ストップしていた劇場作品も続々と公開され、この秋の映画は大豊作! そんなキャストの中から、さらなる活躍が期待される10代の実力派女優たちを撮り下ろし。映画の撮影秘話や女優への思い、プライベートの話までを聞いた。

今回は、全国順次公開中の映画『破壊の日』で映画初出演を果たした長澤樹さん(15)。映画『泣き虫しょったんの奇跡』などで知られる豊田利晃監督が、クラウドファンディングで資金を集め制作した『破壊の日』は、主人公が「物の怪(け)に取り憑つかれた世界」を救うため即身仏を目指すという、かなりの"異色作"となっている。

そんな、作品の中で主人公の妹役を演じ、存在感を放っていた美少女が長澤樹ちゃんだ。

――映画『破壊の日』、ストーリーもビジュアルもとても衝撃的な映画でした。どういった経緯で出演されたんですか?

長澤 私も、最初は分からなかったのですが、あとから豊田監督に聞いたら、当時すでに撮影していた私も出演している成田洋一監督の映画『光を追いかけて』の編集版(編集作業中)を偶然ご覧になり、お声をかけていただきました。

――『光を追いかけて』での演技がよっぽど光ったんですね! 『破壊の日』は、エネルギーにあふれた映像に大音量の音楽、そして全編通して不穏な雰囲気が漂うかなり独特な作品ですが、台本を読んだ時の感想は?

長澤 台本をたくさん読んだことがあるわけではないですが、なんとなく普通じゃないなっていうことは感じました(笑)。

今まで見たことないっていうか、どうなっちゃうんだろうっていう。すごい不安も感じたのですが、わくわくする気持ちも大きかったです。

――ちなみに、ストーリーは最初から理解できましたか?

長澤 全然わからなかったです(笑)。「あれ、なにこれ!」みたいな。でも、分からないなりに何度も台本読み込んでいったら、ひとことのセリフがすごく重いなって気づいて。特に役柄的にも私自身のセリフはそんなに数が多くないので、余計に気持ちを込めるようにしました。

――映画自体も普通ではないですが、渋川清彦さん、マヒトゥ・ザ・ピーポーさん、イッセー尾形さん、窪塚洋介さん、松田龍平さんなど出演されている役者さんも一癖二癖ある方たちばかりです。現場の雰囲気はどのような感じでしたか?

長澤 もちろん共演者のみなさんには、最初はとても私からは話しかけられなかったです。なんて接してよいのかわからず......。

でも、途中から渋川さんや、マヒトさんが話しかけてくださって。私が中学生なので「部活何やってるの?」とか。本当にたわいない話なんですけど、そこからはすごく気が楽になっていろいろとお話させていただきました。

――こんな可愛い少女が現場にいたらみなさん話しかけたくなっちゃうでしょうね! 完成した映画を観た感想はいかがでしたか?

長澤 台本を読んだ時に想像していた作品と全然違くてびっくりしました(笑)。自分がなんとなく想像しているゾーンみたいのがあったのですが、それと全然違かったです。こうやって映ってたんだとか、いろいろと発見がありました。

あと、豊田監督の撮られた映画『泣き虫しょったんの奇跡』を観たことがあったのですが、その作品は、光がすごくきれいで美しい映像の作品だったので、『破壊の日』も最終的にはそういう演出になるのかなって思っていたのですが、全然違いました(笑)。

――全体の雰囲気は、もはや光と真逆の暗い感じですもんね。作品を観させていただいたのですが、冒頭からのあまりの不穏さにホラー映画かと勘違いするほどでした(笑)。

長澤 そうですよね(笑)。でも、完成したこの作品を試写会で初めて見た時、泣いたんですよ、私。感動作というわけでもないのに、なぜか涙が止まらなくて。うれしいとか、悲しいとか単純な感情ではないと思うんです。今でもなぜ泣いたのかわからなくて、その感情を見つけたいと思っています。

――たしかにコロナ禍という特殊な時期での撮影もあって、見ていると役者さんたちの演じることへの執念のようなものを感じました。そんな、本作をどういう人に観ていただきたいですか?

長澤 もちろん、多くの人に観ていただきたいっていうのはあるんですけど、私は、幸せな人にこそ観て欲しいなって思います。

――それはなぜでしょうか?

長澤 自分で言うのもあれですけど、私は今、幸せで恵まれてるなって感じています。でも、生きていると何が起こるかわからない。日常を何不自由なく送っている人がこの作品を観たら、そんな風に感じ方が変わるんじゃないかなって。

――たしかに、いつ何が起こるかわからないですもんね。そんな長澤さんはどうして女優になりたいと思ったんですか?

