本日12月18日(金)から全国の劇場で同時上映される『劇場短編 仮面ライダーセイバー』と『劇場版 仮面ライダーゼロワン』。映画公開を記念して、『セイバー』の高橋一浩氏と『ゼロワン』の大森敬仁氏ふたりによる"チーフプロデューサー対談"が実現!
歴代主人公たちのキャスティングの裏話や今作の見どころなどを語り尽くしてもらったぞ!
■佐藤健や菅田将暉を見いだした慧眼
――若手俳優の登竜門としても注目を集める仮面ライダーシリーズ。『ゼロワン』では高橋文哉さんが、『セイバー』では内藤秀一郎さんが主演を務めていらっしゃいます。まずは、おふたりを選んだ決め手を教えてください。
大森 『ゼロワン』の主人公・飛電或人(ひでん・あると)役は、突然社長に就任することになる、売れないお笑い芸人という設定。だから、芸人らしさを表現できる人がよかったんですよね。
或人のオーディションではギャグをやってもらっていたんですけど、それが一番良かったのが高橋くん。こちらで用意したギャグなので、僕ら審査する側はクスリともしないんですけど(笑)。それでも毎回貪欲に工夫して取り組んでいる姿が好印象で、或人のキャラと合致したんです。
高橋 『セイバー』の主人公の神山飛羽真(かみやま・とうま)役は、前々作の『ジオウ』、前作の『ゼロワン』と10代の主演が続いていて、『セイバー』は小説家という設定もあったので、20歳以上の落ち着いた雰囲気のある俳優さんを探していました。そこで文系のにおいがして繊細な雰囲気があるということで内藤くんを選んだんです。
――実際にオーディションでお会いするのは何回くらいなんでしょうか?
大森 4、5回ですね。
高橋 ただイメージに合う人が見つからない場合は、延々続いたりします。自分がAP(アシスタントプロデューサー)時代に関わった作品ですが、『W(ダブル)』のフィリップ役(主演のうちのひとり)は最後まで本当に難航しましたね。
そのときに事務所の方が途中でふらっと連れてきたのが、当時新人だった菅田将暉(すだ・まさき)くんで、最終面接に入れたら「この子だな」って決まったんです。
大森 チーフのときよりもAP時代のオーディションのほうが思い出深いですよね。
高橋 そうそう。オーディション仕切るのはAPだからね。
大森 僕がAPだった『電王』のオーディションも、主演の野上良太郎役が決まるまでかなりオーディションの回数重ねましたよ。イマジンという怪人に憑依(ひょうい)されて、その人格も演じる必要があるので、要するに何役も演じ分けなきゃいけなかったんで。
そこに現れたのが佐藤健(たける)くんで、演技力の高さもあって一瞬で決まりましたね。健くんは撮影現場でもやっぱり違って、1年間終わったときには、現場がみんな彼についていく座長感がありました。『ゼロワン』の高橋くんもリーダー的な性格の持ち主でしたね。
高橋 内藤くんもそういう座長を目指していて、『ゼロワン』とのバトンタッチ企画以降、劇場版の撮影で高橋くんが来ていたら見に行ったり、相談したりしているんですよ。年齢は内藤くんのほうが上なんですけど、高橋くんが年下でもしっかりしているので、内藤くんにとっては1年先輩という以上に大きく見えているんじゃないかな。
■主演やヒロインに演技力は関係ない?
――ちなみに、俳優に合わせてその役の性格や設定を変えるという逆パターンは?
