『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。
4月15日より公開される映画『ニワトリ☆フェニックス』で監督を務めるかなた狼(おおかみ)さん、主演を務める成田凌さんが登場。おふたりの関係性、今作に込めた思いをたっぷりと語ってもらいました!
■映画館で初めて見たのは『ジョーズ』(かなた)『スパイダーマン』か『踊る大捜査線2』(成田)
――初めて映画館で見た作品はなんですか?
かなた 映画館で初めて見たのは『ジョーズ』(1975年)。やっぱり、あの衝撃はすごかったですね。だってスクリーンがあるというよりも、でっかい水槽があって、そこにでっかいサメがいるのかと思いましたから(笑)。
――それほどの衝撃だったと(笑)。成田さんはどうですか?
成田 映画館で最初に見たのは『スパイダーマン』(2001年)か、『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年)ですね。『踊る大捜査線』で深津絵里さん演じる刑事が銃で撃たれるシーンがあって、家に帰って風呂でそれをまねして演技の練習みたいなことをしていた記憶があります。
――さすが俳優ですね!
成田 子供ながらに出演している俳優さんたちのことを「演技をしている人たち」として見ていたんですよね。「自分もやったら泣けるかな?」って思って、風呂で泣く演技の練習をしてましたね(笑)。
――それで泣けちゃうわけですもんね。俳優・成田凌の原点という感じがするエピソードです。
■影響を受けたのは永瀬正敏さん(成田)『七人の侍』や『仁義なき戦い』(かなた)
――では続いて、今のお仕事を始めてから、影響を受けた作品はありますか? 影響を受けたり、カッコいいと感じた監督や俳優でも。
成田 カッコいいというと俳優の永瀬正敏さんですね。永瀬さんが出演している映画だったら、『ミステリー・トレイン』(1989年)が特に好きですね。
――どんなところに刺激を受けましたか?
成田 役のカッコよさもあると思うんですけど、永瀬さん自身のスタイルがあって、それが完全に永瀬さんのカッコよさになっているというか。お芝居としても役としてもまねしたくなるんですよね。永瀬さんが映画の中で着ていた服をまねしたくて、帰り道に古着屋に直行したり(笑)。
――大好きじゃないですか(笑)。つまり、役を演じている永瀬さんがカッコよすぎるから、それを演じたくなるというか。
成田 そうですね。役もご本人もどっちにも憧れます。永瀬さんに限らず、昔から僕は作品そのものというよりも「作品の中の誰々のあのシーンがいい」という感じで映画をずっと見ているかもしれないですね。
――監督はどうですか?
かなた 衝撃を受けた作品という意味だと『パルプ・フィクション』(1994年)ですね。あと、最近見直して、あらためてすごいなと思った作品は『七人の侍』(1954年)や深作欣二監督の『仁義なき戦い』シリーズ(1973~76年)です。
『七人の侍』のクライマックスの雨のシーンはもちろんCGじゃなくて人力でなんですけど、「もう二度とこんな撮影できないやろな」と思うほどすごい。でも、だからこそ、人間の熱量みたいなものがこもった作品を撮りたいなという気持ちもいっそう強まりましたね。
■禁じ手を使った最新作『ニワトリ☆フェニックス』
――前作『ニワトリ★スター』(2018年)に続き、このたび『ニワトリ☆フェニックス』が公開となります。成田さん演じる星野楽人(らくと)は前作で死んでいますが......。
成田 そもそも続編なんですか?(笑)
かなた 凌はどう思ってんねん(笑)。でも、それこそ『仁義なき戦い』シリーズの川谷拓三さんなんて、前作で死んでも次作で普通に出てくるじゃないですか。あの感じがすごく寛容でいいなと思っていたんですよね。
――成田さんは川谷拓三さんなんだ(笑)。
かなた 死んだはずなのにまた演じるのって、どういう精神状態なのか僕にはわからないですね。
成田 別に何も思わなかったです。自分よりも周りの人のほうが気にしてますね。「続編やるんでしょ? 死んだのに!?」って(笑)。
――別に何も思わなかったってところが楽人っぽいですよね!
成田 それが映画のよさでもあると思います。
――『ニワトリ』シリーズは井浦新(あらた)さん演じる雨屋草太と楽人の関係性が魅力ですが、成田さんは前作の撮影前に新さんと共同生活をしたというお話も聞きました。新さん、そしてかなた監督との関係性はいかがでしょう?
成田 監督と新さんとの関係性がすべて。それだけだと思います。作品としては「ありがとう」というテーマで作っていて、それをいろんな人に伝えるためにたまたまこのカタチになったんですよね。今回のテーマである「ありがとう」というところが伝わればいいなと思います。
――かなた監督はいかがですか?
かなた コロナ禍が始まっていた2020年4月に、新と凌と僕の3人でリモート短編を作って。そこで「もし楽人が生きていたなら」という世界を描いたんですよ。そのタイトルが「ありがとう」でした。「楽人が生きている」という僕らの中の禁じ手を使ってしまって(笑)。それなら新作を撮ろうかという話になりましたね。
――ずばり、『ニワトリ』シリーズは今後も続いていきますか?
成田 これをやっちゃったら、いくらでもできますよね(笑)。海外だって行けちゃうわけですし。
――江戸時代に行ってもいいし、アクションをやってもいいですもんね(笑)。
かなた もう『男はつらいよ』シリーズみたいな感じでやりたいですね(笑)。
成田 そのたびに僕は髪の毛を赤くします!
かなた そういう寛容さというか、くだらなさみたいなものも映画のよさだと思うんでね。あれダメ、これダメという世の中ですけど、『ニワトリ☆フェニックス』を見て、「こんな感じでいいんだ」と思ってもらえたらうれしいですね。
●成田 凌
1993年生まれ、埼玉県出身。2013年よりファッション誌『MEN'S NON-NO』の専属モデル。14年に俳優デビューして以降、映画やドラマ、CMの最前線で活躍中
●かなた狼
1971年生まれ、大阪府出身。元板前。映像作品の原案や監督、音楽家、大阪黒門市場の巨大アート建物「道草アパートメント」のオーナーなどボーダレスに活躍中
■映画『ニワトリ☆フェニックス』4月15日(金)より全国順次公開予定