『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。
12月25日公開予定の『映画 えんとつ町のプペル』で製作総指揮、脚本、原作を務める西野亮廣(にしの・あきひろ)さんにお話を伺いました。
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――子供の頃に好きだった映画は?
西野 『風の谷のナウシカ』(1984年)とかかもしれないですね。
――この連載では出るの初めてです。
西野 えー!? みんな『ナウシカ』じゃないんですか?(笑)
――(笑)。見たのはいつ頃ですか?
西野 小学校低学年ですね。映画館ではなく、『金曜ロードショー』で見ました。とにかく衝撃で、それがそもそも自分が絵本を書いたきっかけでもあるんですけど。
――それは初耳です。
西野 1作目の絵本を書いたときに「絵本ってもっと丸いものがよくて、キャラクターがもっとふわふわしていて、線の数も少ないほうがいい」ってけっこう言われたんですよ。「子供はそういうもの好きだから」って。でも、ホントかな?って思ったんですよ。
――ナウシカは丸くないですもんね。
西野 全然丸くないし、書き込み量も半端ないじゃないですか。なのに、絵本の時間になると急にお父さんお母さんが丸いものを渡してきて、「これはなんなんだ」って。そこがむちゃくちゃ違和感でした。
――では芸人として人気絶頂の頃に見て心が動いた作品は?
西野 そのときはいろんなものがうらやましく見えていたんですよね。けっこう、いろいろと折り合いをつけてテレビに出ているものですから。
例えば、三谷幸喜さんの作品はひととおり面白かったですし、あとは三谷さんがビリー・ワイルダーがお好きっていう話を伺って、それで見た『お熱いのがお好き』(1959年)も面白かった。
全部詰まってましたね、エンターテインメントが。コメディもお色気もドキドキハラハラも笑いも。そのへんからやっぱり、そういうものを作りたいって思うようになりました。
だって、ビリー・ワイルダーはそこまで折り合いをつけてないじゃないですか。好きな脚本書いて、お金と予算の兼ね合いはあるかもしれませんが、番宣で来られた俳優さんを紹介するコーナーをするとかはない。
――最後にアルバムの告知したり。
西野 そうそうそう(笑)。
――『はねるのトびら』ではMCで、そういう役回りでしたもんね。
西野 そうなんですよ。どこでこうなったんだろうって。やりたいことやりたくて売れたはずなのに、売れたのによけいにやりたいことがやれなくなってるなあって。
――悔しいと思った作品は?
西野 面白いものはいっぱいありましたけど、映像だと『パイレーツ・オブ・カリビアン』(2003年)ですね。あのスケールを見たときに「これ、システムから全部作り変えないと作れないやつだ」って。
おもろい脚本を書ければいいとかそういうことじゃなくて、産業から変えないとあそこにはたどり着かないっていう、圧倒的なものを感じたんです。で、ここに挑まない人生でいいのかって。
自分は「ディズニーを超える」って言ったときに日本中から笑われたんですが、シンプルに悔しかったんですよ。笑われたのも悔しかったんですけど、何よりみんなが折り合いつけている感じが。日本人全員が折り合いをつけている、この敗戦国感なんなんだろうって。
★後編⇒角田陽一郎×西野亮廣(お笑い芸人・絵本作家)「『プペル』はコロナで涙した人たちへのエールでしかない」
●西野亮廣(にしの・あきひろ)
1980年生まれ、兵庫県出身。1999年、梶原雄太と共にお笑いコンビ「キングコング」を結成。にしのあきひろ名義で絵本作家としても活動
■『映画 えんとつ町のプペル』12月25日(金)より全国公開予定