歴史的名作『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975~1977)の放送以降、長きにわたり親しまれているスーパー戦隊シリーズ。その最新作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』が革新的な作品として話題を呼んでいる。3月19日に発売された『週刊プレイボーイ14号』は「素顔のスーパー戦隊ヒロイン大集結」と題し、歴代のスーパー戦隊ヒロインたちが登場。最新水着グラビアだけでなくインタビューなども収録し、スーパー戦隊シリーズへの愛を見せてくれている。

その特集から、歴代ヒロイン4名のインタビューを最新撮り下ろしとともに連続掲載。今回はシリーズ第26作『忍風戦隊ハリケンジャー』(2002~2003)で、野乃七海/ハリケンブルー役を演じた長澤奈央さんが登場。野乃七海は、演歌歌手・野乃ナナとして活動しながら宇宙忍群ジャカンジャと戦う18歳の女性。動きが素早く、水を使った超忍法の使い手だ。作品から得たものや当時の心境、そしてスーパー戦隊シリーズの魅力を語る。

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──長澤さんは、『忍風戦隊ハリケンジャー』で野乃七海/ハリケンブルー役を演じました。七海は負けず嫌いで何事にも全力な姿と裏表がない性格、そして決して器用なわけではない一面も魅力になっている役柄だったと思います。そんな七海を演じた『忍風戦隊ハリケンジャー』ですが、出演が決まったときのことは今でも覚えていますか?

長澤 覚えています。別のオーディションの帰りに、大崎か品川の駅にあるコーヒーショップでマネージャーとその日の反省会をしていたんです。そしたら、「あんた、『ハリケンジャー』決まったよ」って、ぶっきらぼうに言われました(笑)。ぶっきらぼうに言われたけど、「スーパー戦隊の女のコだったら、絶対にピンクでかわいいはずだ!」って私のテンションは上がって、「ピンクですか?」ってマネージャーに聞いたら「ブルーだよ」って。それで、ちょっと凹みました(笑)。

よくよく聞いたら、「ハリケンジャー」は3人で、そもそもピンクはいなかったんですけどね(笑)。それで、マネージャーに「やる気あるの? できるの?」って聞かれて、「やりますよ!」って答えたことを覚えています。

──「ハリケンジャー」は、スーパー戦隊シリーズの26作目。すでに息の長いシリーズとして人気を確立していて、全51話で撮影は1年間に及びます。当時は不安やプレッシャーも大きかったのでは?

長澤 最初は、ことの重大さをわかっていなかったんですよ。オーディションに受かったうれしさのほうが大きかったし、女優としての経験も浅いから無知すぎて怖いもの知らずだったので、不安も心配もありませんでした。

長澤奈央さんが演じた野乃七海(©東映)

──それでも撮影が始まると、苦労は少なくなかったのでは?

長澤 よく、スーパー戦隊シリーズはスケジュールが大変だという話がありますけど、本当にその通りで、ハードでした。まず、撮影に行くときは始発電車に乗らないと現場の入り時間に間に合わない。私とハリケンイエロー役の山本(康平)くんはたまたま同じ最寄り駅だったので、必然的に同じ始発電車になるんですよね。それもあって、山本くんとは早い段階で仲良くなれました。だから、大変ではあるけどつらくはなかったです。何より、当時は無敵の18歳だったので! 

ただ、第1話の山の中での忍者修行(注:忍者養成学校の生徒として、ハリケンジャーになるべく山を登り、岩場や川べりを走っていた)は、さすがに体力的に過酷でしたね。「1年間、こんなことするのかな......」って思ったりはしました(笑)。

──撮影以外で大変だったことは?

長澤 山や森での撮影が多かったので、近くにお手洗いがないんですよ。それで、お昼にトイレまで連れて行ってくれる"トイレ便"という車があったんです。その車に乗りながらお昼のお弁当を食べて、トイレがある場所まで連れて行ってもらっていました。そういう部分での大変さはありましたね。だから、朝は飲みものをいっぱい飲まない(笑)。でも、楽しさのほうが勝っていたなぁ。撮影が終わったあと、撮影所の近くにあったファミレスにハリケンジャー役の3人で集まって反省会をしたり、そうやって絆を深めていきました。懐かしいですね。

──今も印象に残っている撮影は?

