アート作品が超高額で取引され話題のNFTだが、次なるホットなジャンルが「NFT×ゲーム」だ。これまた市場は熱を帯びているようで、アイテムを売買するだけで生活する人も出現! 今からデビューして稼げんのか!? 熱狂のバーチャル空間内に迫った。
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■1年で1600万円稼いだ日本人も
今年のユーキャン新語・流行語大賞にもノミネートされた「NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)」。3月にデジタルアーティストのNFT作品が75億円で落札されて世界を仰天させたこともあり、多くの人が思い出すのは高額で売買されるアート作品だろう。
そんなNFTに新たなムーブメントが起きている。「NFTゲーム」だ。この中ではアイテムが仮想通貨で売買され、例えばベトナム発の人気NFTゲーム『アクシー・インフィニティ』では、ゲーム内の土地がなんと1.6億円で取引された事例も出ている。すでに3年ほどNFTゲームをプレイしているカマトモさんも、ゲームで生計を立てるひとりだ。
「現実のサッカー試合の戦績がゲームに反映される『ソラーレ』というトレーディングカードゲームをやっているのですが、この1年間で約33.5ETH(イーサリアム。プラットフォームおよび仮想通貨の名称)稼ぎました」
1ETHが約50万円なので、日本円に換算すると利益は1600万円以上! 3年間の累計利益は5000万円を超えるという。
では、この市場に、今からデビューしても稼ぐチャンスはあるのか? NFTゲームの最新の実態を探っていこう!
本題に入る前に、NFTについて簡単におさらい。『NFTの教科書』(朝日新聞出版)の著者・天羽健介さんに解説していただいた。
「NFTとは、あるデジタルデータが唯一無二であることを証明する技術です。例えば、現実に存在する絵画を完璧に複製することはできないですよね。従ってその絵画は唯一無二といえます。
一方、イラストや音楽などのデジタルデータは無限にコピーできる。ところがNFTを使えば、デジタルデータに『これはコピーではなくオリジナル』と示す証明書を付与できるのです。技術的な話には立ち入りませんが、これは仮想通貨の根幹を支えるブロックチェーン技術によって実現しています」
それによって何が起きる?
「例えばNFTのイラストデータを購入したとき、それが作者から正式に販売されたものだと証明できるようになります。そのNFTは無数のコピー品とは明確に違うと証明できるので、希少価値が生まれますよね。つまり現実の絵画のような価値が、デジタルのイラストにもつくようになるんです」
この技術を用いたのがNFTゲームだ。ジャンルは多々あるが、共通の特徴はふたつ。ゲーム内のアイテムやキャラなどが唯一無二の価値を持つことと、それを自由に売買できることだ。
「アイテムに限らず、仮想空間の中の土地や建築物、服なども価値を持ち、プレイヤーが資産として保有できます。そうなれば建築物や服を作り販売して稼ぐ、という人も現れるでしょう。そんなふうに仮想空間の中にさまざまなデジタル資産が存在し、現実世界と同じような経済活動すら成立してしまう場を『メタバース』と呼びます」
フェイスブックが本格的に参入すると宣言して、今話題のメタバースですね。
「はい。現在の代表例である『ザ・サンドボックス』は、ゲーム内取引でNFTが使われており、その意味では広義のNFTゲームと呼べます。10月にフェイスブックから社名を変えたメタ社が開発中の『ホライズン』を含め、今後出てくるメタバースにとってNFTは不可欠の技術ですし、NFTゲームの今後のトレンドとしてはメタバースが増えるでしょう」(天羽さん)
■初期投資は最低でも20万円!