長澤 女優になろうと思った一番最初のきっかけは、小学生(3~4年)の時にオードリー・ヘプバーンさんという女優さんを知ったことです。おばあちゃん家に写真が飾ってあって、「このきれいな人は誰だろう?」ってずっと思っていたのですが、ある時お母さんにオードリー・ヘプバーンさんだと教えてもらいました。

すごくきれいな人なのでモデルさんだと思ってたんですけど、女優さんだということを知って、私もこういう人になりたいなって思ったのが始まりです。

――小学生時代にしてオードリー・ヘプバーンさんに憧れるなんて渋いですね!

長澤 そうかもしれません。同級生でも知ってる子は全然いないですね(笑)。

――作品はけっこう観られたんですか?

長澤 たくさんというわけではないのですが、お母さんに頼んで買ってもらったりして少しずつ観ています。一番最初に観たのは、やっぱり王道から入って『ローマの休日』でした。

最近だと、『ティファニーで朝食を』を観たんですけど、やっぱりすごいなって。もちろん可愛いとか美しいっていうのもありますけど、なによりも演技してるように見えないんです。役に合わせてるとかじゃなくて、自然体な感じで。きっとオードリー・ヘプバーンがそのまま映画になってるんだろうなって思いました。他の作品もいっぱい観たいので、今親にねだってます(笑)。

――そんな大女優のオードリー・ヘプバーンに憧れているということは、長澤さんの将来はやっぱり女優?

長澤 一番は女優としてやっていきたいなと思っています。『破壊の日』を撮影しても思ったのですが、特に映画に出たいです。

ドラマと映画って何が違うんだろうって考えると難しいんですけど、映画の撮影は短い時間にギュッと凝縮された濃い現場だなって思いました。そんな現場でみんなで作っていくのがすごく楽しくて。だから映画女優になりたいなって思います。

――では、何かやってみたい役はありますか?

長澤 たくさんあります。人じゃない役とかやってみたいです。おとなしい役とかっていう意味じゃなくて、極端に言ったらロボットとか、そっち系ですかね?(笑)

――どういうことですか? 

長澤 アンドロイドとか? 人じゃない役は本当にやってみたいです。

――正統派美少女かと思っていたのですが、もしかして少し変わってます?

長澤 (笑)。まぁでも、人だったら極端な役がやりたいです。すごいお金持ちの役とか、すごい貧乏の役とか。

あっ、あとは、死にかけの役とかやってみたいです。普通に生きていたら死ぬことって、死ぬ時以外は経験しないじゃないですか? ちょっとやってみたいなっていう好奇心はあります(笑)。

――好奇心が強すぎます! では、最後に今後の目標を教えてください!

長澤 大きな目標はオードリー・ヘプバーンさんみたいに、世界中の人に愛される女優さんになりたいですね。近々の目標はたくさんの人に会いたいです。監督とか共演者とかいろんな方と出会っていっぱいお話をしたいですね。

(スタイリング/上田リサ(HITOME) ヘア&メイク/竹下フミ(竹下本舗) 衣装協力/Plantation、Ne-net)

長澤 樹(ながさわ・いつき)
2005年10月24日生まれ、静岡県出身。『破壊の日』で映画初出演。2021年に公開予定の映画『光を追いかけて』ではヒロインを演じる。ドラマ「ノースライト」(NHK)への出演も決まっている。その他、最新情報は事務所公式HPをチェック。【https://tencarat.co.jp/

■『破壊の日』 
7年前、田舎町の炭鉱の奥深くで見つかった怪物。その怪物は何なのかは不明のまま不穏な気配を残して時が過ぎる。7年後、村では疫病の噂が広がり、疑心暗鬼の中、心を病む者が増えていく。そんな中、修験道者の若者、賢一は生きたままミイラになりこの世を救うという究極の修行、即身仏になろうと行方不明になる......。そして、「物の怪に取り憑かれた世界を祓う」と賢一は目を覚ます。企画・監督・脚本:豊田利晃 出演:渋川清彦/マヒトゥ・ザ・ピーポー/イッセー尾形/窪塚洋介/松田龍平など。全国順次ロードショー中。上映に関する情報は『IMAGINATION』H.Pよりご確認ください。

■『破壊の日』オリジナルサウンドトラック 
コロナ禍中に撮影され、現在公開中の大ヒット映画『破壊の日』。サウンドトラックを希望する多くの声に応え10月31日に発売。GEZANが映画のために書き下ろし、2020年の夏を歌った『壊日』に加え、照井利幸、切腹ピストルズも新曲を書き下ろし。Mars89はサウンドトラック全体を、最新型のテクノで打ち鳴らす。また、このCDのためにGEZANは『証明』を新たにリミックス。コロナ禍が続く日々の中で鳴り響く、怒りと祈りの音楽版『破壊の日』。

■『週刊プレイボーイ39・40号』のカラー特集「秋のシネマ美少女」より