長澤 土の中に埋められて、そこからワイヤーで釣り上げられたアクションシーンですね。最近、ハリケンジャー時代の写真を整理していたら、そのシーンの写真が出てきたんですよ。ワイヤーアクションのシーンは、お芝居をしているというよりは体育の授業みたいな感覚でした(笑)。土の外から「行くぞ! 本番だ! 奈央、大丈夫かー?」っていう声が聞こえてきて、私が土の中から「はいー!」って答えるっていう(笑)。

ワイヤーアクションは吹き替えで撮る案も出ていたんですけど、自分からやらせてくださいと申し出て、吹き替えなしで演じることになったんです。自分の意思を撮影現場で伝えられるようになったのは、あのシーンがきっかけかもしれません。

──ほかにも、転機になったようなシーンはありますか?

長澤 私が演じた七海が、山本梓ちゃん演じる敵役のフラビージョとアイドルユニットを組んだ回(注:第30話「アイドルと友情」/敵組織のジャカンジャを追放されたフラビージョがある魂胆から、演歌アイドル歌手・野乃ナナとしても活動している七海に接近。その様子を目撃したナナのマネージャーが、フラビージョとアイドルユニットを結成することをナナに提案し、BIJYOCCO 7というデュオが誕生した)です。

敵だけど似た部分があるフラビージョに共感して、信じて、彼女のためにもと思ってアイドルユニットを組んだのに、最後は裏切られる。それぞれの感情をしっかり表現し、心が大きく揺れ動く様子を演じられたことで、初めて自分の芝居に自信が持てました。七海としても、長澤奈央としても成長できたと思います。

──そのときの成長を噛み砕いて表現してもらうならば?

長澤 初めて「演技と向き合えた」というか。撮影現場にはすごく怖いカメラマンさんがいたんですけど、私はそのカメラマンさんにずっと怒られっぱなしだったんですよ。でも、今話した七海の感情が大きく揺れ動く回の撮影のとき、「今、奈央の気持ちがしっかり出来上がっているから、早く撮影を進めよう」って言ってくれて。いつもは「それじゃダメだ!」って怒られていたので、すごくうれしかったし、その言葉をもらったことで、これが演技と向き合うということなんだ、自分は演技と向き合えているんだという自信につながったんです。

──演技と向き合えたと言えるということは、それだけ魂を込めた演技ができたということですよね。「ハリケンジャー」が、役者としての長澤さんに大きな影響を与えていることが伝わってきます。

長澤 演技以外にも、役者として現場に立つ姿勢や上下関係などの立ち居振る舞いまで、すべてをイチから教えてもらったと思っています。そういう現場で1年間やりきることができたんだから、もうできないことはないと思えるようにもなりました。可能性は無限大で、次はどんなことができるかなって。

それと、同じハリケンジャーを演じた2人と作品を通して絆を育んだことで、今も続く自分の仲間、同志ができました。歳を重ねてもいろんな意見が言い合える、そんな仲間がいるってとても素敵なことだし、「ハリケンジャー」には本当に感謝ですね。

──同じハリケンジャーを演じたキャスト以外にも、敵役だった山本梓さんとの交流も続いていると伺っています。

長澤 梓ちゃんは敵役だったけど仲が良くて、今でも連絡を取り合って会ったりします。「ハリケンジャー」の撮影をしていた当時、泊まりロケで一緒にお風呂に入ったりもしていました。そのとき、梓ちゃんと一緒にお風呂場で騒ぎすぎて、私たち2人の服を女性スタッフさんのいたずらで隠されたこともあるんです(笑)。脱衣所に行ったら、「服がないー!」ってまた2人で大騒ぎしたんですけど(笑)。

──スーパー戦隊シリーズは、現在も続いています。長く愛される理由は、どこにあると思いますか?

長澤 私が感じているスーパー戦隊シリーズの魅力は、諦めない心、仲間の大切さ、挫折から立ち上がる強さを教えてくれること。今も子どもと一緒にスーパー戦隊シリーズを見て、自分も一緒にそれを学んでいる感覚です。そんなスーパー戦隊シリーズに、いつか女性指揮官のような役で帰りたい。それが、今の女優としての私の目標になっています。

──そして今年は、「ハリケンジャー」の20周年記念イヤーです。

長澤 10周年のときは『忍風戦隊ハリケンジャー 10YEARS AFTER』という作品を制作させていただいたんですけど、今年もキャスト陣で私たちにしかできない面白い企画を考えています。楽しみに待っていていただけたら!

●長澤奈央(ながさわなお)
1984年1月5日生まれ、東京都出身。『忍風戦隊ハリケンジャー』の放送20周年を記念して、第1話の公式ビジュアルコメンタリーが『東映特撮YouTube Official』で公開中!