『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。
今回は10月2日公開予定の映画『小さなバイキング ビッケ』で主人公の吹き替えを担当する女優の伊藤沙莉(さいり)さんが登場。
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――取材前に少しお話ししたところ、伊藤さんと地元がめちゃくちゃ近いことが判明しました(笑)。
伊藤 超ジモティなんですよね!(笑)
――地元の話をふたりでしすぎて周りがあまりにもポカンとしてるので、このへんで本題に移らせていただきます(笑)。子供の頃の映画体験を聞いてもいいですか?
伊藤 基本的に洋画を見ることが多かったです。私の幼なじみのおうちが歯医者さんで、「これはTSUTAYAですね」ってくらいDVDをたくさん持っていたんです。
そのなかで私がたぶん初めて見たのが『マスク』(日本公開1995年)。そのときに感じたワクワクは今もよく覚えています。その後に見た『ふたりの男とひとりの女』(日本公開2001年)という作品も大好きです。
――どちらもジム・キャリーの主演作ですね。
伊藤 『ふたりの男とひとりの女』は解離性同一性障害を発症して二重人格になった主人公が、ある女性のことを好きになって、ふたつの人格で取り合ってしまうというお話なのですが、ジム・キャリーの演技が本当にすごくて。
表情や立ち方が変わるだけで今どっちの人格なのかがわかるんです。それが本当にしびれたし、カッコいいなって。いまだにジム・キャリーは一番好きな俳優です。
もちろん、『トゥルーマン・ショー』(1998年)も好きですよ。この作品の主人公もそうなのですが、彼は一生懸命生きているだけなのにとっても面白いキャラクターを演じるのがうまいですよね。「滑稽なモノが繰り返されることによって、だんだん悲しくなってくる」というのは、ジム・キャリーに初めて食らわされた感情でした。
――女優になろうと思った作品はなんですか?
伊藤 お芝居を始めた後に「こういう作品やりたい!」と思ったのが、『手紙』(2006年)です。初めておえつというか、涙が枯れるんじゃないかってくらい泣きました。涙が止まらないというのは初めての感覚でしたね。自分にぴったりフィットする映画を見るのって、どこかツボを押されたような感じでとても気持ちよくて。
――では、出演して人生が変わったと思う作品は?
伊藤 この仕事を続けようと思うきっかけになったのは『悪の教典』(2012年)です。それまでにも映画には何作か携わらせていただきましたが、地元の映画館で上映する作品に出たのは初めてでした。
――『悪の教典』に出たのは何歳くらいでした?
伊藤 高校生の頃にオーディションに合格して出たのですが、劇場のおっきいスクリーンにエンドロールで自分の名前が流れたことにすごく感動しました。当時18歳で、そろそろ進路を決めないといけない時期だったので、「これはやめたくないなあ」って。まさに進路希望調査の紙に何を書こうか悩んでいる時期でした。
――地元の映画館で自分の名前がスクリーンに流れているのを見たら、「こっちだ!」ってなりますよね。
伊藤 「こっちかな」って思いました。やっぱりこのお仕事はやめられないなって。
★後編⇒角田陽一郎×伊藤沙莉(女優)「あえぎ声を出すためにボイストレーニングに通いました(笑)」
●伊藤沙莉(いとう・さいり)
1994年生まれ、千葉県出身。A型。生まれ持った芝居のセンスでシリアスな役柄もコメディもこなす個性派女優。第57回(2019年度)ギャラクシー賞個人賞を受賞
■『小さなバイキング ビッケ』10月2日(金)全国ロードショー公開予定
ヘア&メイク/AIKO スタイリング/吉田あかね
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