ただし現時点でのNFTゲームはメタバースとは程遠く、アイテムやカードといった一部のデジタル資産が売買できるRPGやトレーディングカードゲームがほとんどだ。そうしたゲームでどう稼いでいるのか? 前出のカマトモさんに詳しく聞いた。
「『ソラーレ』の場合、まずは実在するプロサッカー選手のトレーディングカードをゲーム内で集め、5人ひと組で自分だけのチームを編成し、あとは現実の試合が行なわれるのを待つだけ。試合が終わると活躍度に応じて各選手にスコアがつくので、その合計点をほかのプレイヤーと競います。
収入源のひとつはカードの売買です。実際の試合で活躍しそうな選手は価格が高く、そうではない選手は安い。例えばクリスティアーノ・ロナウド選手には高値がついています。しかし安値だった選手が活躍するようになって価格が上がることもあるので、サッカーに詳しい人はやや有利ですね。
また、それぞれのカードにはレアリティ(希少価値)があり、レアなカードは発行枚数に上限があるので、それも価格に影響します」
メインの収入源は、ランキング報酬だという。
「試合に勝ってスコアランキングで上位になると、ゲーム運営から報酬としてETHや、新たなカードをもらえます。この報酬だけで100万円に上ることも」
つまりいいカードを手に入れて、試合に勝つのを待つだけ。ゲーム内容はいたってシンプル。だが稼ぐのは簡単かというと、
「参入障壁は高く、優秀な選手を手に入れるための初期投資が必要になります。今なら、最低でも20万円、優秀なメンバーを5人そろえるなら50万円くらい。その上で、高いスコアを出すために日々データ分析などの努力も必要です」
ちなみにほかのゲームは?
「例えば『アクシー・インフィニティ』もやってみましたが、すぐに断念しました。稼げるには稼げますが、そのためには毎日数時間のプレイが求められ、効率が悪かったからです。
正直なところ、現状のNFTゲームは既存のコンシューマーゲームに比べるとあまり面白いとはいえません。私も楽しいからではなく、稼げるからプレイしているのが本音。であれば、効率よく稼げるゲームに時間と資金を集中投下すべきです」
初期投資をあまりかけず稼ぐ方法はないですか?
「リリース直後のゲームを始め、先行者利益を得るしかないですね。はやりそうなゲームをいち早くプレイしておけば、人気になった後に自分のデジタル資産の価格も上がりますから。実際、私が『ソラーレ』を始めた頃は今よりもカードの価格はかなり安かった。それが海外で大人気になり、高騰したという経緯があります」
つまり、まだ人気になってないものや、今後リリースされるゲームが狙い目だと?
「ただ、話はそう単純ではありません。というのもレアアイテムを入手しても、プレイヤー人口が少ないゲームだと取引がなかなか成立しないんです。すでに人気があって人口も多いゲームのほうが、資産が無価値になってしまう可能性が低いという点では比較的安全といえます。もし新しいNFTゲームを始めるなら、それが人気になるかどうかの目利きが重要になるでしょう」
■NFTゲームに無課金でチャレンジ!
百聞は一見にしかず。一攫千金(いっかくせんきん)を夢見て、記者もNFTゲームに挑戦してみた。しかし数十万円も初期費用を投入するのは怖いので、とりあえず無課金で始められる国産NFTゲーム『エグリプト』にトライ。
ほとんどのゲームは始める前に、取引所でETH(イーサリアム)を購入してウォレット(暗号資産用の個人口座)に移動させるという準備が必要だが、このゲームは不要。また、多くのNFTゲームが基本的にPC向けなのに対し、『エグリプト』はアプリをインストールすればスマホでプレイ可能なのも手軽に思えた。
ゲーム内容は集めたモンスターを育てて戦うオーソドックスなRPG。そして「レアモン」と呼ばれる売買可能なモンスターを売ることで稼ぐ。レアモンはクエストのクリア報酬やプレイヤー同士のバトルでの勝利報酬となっており、20万円で売買が成立した事例もあるという。
記者も1週間コツコツとプレイしてみたが......、プレイヤーとのバトルでは、上位クラスにいくと有料ガチャでしか出ないモンスターがほぼ必須。クエストクリアによるドロップ確率もかなり低いようで、ここまでレアモンを入手することはできず、まだ1円も収益を上げられていない。簡単に始められるゲームで簡単に稼げるほど現実は甘くなかった。
最後にカマトモさんに、今後リリースされるオススメのゲームを聞いた。
「個人的に期待しているのは『イルヴィウム』と『エンバーソード』ですね。特に前者はハイクオリティなトレーラー映像が海外で話題になっており、リリース前から公式ツイッターのフォロワーが14万人を超えています。
エレクトロニック・アーツといった大手ゲーム会社も参入意欲を示しており、今後はハイクオリティなゲームが増えていくはず。そうなればNFTゲームにより多くの人が集まるので、今デビューしておくのはいいタイミングだと思います」
先に天羽さんが語っていたように、メタバースのNFTゲームが広がる機運も高まっている。ゲーム好きで、何より目利きに自信がある人はトライしてみてもいいかも?(でも稼げる保証はできませんが)