『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。
8月6日より全国公開予定の『映画 太陽の子』で主演を務める俳優の柳楽優弥(やぎら・ゆうや)さんが、初めて見た映画や惹(ひ)かれる映画監督を語る!
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――幼少期に見て、今でも覚えている映画はありますか?
柳楽 『タイタニック』(1997年)ですね。家族で一緒に見に行ったので印象に残っています。当時、小学校2年生だったんですけど、それまではずっとアニメばっかり見ていて。ちゃんと大人なストーリーを楽しいと思えたのは初めてで、映画に入り込めたのがすごくうれしかったんです。
――もう少し大きくなってから見た作品はどうですか?
柳楽 『やまとなでしこ』(フジテレビ、2000年)とか『GООD LUCK!!』(TBS、2003年)とか『WATER BOYS』(フジテレビ、2003年)とか、そのあたりのドラマに超ハマってました。あとは『SMAP×SMAP』(関西テレビ・フジテレビ、1996~2016年)も大好きでした。
――『スマスマ』って答えた方はこの連載で初めてです!
柳楽 なんでアイドルの人たちがコントやってるんだろうっていうのが、面白すぎて。いまだにお笑いが好きなのは『スマスマ』の影響が大きいですね。アイドルの人たちがやる笑いがツボすぎましたね。もちろん『笑う犬』シリーズ(フジテレビ、1998年~2003年)とか、ほかのバラエティも見てたし、好きだったんですけどね。
――ちなみに、僕、TBS時代に『金スマ』やってたんで、中居くんとはずっと仕事してたんですよ。
柳楽 え、そうなんですか! すごい!
――ほかには『さんまのスーパーからくりテレビ』(TBS、1992~2014年)とか。「ご長寿早押しクイズ」とか作ってましたよ。
柳楽 大好きでずっと見てましたよ! えっ、すごすぎないですか?
――いいリアクションありがとうございます(笑)。『スマスマ』の話が出ましたが、コントはご自身でもやってみたいと思ったりしませんか?
柳楽 やってみたいと思うんですけど、なかなかできないですね。だからこそ、すごいなって思いますし、そこから完全にインスピレーションを得ているなと。
――ではこの業界に入られた後のお話を伺いたいです。出演作や監督に影響を受けたことってありますか?
柳楽 是枝裕和さんとか蜷川(にながわ)幸雄さんとか、節目節目で出会っていますね。あと、『許されざる者』(2013年)の李相日監督はすごくモテる方で。
――ん、モテる感じ?
柳楽 そうなんですよ。現場で厳しいんですけど、みんな好きになっちゃう。監督としての威厳とか作品ももちろん好きなんですけど、「なんでこの人はこんなにモテるんだ?」っていうところのほうが僕は気になっていました。
――ちなみに柳楽さんの分析では、なぜモテると?
柳楽 誠意を持って作品に取り組む姿勢と、口数がそんな多くないところ。なのに、ちょっと力強さを見せるところ。年齢なのか、雰囲気もあるんです。穏やかで優しくて。興味を惹かれる人ですよね。
――監督のたたずまいに影響を受けた人もこの連載で初です。
柳楽 僕、性別問わず人からモテる監督が好きなんです。人間として魅力的で。
――では話を戻して、最近見た作品で面白かったものは?
柳楽 アカデミー賞を取った作品はけっこう見ました。Netflixはよく見ていて、ドキュメンタリーだと『オクトパスの神秘:海の賢者は語る』(2020年)とか、ドラマだと『ザ・ホワイトタイガー』(2021年)とか面白かったですね。あとこの間、スパイク・リー監督の『アメリカン・ユートピア』(2021年)を見ました。
――あ、僕も大好きです! 今年イチというくらいよかったです。
柳楽 ですよね? もう超よかった。彼のニューヨーク愛が好きなんですよね。リズムもよくて、内容もすごく面白かったです。
■難役を通じて、戦争の怖さを伝えていく
――最新主演作『映画 太陽の子』について伺います。1945年の夏、軍の密命を受けて原爆の研究開発を進めていた京都帝国大学物理学研究室の若き科学者、石村修を演じていますが、ある意味、しんどい役だったと思うんですけど、どうでしたか?
柳楽 正直、これまでの僕は脇のキャラを演じることのほうが多かったので、オファーを受けたときは「このスケールの主人公を演じられるのか......」と思いましたし、自分の中ですごくチャレンジでした。
あとはやっぱりテーマですよね。太平洋戦争の時代を描く作品で、しかも日米合作ってことで「日本の人から、アメリカの人から、どういうふうに見られるんだろう?」っていう、そこの怖さもあったり。
ただ、僕とか(有村)架純ちゃんと(三浦)春馬君の世代でこういうテーマをしっかり描き、伝えることはとても大切なことだと思っていました。事前に役作りできることは限られていたので、撮影していないときも勉強会をしたり、ご飯をみんなで食べたりして、そうやって作品に入り込む雰囲気ができていくうちに、自然とキャラクターもできていきました。
――修は学者として、原子が爆発する際に発する光の美しさみたいなものに魅せられていたと思いますが、演じる上でそのあたりはどうでした?
柳楽 僕が修を追いかける作業の連続でしたね。「修は何を考えているんだろう?」って。『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2015年)とか『ビューティフル・マインド』(2002年)とか、その時代の研究者を描いた作品を見ると、ちょっと狂気にも見える瞬間がやっぱりあるんです。
そこは修も同じで、「それは正しい、素晴らしい」というだけじゃなく、むしろ人間性を疑ってしまう瞬間も見え隠れします。だから、誰もが共感できるような主人公ではないんです。ただ、その修という主人公を通して、戦争や当時の状況についての自分の考えを持てるんじゃないかって思います。修に対して、「こういうタイプの人ちょっと苦手」って思ってもいいですし。
――そう思われてもいいってことですね。
柳楽 監督からもそう言われていました。戦争を通して、純粋に科学に向き合っていた心がだんだんと狂気に変わっていく感じとかを見てもらえれば、戦争の怖さを感じてもらえると思います。
●柳楽優弥(やぎら・ゆうや)
1990年生まれ、東京都出身。2004年に映画『誰も知らない』で演技経験がないまま主演を務め、史上最年少で「カンヌ国際映画祭」の最優秀主演男優賞を受賞。以降、映画、ドラマ、舞台と活躍の場を広げ、数々の話題作に出演
■『映画 太陽の子』8月6日(金)より全国公開予定
柳楽優弥 有村架純 三浦春馬