『鬼滅(きめつ)の刃(やいば)』の主人公・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)の妹・禰豆子(ねずこ)役を演じる鬼頭明里(きとう・あかり)さん。
第1話で鬼になってしまう禰豆子は、ほぼ人の言葉を話せなくなってしまうが、鬼でありつつも人を襲わず人を守る、かわいらしくも強い芯を持った、ファンからも愛される作品内のヒロインだ。言葉を使わずに芝居をするという難しい役どころを演じる鬼頭さんに、作品の魅力についてあらためて語ってもらった。
*このインタビューは、『週刊プレイボーイ30号』(7月12日発売)に掲載されたものです
■ひとり自宅で続けた唸りの練習
――まず鬼頭さんと『鬼滅の刃』との出会いから教えてください。
鬼頭 コンビニで偶然『週刊少年ジャンプ』で『鬼滅の刃』が表紙の号を見かけて。連載初期だと思うんですけど、それが作品を知ったきっかけでした。その表紙の絵と『鬼滅の刃』というタイトルを見た瞬間に「面白そう、やりたい!」と直感的に思ったんですよね。それと同時に、「これは絶対アニメ化されるから、今は読まないでおこう」と思いました。
――読まないというのは、どういうことですか?
鬼頭 そのときはアニメ化が決まっていたわけではなかったんですけど、もしオーディションを受けるなら直前に読んで臨みたかったんです。やっぱり1回目に読んだ直後が、一番気持ちが入るので。あえて読まずにいましたね。
――結果、それが正解だったわけですね。
鬼頭 そうですね。オーディションがあってよかったです(笑)。
――基本的に唸(うな)り声しか出せない禰豆子役を演じる上での難しさは?
鬼頭 まずは原作を繰り返し読んで、頭の中で聞こえてくる声を再現しようと思ったんですけど、唸り声でお芝居したことなんてなかったし、最初は何が正解なのかわからなくて、ひとりで家のクローゼットに顔を突っ込んで、ずっといろんな唸り声で叫んでましたね(笑)。それを録音して「こんな感じかなぁ」って。あと禰豆子の体のサイズも意識するようにはしていました。
――体のサイズ?
鬼頭 どの役もそうなんですけど、人間の体って"楽器"だし、小さい楽器は高い音が、大きい楽器は低い音が出るじゃないですか。禰豆子はストーリーの中で頻繁に体の大きさが変わるので、サイズと声の高さのバランスは考えました。最初はとにかく手探りの状態でスタートしていったんです。
■芝居と芝居がぶつかった『無限列車編』
――『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は興行収入の歴代1位を更新する作品になりました。
鬼頭 アニメ放送の初期に、映画館で上映会があって、あまりにクオリティが高くて「もっと映画館で見たい」って思っていました。映画化はもう「待ってました!」っていう感じでした。『無限列車編』は原作を読んだときからめちゃめちゃ面白いと思っていたので。
強くて、いい人で、人気のあるキャラクターの煉獄(れんごく)(杏寿郎[きょうじゅろう])さんが命をかけて戦うシーンがすごく衝撃的で、なんやかんやそういう人は死なずに戦いに勝って、物語がいい方向に進んでいくと思って最初は読んでいたんですけど、人生の厳しさが描かれているというか。『無限列車編』で作品自体の深みが増したようにも感じましたし、さらに引き込まれました。
――特にお気に入りのシーンはありますか?
鬼頭 まずキャストの皆さんが本当に素晴らしいお芝居をしていて。アフレコ現場ではお芝居を聞いているうちに自然と涙が出てきてしまうくらい熱くて......。特に煉獄さんと鬼の猗窩座(あかざ)の戦闘シーンは絵もとにかくカッコよくて、声優として聞いても、空気が震えるようなお芝居のぶつかり合いでした。
――そして今回、無限列車編のBlu-ray&DVDが発売されました。
鬼頭 どのシーンもカッコいいですし、一瞬を表現するためにものすごい労力が使われていることが感じられるはずです。ぜひアニメーターさんが描いた絵を、隅々まで見ていただきたいです。
私が演じた禰豆子もかわいいシーンがたくさんあるので、ぜひ注目してほしいです。特に(我妻[あがつま])善逸[ぜんいつ]の夢の中の禰豆子は唸り声ではなく人間の言葉を話しているんですけど、われながらとてもかわいくて、オススメです(笑)。あとは、個人的にも学べることも多い作品だなと。
――学べること?
