『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。
前回に引き続き、『映画 えんとつ町のプペル』で製作総指揮、脚本、原作を務める西野亮廣(にしの・あきひろ)さんにお話を伺いました。
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――『プペル』がもうすぐ公開されますが、今どんな気分ですか?
西野 怖くて仕方がないです。もちろん、コロナっていうのもありますけど、でもそれは前からわかっていたことなので言い訳にならないと思っていて。そこに合わせて、あの手この手を準備しましたし。なので、そっちよりは、「気がついたら、いろんな人の期待を背負っていた」っていうことのほうが怖いですね。
僕は、何年か前とかは本当に「嫌われ芸人の代表格」みたいな感じで、日本中から叩かれていたんですけど、そのときはけっこう楽だったんです。人に好かれることも期待されることもないですし。
でも、どこかで潮目が変わって、「挑戦する人」のアイコンみたいになってる。いろんなところで苦しい思いや挑戦されてる方の支えみたいになって。そういうものを背負ってるってことを、公開が近づくほどひしひしと感じています。
――なるほど。
西野 例えば、いろんな方が映画のポスターをプリントアウトしてお店に貼ったりとか、ボランティアでやってくださっているんです。そういう動きをずっと見てるから、今回の勝負で僕が失敗してしまうと、失望してしまう人がけっこう発生してしまうなって。自分が傷つくだけじゃないのは、初めての感じですね。
むちゃくちゃ怖いですけど、同時に「生きてる」って感じもします。やれることは全部やろうと思っていて、それこそ映画の前売り券の手売りとかもしてるんですよ。それで10枚売れただけでむちゃくちゃうれしくて、「売れた! ちょっと生存率上がった!」みたいな(笑)。
――その10人から、さらに口コミが広がっていきそうですね。
西野 全然寝れていないんですよ、この1、2ヵ月くらいは。寝るくらいだったらチケットを手売りしたいし、アニメーションを詰めたいので。
実写だったら、撮ってしまったものは編集しかできないですけど、アニメは「もうちょっと手を加えよう」っていうのがギリギリまでできる。そうすると結論、起きてる時間が長いほどクオリティが上がるんですよ。
こういう経験って手を挙げればできるっていうものじゃないので。いろんなものが重なって自分の番が来てやらせていただいているものですから、いい経験だと思いますね。
――どんな方のムービングムービーになってほしいですか?
西野 4、5月の段階で、「コロナの状況を見て、映画公開時期を来年に回しましょうか?」って話があったんです。ですが、『えんとつ町のプペル』って、「えんとつ町はえんとつだらけ そこかしこから煙があがり 頭の上はモックモク」というふうに、星とか青い空も見えないっていう世界で、これがコロナの今とかぶってると思ったんです。
――今、公開すべき映画だと。
西野 絶対に年内にやろうって決めたんですね。で、ストーリーがそういうなかでも踏ん張る主人公の話なので、誰に届けたいかというと今年コロナで涙した人たちですね。その人たちへのエールでしかない。
――そういう意味ではマックス77億人くらい対象だと。
西野 むちゃくちゃいますよね(笑)。地球人全員ですね。
●西野亮廣(にしの・あきひろ)
1980年生まれ、兵庫県出身。1999年、梶原雄太と共にお笑いコンビ「キングコング」を結成。にしのあきひろ名義で絵本作家としても活動
■『映画 えんとつ町のプペル』12月25日(金)より全国公開予定