『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。
前回に引き続き、『小さなバイキング ビッケ』で主人公の吹き替えを担当する女優の伊藤沙莉(さいり)さんが登場!
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――最近見て面白かった作品は?
伊藤 時代遅れと思われるかもしれないですが、『ラ・ラ・ランド』(2017年)を最近見て、とても面白かったです。
――僕も大好きです。
伊藤 私、本当に「泣ける映画」っていうあおり文句が嫌いなんです。それで泣けなかったら自分が鬼みたいに思っちゃうじゃないですか。
――自分の感性が足りないんじゃないかって(笑)。
伊藤 そうそう(笑)。でも、『ラ・ラ・ランド』は立てないくらい泣いちゃいましたね。特に終わり方がエグかった。普遍的だし、あれってそこらじゅうに転がってる話じゃないですか。それをあえて映画にする勇気がすごいし、私含め、心に刺さる人が多すぎると思いました。
――女優として見ました? それとも、ひとりの女性として?
伊藤 それは......女性としてですね。恥ずかしい(笑)。もちろん、同業者として共感もしますけど。でも、なんだか恋愛相談に乗っているような感覚でした。
――アニメ映画『小さなバイキング ビッケ』で主人公の吹き替えを担当されますが、アニメは見ますか?
伊藤 見ます! 特に『クレヨンしんちゃん』が大好きです。テレビ版もですが、映画がとにかく好きで。小さい頃からずっと見ていますし、今でも空き時間に見ています。大人になってから見ても涙を流して笑えるし、真剣に号泣できる。そういう作品ってなかなかない。
――沙莉さんは普段カメラの前で女優として演技をされていますが、声のお仕事は感覚が違いますか?
伊藤 全然違いますね。お芝居のアプローチは引き算で、いらないものを排除していくスタイルなのですが、声のお仕事は足し算。「くさい芝居になっちゃった」みたいなときでも、画(え)に当てはめるとちょうどよくなる。その加減が読めないからこそ、難しいし、面白いです。
――沙莉さんは特徴的な声でいらっしゃいますけど、ご自身ではどうとらえていますか?
伊藤 コンプレックスと大事なモノというのが交互に入れ替わってきた感じですね。例えば、今回のビッケ役だと、「ひゃっほーう!」みたいなセリフの高い音域が出なくて......(苦笑)。
逆に『獣道』(2017年)という作品で初めてベッドシーンをやらせてもらったときには、あえぎ声を出すためにボイストレーニングに通いました(笑)。
――先生の前でやるんですか?(笑)
伊藤 仲良しの歌手の方がボイストレーナーもやっているので、「異例だと思うんだけど......」って頼みました(笑)。
――(笑)。最後に、映画『小さなバイキング ビッケ』の見どころを。
伊藤 自分の夢やなりたいモノに疑うことなく突き進んでいく男の子のお話です。そういう気持ちって絶対に誰しも子供の頃に持っているものだと思うけど、そんな気持ちはまるで最初からなかったかのような顔で生きている大人が多いと思うんです。
そういう人にこそ見てほしいです。もちろん子供が見ても、仲間や夢など、大切なことをいろいろ感じられると思います。ぜひ幅広い世代の方々に見ていただきたいです。
●伊藤沙莉(いとう・さいり)
1994年生まれ、千葉県出身。A型。生まれ持った芝居のセンスでシリアスもコメディもこなす個性派女優。第57回(2019年度)ギャラクシー賞個人賞を受賞
■『小さなバイキング ビッケ』10月2日(金)全国ロードショー公開予定
ヘア&メイク/AIKO スタイリング/吉田あかね
ワンピース(furuta 6万4000円+税) イヤリング(STRI 1万4500円+税)