鬼頭 煉獄さんが小さい頃、病気がちだったお母さんに「なぜ自分が人よりも強く生まれたかわかりますか」「弱き人を助けるためです」と言われるシーンが胸に響いて。自分も妹や周りの人を守れるような人間になりたいなぁって(笑)。
『鬼滅の刃』にはすてきなお兄ちゃんお姉ちゃんがたくさん出てきて、それぞれのきょうだい愛や絆が描かれてますよね。実際はきょうだいってけんかしてしまうことも多いと思うし、私のところなんてもう手遅れかもしれないけど(笑)、作品を見た上で、もう少し妹に優しくしようって素直に思えたので、そういう方がこの作品を見てくれたなかにもいてくれたらいいなと思います。
■陽キャオタクだった高校時代
――そんな鬼頭さんですが、今回が男性誌初グラビアということです。撮影はいかがでしたか?
鬼頭 現場で皆さんがたくさんホメてくださったので、気持ちよく撮影させていただきました。あとは週プレさんといえばグラビアのイメージが強いので、「私でいいんですか?」って(笑)。私の中では露出量的に多いかもしれないです(笑)。
――ありがとうございます(笑)。少しパーソナルなお話も伺いたいんですが、鬼頭さんは声優になる前ってどんな感じの人だったんですか?
鬼頭 父が大の漫画好きだったのもあって、小さい頃からアニメや漫画は見てましたね。高校2、3年の頃から声優を目指そうって思って、練習の一環で漫画を音読して、自分なりにいろんなキャラクターを演じ分けたりしていました。
でも親に内緒で練習してたので、学校から帰ってきて、家に自分しかいない時間に漫画を音読して録音して、またそれを再生しながら漫画を読む、みたいな生活をしていました。半分遊びでしたけど。
――学校生活のほうは?
鬼頭 中学では美術部で、高校では軽音楽部に入ってたんですけど、どちらもそんなに打ち込んではいなかったです。どちらかというと家に帰ってイラストを描いたり、漫画を読むことに情熱を注いでいました。
――放課後に友達と遊んだりは?
鬼頭 あ、それはしてました! 寄り道が大好きだったので、スタバに行ったり、プリクラもめっちゃ撮ってましたね。オタクでもありつつ遊びに行くのも好きだったので、割と友達も多かったと思います。
――陽キャオタクですね。
鬼頭 陽キャの友達に一方的に漫画の話をして、貸したりしてましたね。ただ声優になりたいっていうのは、誰にも言ってなくて。なれなかったときに恥ずかしいから、なってから言おうと思って。だから「進路どうすんの?」って友達に聞かれても、「わかんない」ってごまかしてました。
――そこから実際に声優の道に進んだのは?
鬼頭 受験のタイミングで「大学に行くなら自分で奨学金を借りて行きなさい」って親に言われて、考えたんですよ。それで「そこまで大学に行きたくもないな」って思って。それで昔から声優には興味があったし、自分でお金をためて声優をするために上京するのもアリだなって。
でも養成所時代は本当にお金がなくて、バイト先のラーメン屋さんの賄いと、モヤシ炒めで食いつなぐ毎日でした。しかも調味料は塩とコショウ、たまに醤油みたいな。その後、振るわない時期もあったんですけど作品にも恵まれて、今はなんとか食べたいものも食べられています(笑顔)。
――よかったです。
鬼頭 私は小さい頃にたくさん甘やかしてもらったので、家族にとって自慢できる娘に、孫になるっていうことは第一に考えていたんですが、ひとまずは自立できるようになったのと、家族も私の声優ライブや作品を見てくれたりもしていて、少しは恩返しもできているのかなと思います。
今回の企画も週プレの読者さんに私のことを知ってもらえる機会が来るとは思っていなかったので、すごく光栄なんです。これを機に私の出ている作品とか、キャラクターを知って、アニメを見ていただけたらうれしいです。ぜひぜひ作品ともども、鬼頭明里もよろしくお願いします!
■鬼頭明里(Akari KITO)
10月16日生まれ 愛知県出身
身長153㎝ 血液型=B型
○アニメ『鬼滅の刃』にて竈門禰豆子役を務める。1stミニアルバム『Kaleidoscope』が好評発売中。公式Twitter【@kitoakari_1016】公式Instagram【@akarikito1016】
■『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』Blu-ray&DVD大好評発売中!
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