヵ月の緊急休載という異例の事態がありました。あの間はどのような過ごし方をされていたんですか？

中井　３密回避でアシスタントを集められない以上、基本的な作業は停止状態だったんですが、それでも相棒（嶋田隆司先生）の原作と、それをもとに僕が作ったネームのストックは３週分ほどありました。だからそのネームをもとに僕ひとりでできるペン入れ作業は毎日欠かさず、少しずつやってました。手がなまってしまうのがいやだったので。

――筆を握らない期間をつくりたくなかった？

中井　そうですね。それをやっておかないと何もしないうちにどんどんヘタになっていくのはわかってるので、野球選手でいうところのキャッチボールみたいな感じですね。あとはせっかくこういう時間をいただいたのでもう一度、絵の勉強を。

――勉強ですか？

中井　絵を描く上で解剖学の勉強をし直したいと思ってて、前からずっと熟読したかった分厚い本があるんですよ。厚みだけで５ｃｍくらいある本なんですけど、それをしっかり読み込んで、右手を動かしながら集中して勉強できたのは、こういう時期なのでよかったとは言えませんが、できた時間を有意義には使えましたね。

――これだけキャリアを積まれてきた先生でも、まだ学ばれて新しい発見が？

中井　いっぱいありますよ！　世の中にはすごい方がたくさんいらっしゃって、その本にしても読めば読むほど、その著者の方と自分の力量の差を思い知らされるようで......。まだまだ足りないなと、この休載中に改めて感じました。

中井先生が休載中に熟読されたという本がこちら。『ソッカの美術解剖学ノート』（ソク・ジョンヒョン著／チャン・ジニ訳、オーム社）

――ではその"勉強"が早速次のシリーズに生かされそうな気配も？

中井　ありますね。これまで散々描いてきた超人でも、新しい見せ方ができるという思いが自分の中に湧いてくれば描き飽きるということがありませんから。そこも楽しみにしてもらえれば、作画担当としてはありがたいですね。

――それに今回の騒動でスタジオ・エッグとしての仕事の進め方も少し変わってこられたとのことですが？

中井　はい。仕事内容・仕事環境の両面を含めてテレワークでできるスタッフとそうでないスタッフがいますので、まずはその仕分けを進めて、やれることはなるべくテレワークでやるという方針に変わりました。それにスタジオ内での作業も密にならないよう配慮したり、新たな対応策は今もいろいろと試行錯誤している最中ですね。

中井先生の仕事場スタジオ・エッグ内には、以前なかったアクリル板の仕切りが新設。対策にも十分気を使いながらの執筆作業が今後も続く

■超えるべきハードルは「完璧超人始祖編」！

――しかし、これまで４０年近く続けてこられた仕事のスタイルを変えていくというのは大変なことなんじゃないですか。やりづらさもおありなのでは？

中井　正直な話をすると原稿を仕上げるまでの時間はやっぱりこれまで以上にかかります。以前ならその場でスタッフにサッと指示してできたものを、今ではその指示を出すための参考資料から僕が探してメールに添付してと、その作業だけでもものすごい手間ですし......でもテレワーク対応のスタッフからすると移動時間の分を実作業に使えるから集中できてありがたいという声もありますので良しあしですね。

一番変わったのは、今のそのやり方だと毎週仕上げる完成原稿２０枚のうち７～８割はこれまでどおりの紙原稿なんですけど、残りの２～３割はデジタル原稿で形がないんです。それがどうも僕には違和感がありまして。仕事が終わったのに手元に完成品がないというのがものすごく不安で。でも、この先はそれにも慣れていかないといけないのかなぁとなんとなく思ってます。

――そんな刷新がさまざまに伴うなかで始まる新展開ですが、中井先生としてはどんなシリーズにしていきたいと思っていらっしゃいますか？

中井　敵のスケールとしては「完璧超人始祖（パーフェクト・オリジン）編」で描いたザ・マンを基準にしてますので、せめてそこを超えるシリーズにはしたいですね。もっと言えばこれからの展開こそが『キン肉マン』の最高傑作シリーズだと読者に言われるくらいまでいかないと、やる意味がないとさえ思ってます。

――おっしゃるようにあのザ・マンや完璧超人始祖たち以上の敵となると、なかなか高いハードルですね。これを実際にデザインして描いていくことになる中井先生の今のお気持ちとしては？

中井　ものすごいプレッシャーですよ（笑）。そんなむちゃな！ってオーダーですけど、でもそれを乗り越えるくらいの新超人がしっかり育ってくれるかどうかが一番のポイントだとも思ってます。

大変なところでもあるんですけど、漫画家として楽しいところでもあるので、そのためにも特に新超人はどんどん描き込んで......例えばもう最初に登場する新超人の漫画原稿は描き始めてるんですけど、これもピッチャーで言うところのブルペン投球みたいな感じで開始前から相当描き込んで、実際の原稿執筆に臨んだんです。それでも初登場シーンがなかなか気に入らなくて。

せっかくできた原稿も自分の判断でボツにして、早速丸ごと１枚描き直しました。僕の中ではそんな感じで、悪戦苦闘の日々がもう始まってます。

――厳しいですね。でもそれくらいの情熱を持って取り組んでいらっしゃる？

中井　仕事ですからね。でもうまくいけばすべて終わった後に見直して「ああ、よく頑張って描いたやん！」って楽しい思いができますから。ひたすら日々研鑽（けんさん）なんですけど、最後には振り返ってそう思えるようなシリーズにしていきたいですね。

●中井義則（なかい・よしのり）　
１９６１年１月１１日生まれ、大阪府大阪市出身。血液型＝Ｂ型。"ゆでたまご"の作画部門、漫画原稿作製、および版権イラスト執筆を担当。スタジオ・エッグ代表

８月１７日、『キン肉マン』連載が『週プレ』に復帰！！

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