『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。
3月24日よりNetflixにて全世界同時独占配信される映画『桜のような僕の恋人』でヒロインの美咲を演じる松本穂香さんが登場!
■見たら救われる、ほっこりする作品が好き
――映画館で初めて見た作品はなんですか?
松本 『ジュラシック・パーク』(1993年)ですね。小さい頃に見たので内容は覚えていないんですけど、パンフレットを買って帰った記憶があります。
――では、今のお仕事を目指すきっかけになった作品は?
松本 きっかけになった作品は正直ないんです。昔から映画よりもドラマが好きで、『あまちゃん』(NHK連続テレビ小説、2013年)はよく見ていました。今の仕事という意味では、高校で演劇部に入った影響が大きかったかもしれないです。
――演劇部に入ろうと思ったきっかけはなんでしょう?
松本 それも特にきっかけはなくて(笑)。見学したときに台本を渡されて、やってみたら「上手だね」とホメてもらえたんですよ。ホメられることがあまりなかったので、「ちょっとやってみようかな」というくらいの感じだったと思います。
こういう取材で「女優になったきっかけは?」と聞いてもらえることが多いんですけど、振り返っても、何が大きなきっかけだったかわからないんです。
――もしホメられたのが違うことだったら、芝居の道には進まなかった可能性も?
松本 そうかもしれないです。
――『あまちゃん』を見たときはどう感じました?
松本 そのときは「すごい楽しい世界だな」と思いました。私は「演じてみたい」というより、「その物語の世界にいる人がうらやましい」と思うことが多いんです。
――そんな松本さんが一番好きな作品はなんでしょうか?
松本 実写ではないんですけど、『耳をすませば』(1995年)です。
――いい作品ですよね! ジブリの中でも独特の立ち位置で、青くさい部分もあって。どういうところがお好きですか?
松本 まさにそういう青くさいところが好きなんです。主人公の雫(しずく)が物語を一生懸命書いて、おじいちゃんに読んでもらうシーンがあるんですけど、暖かい部屋で待っていてもいいはずなのに、わざわざ外に出て寒いなかで体育座りして待っちゃうところとか。
そういう雫の痛々しいところが大好きで。痛々しいんですけど、すごく共感できるんです。自分と重ねて見ちゃうところがありますね。
――『耳をすませば』はどんな作品だと感じていますか?
松本 私は恋愛モノというより、雫の成長のお話だと思っています。そこに恋愛も交じってくるからこそ、雫の成長がより見えてくるというか。だから、「私は雫だ!」というくらいの気持ちでいつも見ちゃいますね(笑)。
――そこまで感情移入されているとは!
松本 「言葉にできないけど、その感覚は知ってる!」みたいなところがこの作品にはすごくある気がします。
――ちなみに、ご自身がお芝居をされるときにも、言葉にできない感情を探しながら演じているんでしょうか?
松本 そうですね。そこを表現できたら一番いいなと思います。
――深みであり、彩りですもんね。そういうところはまさに雫っぽいですよね!
松本 ありがとうございます(笑)。
――話を戻して、ほかに好きな作品はありますか?
松本 ジャンルはバラバラなんですけど、『ヘアスプレー』(2007年)、『パターソン』(2017年)、『シング・ストリート 未来へのうた』(2016年)、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)が好きですね。ほかにミュージカル作品も好きです。
――どの作品もそれぞれ世界観がありますね。
松本 そうですね。見たら救われる、ほっこりするような作品が好きですね。
■『桜のような僕の恋人』の撮影現場では"陽"な自分を意識
――3月24日より全世界同時独占配信されるNetflix映画『桜のような僕の恋人』では、早老症という難病を患うヒロインの美咲を演じています。撮影に入る前に原作の小説は読みましたか?
松本 今回はいただいた脚本が特殊で、主人公の晴人を演じる中島(健人)さんの台本と私の台本が違っていて、相手のシーンがわからない作りになっていたんです。先に原作を読んでしまうと展開がすべてわかってしまうので、撮影を終えてから読みました。
自分が知らない部分だらけだったので新鮮でしたね。「あまり考え込まずに役に入り込んでほしい」という監督の気持ちが込められた脚本だったと思います。
――美咲というキャラクターを演じる上で心がけたことはありますか?
松本 美咲は明るくて前向きな女のコですけど、私は正直そこまで心を開くタイプじゃないので(笑)。現場では"陽"な自分を意識していました。お芝居のシーンだけじゃなくて、現場に入ったら常にそういう気持ちでいようと心がけていました。でも、後先を考えずに思ったことをなんでも言っちゃうところは自分に似ていますね。
――演じていて、つらい気持ちになる瞬間もありませんでしたか?
松本 それはありました。でも、切り替えるようにしていましたね。つらいのは相手役の中島さんも一緒で、私だけではないから。そうやって支え合っていけたらなという感じでした。
――Netflix作品でしたが、撮影期間は長めでしたか?
松本 撮影期間は約3ヵ月あったので、時間的にも余裕がありました。
――3ヵ月は長めですね! 撮影期間が長いと、その分より深く演じられたりするのでしょうか?
松本 それはありますね。ただ、逆に言うと、「気持ちを維持するのが大変かもな」とも思いました。ひと月だと集中して演じることができますけど、3ヵ月あるとその熱量を保ち続けないといけないので。でも、今回は周りのスタッフさんの支えが大きかったので、乗り切ることができました。
――この作品をどんな方に見てほしいですか?
松本 主人公のふたりは20代前半から中盤くらいの年齢ですが、この作品はどの世代の方にもきっと響くと思います。私の親世代の方にも楽しんでもらえるような、ストレートな作品になっています。それから、何かを追いかけてがんばっている方にもぜひ見てほしいですね。
●松本穂香(まつもと・ほのか)
1997年生まれ、大阪府出身。高校時代に演劇部に所属し、2015年に女優デビュー。2017年にドラマ『ひよっこ』の青天目澄子役で注目される。2018年、ドラマ『この世界の片隅に』で主人公・すず役に抜擢。同ドラマの挿入歌『山の向こうへ』も歌う。2019年には映画『おいしい家族』で長編映画初主演を果たす
■Netflix映画『桜のような僕の恋人』
Netflixにて3月24日(木)より全世界同時独占配信