『仮面ライダーゼロワン』の記念すべき第1話に敵役として登場し、強烈な印象と感動を残して去った悲運のヒューマギア・腹筋崩壊太郎(ふっきんほうかいたろう)が、12月7日(月)発売『週刊プレイボーイ51号』のグラビアで、もう一度僕たちの前に帰ってくる。
1回限りのゲスト出演ながら視聴者に強烈なインパクトを与え、このとき生まれた「腹筋崩壊太郎ロス」なる言葉はその後しばらくの間、放送時間になると毎週のようにSNS上に飛び交った。Twitterトレンド1位を獲得したゼロワンの「伝説」。その舞台裏。
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■「これだけかい!」腹筋崩壊太郎誕生秘話
――腹筋崩壊太郎としてのグラビア撮影、いかがでしたか?
なかやま(以下、な) いや~、普段慣れているバラエティの撮影とは全然違って、「カッコよく撮る」という感じで、不思議な空気感でしたね~。
――ご自身としてはどのあたりがイケてそうでした?
な まだ写真を見ていないのでなんとも言えない部分もありますが、僕が一番気になるのは筋肉をしっかり見せられたかという点ですかね。
――やはりそこですか。
な ダンベルを使ってアームカールをやったシーン。あれは完全に普段やっている動きだったので、やりやすかったです。
――あの場面は腹筋崩壊太郎というより完全になかやまきんに君のグラビアでした。それにしても、ゲスト出演ながら視聴者に愛されすぎて、劇場版で再登場決定。番組の収録当時、こんなことになるとは......?
な まったく思っていませんでした。実はあの第1話の放送の日、フィジーク(体全体のバランスの美しさを競い合う競技)の全日本大会に出場していたんですよ。ちょうど放送時間が予選にかかっていて、楽しみにしていたけどリアルタイムでは見られなくて。
で、その予選中に知り合いからやたらとLINEが来る。「1位だぞ!」って。こっちはこっちで大会に集中してるから、Twitter上で何が起こっているかなんて全然知らない。「予選1位なんてあるわけないだろ、フィジークの全日本大会ってめちゃくちゃレベル高いんだぞ!」とか、本当にそんな感じでした。
――人を笑わせることに喜びを覚えるお笑い芸人型ヒューマギアが、悪のプログラムを強制インストールされ最後は仮面ライダーゼロワンに破壊される。「ううっ......できません! 私の仕事は人を笑わせることだから......!」のせりふと、洗脳にあらがう姿はお茶の間の涙を誘い、「涙腺崩壊」する視聴者が続出しました。
な 仮面ライダーというカッコいいヒーローのイメージが強い作品に、いかにもマンガみたいな遊び心のある名前の変なキャラクターが出てきた。「腹筋崩壊太郎」のネーミングが、まずファンの方々に刺さった理由じゃないかなと思います。
――現場では、制作サイドから特別な演技指導などはあったのですか?
な 僕は俳優さんでもないですから、できる限りやったという感じでした。乗っ取られているときの苦しい感じ、仮面ライダーとの戦いで倒されている場面は、真剣にというか、普段の芸人の自分とは違う感じを出せれば、という話はしました。
あと、「腹筋パワー!」という決めぜりふは、最初はなかったんですよ。本番直前のリハーサルのときに監督さんと話して、「何か決めぜりふお願いできませんかね」「じゃあ『腹筋パワー!』で」って、割とその場の思いつきで決まりました。
――ほかに、収録にまつわる印象的なお話はありますか?
な あの誰もが知る仮面ライダーという作品に出演する、しかも第1話の敵役ということで、台本をいただいたときからかなり緊張していたんですよ。事前に衣装合わせもあるという話で、「うわ、そのまま行ってささっと撮って終わる、いつも出ているバラエティ番組と全然違う!」って。
で、呼び出された広い部屋には監督さん、助監督さん、タイムキーパーさん、10人近いスタッフさんたちがずらりといて、僕だけを待っていて、ますます緊張してきて。それで「早速着替えてください」と言われたので、案内されるがまま別の衣装部屋に行ったんです。
そうしたら、広い床の中央にぽつんと黒の短パンが置いてありました。「これだけかい!」と。仮面ライダーの悪役といったら、カッコいい鎧(よろい)とかを着るのかと思いきやですよ。
で、ぱっと短パンをはいてまた監督さんたちの部屋に戻ったら、「うーん、いつもと変わらないですね」って。「それはそうだろ!」と。僕は普段、デニムの短パンをはいてるわけですから。
――違うのは生地だけですね。
な ほんとそのとおりですよ。なのに監督さんたちは予想外だったらしく、「まだ当日まで時間あるので、もうちょっと練ってカッコいい感じに仕上げるので楽しみにしていてください」と。正直この衣装合わせ必要だったのか?と思いました(笑)。
そして本番当日行ってみると、あの細いサスペンダー、あれが一個足されていました。「いやこれだけかい!」と。
――でもあのサスペンダーは正解でしたよね(笑)。
な 確かに、キャラのかわいらしさが出ましたね。
――あらためて、なかやまさんにとって腹筋崩壊太郎というのはどういう存在ですか?
な 本当に貴重な経験をさせていただけたという感じです。普段の仕事とは現場の雰囲気から何から違いますから。
待ち時間があって、エキストラの方もスタッフさんも大勢いて、リハーサルをやって......アフレコも初めての体験でした。「ドラマや映画ってこうやって撮影していくんだ」って感動しきりでした。しかも、小さい頃から知っている仮面ライダーの現場ですから。
――最後に、劇場版における腹筋崩壊太郎の見どころを教えてください。
な いつもの「腹筋パワー!」の必殺技が炸裂しているのでそこはもちろんですが、あとはこの劇場版のためにかなり体を仕上げてきたので、鍛え上げた筋肉にもぜひ注目してください。腹筋パワ―――――――!!
(スーパーヒーロープロジェクト (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映)
●なかやまきんに君
1978年生まれ、福岡県出身。吉本興業所属のお笑い芸人。2000年にピン芸人としてデビュー。2003年「第24回ABCお笑い新人グランプリ」で審査員特別賞、『R-1ぐらんぷり2006』決勝進出など、元祖筋肉芸人として活躍。2006年にアメリカ・ロサンゼルスへ"筋肉留学"し、2011年にサンタモニカカレッジ運動生理学部卒業。2019年「第27回東京オープンボディビル選手権大会」ミスター75kg級で準優勝を果たすなど、ボディビルダーとしても活躍中。現在、YouTubeチャンネル『ザ・きんにくTV』の登録者数は89万人を突破し、人気を集めている