渋谷TANPEN映画祭CLIMAXat佐世保のオリジナル作品第3弾として制作され、あいち女性国際映画祭など3つの映画祭でグランプリを受賞、文化庁メディア芸術祭2020でも審査員推薦作品に選ばれた短編映画『リッちゃん、健ちゃんの夏。』の公開が始まった。

世界遺産に登録された長崎県佐世保市の「黒島の集落」を舞台に、教師へ向けた中学生の淡い恋心を描いた本作。かつて、迫害されたキリシタンが潜伏していた黒島で、世間から隠れるように暮らすふたりの恋愛物語だ。

主人公のリッちゃんを演じたのは、カネボウの「KATEMASK」やリクルートの「スタディサプリ」など数々のCMに出演している若手女優・武イリヤ。本人に役への思いを聞いた。

――撮影されたのは2年前ということですが、主演に選ばれた感想は?

 最初はびっくりしました。オーディションも「映画祭のイメージキャラクター」ということでしたので。それにリッちゃんが中学生ということで、大学生だった私で大丈夫かな?とも思いました。見た目はお化粧を薄くすれば平気かなとは思ったんですけど。

――中学2年生の役ということで、役作りみたいなことはしたんですか?

 中学時代、先生と連絡帳で交換日記のようなことをしていたんですよ。それを3年間分、全部見返しました。まずは自分が中学生のときに何を思って、何を楽しんでいたのか思い出さなきゃと。

――どんなことが書かれていたんですか?

 めちゃくちゃ中2病でした(笑)。中2のクラス替えで仲のいい友達とクラスが分かれたんですよ。そのときの連絡帳には「私の中学生活終わりました」みたいなこと書いてたり。

合唱コンクールのときも「こんな人達と練習したくない」って、みんなが練習しているなかで、私ひとり窓の外を見てサボってたりしてたのを思い出しました。


――こじらせ過ぎじゃないですか(笑)。

 最初だけですよ!(笑) 結局、仲のいい友達もできましたし、合唱コンクールも途中から急にやる気になって、指揮者にも立候補したんですから。さすがに落選しましたけど。

――先生を追いかけていくリッちゃんとは、まったく違う中学生活ですね。

 でも、彼女の気持ちは共感できるんですよ。先生に恋したことはないですけど、通っていた塾の先生が大学生で、みんな大人に見えてカッコいいなって憧れましたし。

――ご自身の中学時代の恋愛経験は?

 中学生だとそろそろ周りが付き合い始める、みたいな時期で、これはマズイって無理やり人を好きになろうとしてたんですよ。でも全部振られて全然うまく行かなかったおかげで、ちゃんと人に向き合わないとダメだって気が付けました。

そのおかげで、高校時代は自分から行かないと何も始まらないなって積極的になりました。自分のものにならない悔しさみたいなものを感じて、絶対振り向かせてやるみたいな。恋愛に対していろいろ気持ちが切り替わりました。

――高校時代はちゃんとした恋愛に?

 そうですね。すごく好きな人ができて、でもそこで自分は恋愛体質なんだと自覚したんですよ。恋愛まっしぐらで、これはだめだって。それこそ死ぬほど好き!ってなっていたんだと思います。

――それに気が付いたきっかけはあったんですか?

 ずっと一緒にいたいと思って、、学校も行きたくなくなるし、とにかくダメになってました。ずっとヨギボー(人をダメにするソファ)に座っている感じです。

それに私、尽くし過ぎちゃうんだと思うんですよ。好きな人に誕生日プレゼントで1万5000円もするブランドTシャツをあげていたり。高校生の1万円ってすごいことじゃないですか。それなのに、相手から私へのプレゼントは、一番好きなミッフィーじゃなくて、別のキャラクターの手鏡ひとつで。


――ミッフィーならよかったんですか?

 ちゃんと1番好きなキャラクターを覚えてくれていればうれしいです。でも違ったので、自分だけ舞い上がってるのが悔しいなって思って。一歩引いて冷静な部分も残さないとダメだと反省しました。

私はそこで踏みとどまったんですけど、相手がしっかりした人なら自分も追いかけるんじゃないかなと思います。だから、リッちゃんが黒島までひとりで先生を追いかけて行く気持ちは分かるんですよ。

――当時、周りの友人に恋愛相談をしたりは?

 周りが少女漫画の王子様を信じているようなタイプで、あまり恋愛していなかったんですよ。ただ、逆に中学時代に先生に恋していた友達がいて相談に乗っていたので、リッちゃんを演じる上で、彼女の苦しさがわかりましたね。そりゃ辛いわ......って(笑)。

――恋愛感や積極性など、リッちゃんに似た部分がありますけど、他に共通する部分はありましたか?

 リッちゃんは思ったことや自分の気持ちを素直に全部言っちゃうので、それも私と同じだなって思っていました。今の私は、自己中を捨てることができたというか、言い方を考えるようになりましたけど、昔はストレートに発言していたので。


――それこそ恋愛面を含めて、いろんな経験をして相手のことを考えるようになったと。

 そうですね。物語の最後に、その後のリッちゃんの様子が一瞬映し出されるんですけど、そのころにはまた成長して、きっと素敵なコになっているんだと思います。私に似ているから、ついそうなって欲しいなって気持ちになっちゃいますね(笑)。

――役作りに苦労した点などはなかったですか? 佐世保の中学生ということで、方言もあったと思いますが。

 方言は歌を覚えるようにリズムに注意していたら自然と覚えていました。役よりも圧倒的に大変だったのは、海に飛び込むシーンです。「この辺は岩が多いから気を付けて。血だらけになるよ」とか脅すんですよ。もちろん注意で言っているんですけど、泳げないから飛び込むだけで怖いのに、それを聞いて「どうにでもなれ!」って気持ちで飛びました。海の中でキスするシーンがあるんですけど、内心はキスどころじゃなくて、溺れないように必死でした(笑)。

――最後に映画の魅力をお願いします。

 リッちゃんの中学生らしい純粋さに共感できたり、懐かしい気持ちになれると思います。それから、黒島が舞台ということで、澄んだ海や繊細な風の音など自然の情景がどれも素晴らしいです。地球のドキュメンタリーを観ているような気持ちになれるので、コロナ禍で鬱屈とした時代にピッタリなものが見られるんじゃないかなって思います。

武イリヤ
2001年3月23日生まれ、千葉県出身
身長164cm B80 W60 H85
趣味・特技=乗馬・カラオケ
◯2017年に映画『サムライせんせい』のヒロインに抜擢され、女優活動を開始。カネボウ「KATEMASK」や「スタディサプリ」など数々のCMに出演
公式Twitter【@takeiriya】 
公式Instagram【@take_iriya】

ヘアメイク/仁平結紀 衣装提供/WILLSELECTION (C)渋谷TANPEN映画祭CLIMAXat佐世保2019 AOI.Pro