大森 ありますね。僕が最初にチーフを担当した『ドライブ』の泊進ノ介(とまり・しんのすけ)役がまさにそう。最初は少し斜(しゃ)に構えたキャラの設定にしていたんですけど、竹内涼真くんがド直球の熱血漢みたいな好青年だったんで、彼に合わせる形で変えていきましたよ。
高橋 自分がチーフをやった『ゴースト』で、磯村勇斗(いそむら・はやと)くんが演じたアラン役は、物語中盤から登場して、仲間ライダーになる予定だったんですよ。でも磯村くんが独特な雰囲気を持っていてよかったんで、謎キャラとして序盤から出てもらうことにしましたね。
――俳優ごとの魅力を生かしていくんですね! 主演に抜擢(ばってき)する俳優には一貫して共通する要素がありそうですね。
高橋 子供が見るものなので笑顔は大事。主役はやっぱり素直な笑顔、安心できる笑顔ができるかどうかはいつも意識しています。『フォーゼ』の福士蒼汰(ふくし・そうた)くんも、笑顔が決め手になりましたね。
彼の如月弦太朗(きさらぎ・げんたろう)という役は短ランにリーゼントといういでたちで不良に見えるので、特に怖くなりすぎないように屈託のない笑顔になる俳優を探していたんです。
人によっては含みのある笑顔とかクールな笑顔になる人もいて、『フォーゼ』では吉沢亮くんがもうひとりのライダーを演じたんですけど、そういう俳優は主演ではないサブライダーだったら似合うこともあるんです。
大森 あとは、「演技力は関係ない」というと語弊がありますけど、それよりもやっぱり醸し出すオーラみたいなものが大事ですよね。『電王』のように最初から演技力を求めていたのは異例なので。
高橋 若手が集まるオーディションだから、そもそも最初から芝居ができる人が来るほうが少ないもんね。
――ヒロインの選考基準も気になります。
大森 僕の場合はどちらかというとヒロインのほうが笑顔を重視しますね。ヒロインは戦いに巻き込まれて悩んだり、悲しいドラマを背負ったりするので、朝の番組として暗くなりすぎないためにも、悩んでいる姿でもかわいく見えるコを選ぶことが多い。
高橋 確かにね。そういえば『セイバー』のヒロインは特に笑顔を大事にして選んだな。周りが眉間に皺を寄せて戦うので、1年間笑顔でいてほしいと思って川津明日香さんにお願いしました。あと子供番組は親御さんと一緒に見ることもあるので、お母さん目線で安心して見られるよう清潔感も意識してます。
――ヒロインが過剰に色っぽすぎると、お母さんたちが怪訝(けげん)な顔しそうですしね(笑)。
■平成以降のライダーがリアル志向のワケ
――大人目線でいうと、特に平成以降のシリーズはドラマ面で高い評価を受けていますが、制作側も大人の視聴者は意識されてますか?
大森 そうですね。平成ライダーは、昭和ライダーのカウンターとしてリアルな表現を追求した『クウガ』(初代平成ライダー)の影響が大きいので。また、スーパー戦隊シリーズが直球できちんと子供向けに作ってくれているからこそ、ライダーはシリアスな話にも挑戦できるし、それが大人目線でも楽しめる要素になっているんだと思います。
――仮面ライダーは大人ファンの熱量もすごいですからね。そんな仮面ライダーシリーズの劇場版最新作の公開が迫っています。『劇場版 ゼロワン』は、本来は今夏公開予定のものが冬に延期になりましたが、その影響は?
大森 夏上映だった場合は『ゼロワン』のテレビシリーズが放送中のタイミングだったんですけど、放送終了から3ヵ月以上たっての上映になったので、登場人物のキャラクターや人物配置をテレビ最終回後の設定にシフトしました。なので、結果的に『ゼロワン』という作品としては、きれいな形でフィナーレを迎えられるようになりましたね。
高橋 コロナの影響で、今回の冬の映画がどういう形になるか、けっこう直前まで決まらなかったよね。
大森 わからなかったです。
高橋 結果的には『ゼロワン』と『セイバー』それぞれ独立した話を同時上映ということが決まって、『セイバー』チームは急ピッチでイイもの作ろうと必死でしたよ。
――そんな両作の見どころを教えてください!
高橋 今回の『セイバー』は劇場短編(約20分)という形式なので、骨太なお話は『ゼロワン』にお任せして(笑)、疲れているときでも何も考えずにスカッと楽しめる、清涼飲料水のような作品になってます。親子でいらっしゃっても、きっとお子さんが騒ぎだす前に終わります(笑)。
大森 『ゼロワン』はお子さんが騒ぎだしてからの上映なんですけど(笑)、それでも大人も子供もすぐに引き込まれるストーリーになっていると思います。というのも、上映時間(約80分)とリアルタイムで事件が進行するタイムサスペンスが見どころなので、たとえテレビシリーズを見ていない方でも緊迫感を楽しんでいただけるはず。
キャストもスタッフもテレビ最終回後の撮影だったので、これが最後だと意気込んで参加してくれましたし、敵ライダーを演じてくれた伊藤英明さんは、もともとかなりの仮面ライダーファンなので気合い十分。『ゼロワン』の集大成として、いい映画になっていますね。
――今冬の映画界は2大ライダーが熱くしてくれますね!
●大森敬仁(おおもり・たかひと)
1980年生まれ。『仮面ライダー響鬼』のプロデューサー補として初めて仮面ライダーシリーズに携わり、その後も数多くの作品に参加。令和最初の作品『仮面ライダーゼロワン』ではチーフプロデューサーを担当した
●高橋一浩(たかはし・かずひろ)
1973年生まれ。『仮面ライダーW(ダブル)』などの平成仮面ライダーシリーズにプロデューサーとして参加し、『仮面ライダーゴースト』と現在放送中の『仮面ライダーセイバー』ではチーフプロデューサーを務める