『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。
今回は8月20日(金)公開予定の『キングスマン:ファースト・エージェント』で主人公の吹き替えを担当する小澤征悦(おざわ・ゆきよし)さんが登場。
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――子供の頃に見て印象に残っている作品はなんでしょう?
小澤 やっぱり『スター・ウォーズ』シリーズ(1978年~)ですかね。自分は1974年生まれなので、『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』を見てから、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』を見た記憶があります。あの世界観は子供心にびっくりしましたよね。
――お父さま(小澤征爾氏)と一緒に見た作品ってありますか?
小澤 それこそ、『スター・ウォーズ』は家族で映画館に行った記憶がありますし、『007』シリーズ(1962年~)もよく見に行ってましたね。ああいうアクション系もすごく好きで。アメリカに住んでいるときにはよく行ってました。
――俳優業につながった作品は?
小澤 『スタンド・バイ・ミー』(1987年)だと思います。作中の彼らと同じ12歳のときに、アメリカで見ているんですよ。夏休みに田舎町へ遊びに行き、ドライブインシアターで見たのを覚えています。車の助手席の窓を開けて、スピーカーを借りて車内から見ました。
まさに「キャッスルロック」みたいな町だったので、映画と同じような世界で過ごしていたんです。だから、すごく没入したし、すぐ近くの森の中からあの4人が出てきそうな感覚を味わいました。
――ということは映画の最後のほうは怖かった?
小澤 ええ、怖かったですよ。あの結末ですからね。でもね、『スタンド・バイ・ミー』はことあるごとに見ていて、今年も1回見たんです。あれって主人公が少年時代の思い出を振り返る回想録として始まるじゃないですか。若い頃はわからなかったけど、年齢を重ねてほろ苦さみたいなものを感じられるようになりました。
――では、小澤さんが俳優になったきっかけの作品はありますか?
小澤 ジェームス・ディーンの『エデンの東』(1955年)ですね。1年間、ボストン大学に留学したときに見ました。もともと英語の勉強のために行ったんですけど、途中から映画を撮影する授業を受け始めて。
今でもそうですけど、監督になりたいという気持ちが当時からあったんです。それでカット割りの勉強とかを始めて、演技の勉強に流れ着きました。
そこで出会ったのが『エデンの東』で、ジェームス・ディーンの演技が最高なんです。農場でお金を得て、誕生日プレゼントとしてお父さんに差し出したら、「おまえ、この金どうしたんだ! 盗んできたんだろ」って言われるシーンがあるんですよ。
台本ではそこで終わるのに、ジェームス・ディーンがアドリブでお金を拾って泣きながらお父さんの膝にしがみついて、お父さん役の俳優さんが本当にびっくりしていて。
内面が見えちゃう芝居というのかな? 言わんとしてることと、やってることがまったく逆なんですよ。そういう芝居のスタイルは今でも好きです。
――名シーンですよね。
小澤 ジェームス・ディーンはスタニスラフスキー・メソッドという演技論を学んでいるんですけど、僕がボストン大の演劇科で学んだのもそれなんです。今振り返ると、いろんな偶然が重なってますよね。留学してなかったら、俳優はやってなかったかもしれないです。
★後編⇒小澤征悦が吹き替えを担当する『キングスマン:ファースト・エージェント』は「見終わったら、杖を仕込み刀にしたくなると思います(笑)」
●小澤征悦(おざわ・ゆきよし)
1974年生まれ、アメリカ・カリフォルニア州出身。ボストン大学で演劇を学び、1998年のNHK大河『徳川慶喜』でドラマデビュー。その後、映画やテレビ、CMなど多岐にわたって活躍中
■『キングスマン:ファースト・エージェント』8月20日(金)公開予定