元乃木坂46・井上小百合の映画初出演作『ラストサマーウォーズ』が7月1日(金)より全国で公開される。埼玉県入間市を舞台に、小学6年生の映画好き少年が、想いを寄せる女子をヒロインにした自主映画を製作すべく奮闘する青春ストーリー。今作で、子供たちを見守る担任、土方先生を演じた井上に話を聞いた。

――まずは、映画出演が決まったときの感想を聞かせてください。

井上 素直にうれしかったですね。そして地元の埼玉で撮影できるということで、自分にとってもすごく思い入れのある作品になりそうだなと感じていました。

――脚本を読んだときの印象はどうでした?

井上 コロナ禍で自分のやりたいこととか、夢を諦めざるをえない人たちが多い中、自分の中の"好き"という感情を大事にする気持ちの重要性を感じた作品だったので、とても感銘を受けました。


――今回の作品から学んだことはありますか?

井上 子供たちが自分の夢や憧れにまっすぐに突き進む姿がすごくキラキラしていて素敵でした。それに加えて、周囲の大人たちの在り方も教えてくれる作品になっていると思いました。

私も芸能界を目指そうとしたときに、最初はやっぱり大人たちの反対を受けました。自分のことを思って言ってくれていた、と今は理解できるし感謝もしています。でも、当時、この映画に出てくるような大人たちがいてくれていたら、私の気持ちも少し違ったのかな、と思いました。ただ子供たちが可愛くて楽しいだけの作品ではなく、大人にとっても、子供が考えていることへの「気づき」がある、深い意味がある作品だと思いました。

――先生役を演じてどうでした?

井上 最初は子供たちとの距離感をどうつかんでいこうか戸惑いましたし、子供たちも皆、緊張していましたね。そこで、最初は好きなテレビ番組の話をするとか、そういうところから始めました。でも後半には、他愛ないことでふざけ合ったり、本当に生徒と先生みたいな関係を築けた気がして、すごく楽しかったです。監督は塾講師の経験がおありで、子供たちとの距離感の縮め方について、一緒に考えたり、アドバイスをくださって、本当に助かりました。

――お手本にした先生はいますか?

井上 私はすでに中学の頃から仕事をしてたので、あまり学校生活を味わっていないんですよね。なので、こういう先生は自分の中の理想です。

大人だから、子供だからではなく、もっと距離の近い、同じ目線で考えてくれるような先生が理想的だなって。だから、演じながら子供たちに対しては、なるべく対等でいようと思いました。それにキャラクター自体、まだ2年目の新米教師で、仕事に馴染めない感じや、ちょっとドジな面もあったりするので、自然体でいることを意識しました。


――井上さん自身と共通点はありました?

井上 自転車でダッシュするシーンが多くて、すごい形相で漕いでるんですけど、わりと私も普段からそんな感じです(笑)。完成した映画を見たら、入間の風景と自転車で走る街並みがとてもきれいに描かれていて。何回もテイクを重ねて撮ったシーンなので、頑張ってよかったなと思いました。

――映画初出演となりますが、舞台と映像の違いってありますか?

井上 舞台の場合は、後ろの席のお客様にまでどう伝えるかを考えるんですが、映像では過剰な表現になることもあるので、そぎ落とす作業に苦労したこともありました。そのために、できるだけ自然体でいようと心がけていましたね。寝坊のシーンでも、瞬きの回数を意識したり、髪をくしゃくしゃにしながら焦りを表現したり、舞台とは違う繊細な仕草を自然な感じで入れたりしてみました。

――撮影現場で印象に残っているエピソードは?

井上 子供たちがとにかく可愛くて、それだけでも毎日癒されていたんですけど、「やっぱ、このコたち、プロだな」と思った瞬間があって。物語の中で、子供たちがカメラマンさんや照明さんを演じるシーンがあるんですけど、誰に教えられたわけでもないのに、その動きの流れや仕草を熟知していていたんです。うわァ、このコたちは普段から周りの人たちのことをよく見てるんだなって。自分もそうやって見られていると思うと、気を抜いていられない......と緊張しました(笑)。


――宮岡監督はどんな方でした?

井上 とても柔らかい印象で、強い指示ではなく、どんどん褒(ほ)めてくださる方だったので、私はすごくやりやすかったです。でも、映画に対しての情熱にあふれていて、今回の主人公の陽太君が大人になったら、こんな映画監督さんになるんだろうな、と思いました。

――井上さんの出身県でもある埼玉で撮影したことに対してはどうですか?

井上 私、本庄市出身で、同じ埼玉県なのに、実は入間には初めて行ったんです(笑)。都心からのアクセスもいいですし、自然も豊かで、都会の雰囲気と自然のいいところが両方味わえる町ですね。映画をご覧になる方もきっと埼玉のきれいな自然を楽しんでいただけると思います。子供たちも「いつかここに家を建てたい」と言っていたぐらい、とても居心地が良かったですね。

――いつか地元の本庄でも映画を撮りたい?

井上 やってみたいですね。本庄は川がすごく多くて、私も子供の頃、よくサワガニやザリガニを捕まえていたぐらい自然が豊かなんです。戦争で空襲を受けていないからか、古い建物がたくさん残っている街で、蔵を再利用したカフェや素敵なお店も多いので、そこで撮影ができたらなと思います。

――夏休みの思い出ってありますか?

井上 自然の中で育ったので、野生児みたいな感じだったんですね。ひとつ上のお兄ちゃんと一緒にセミや魚を捕まえたり、野鳥を見に行ったり。一回、夏休みの宿題でセミの抜け殻を大量に集めた工作を提出したら、先生にドン引きされたこともありました(笑)。いわゆる学校のお勉強は全然やらないけど、自由研究だけはめちゃくちゃ熱心に取り組むタイプでした。


――映画の見どころは?

井上 まずは入間が舞台になってるので、その魅力を全国に発信できたらなって。そして出演者も埼玉出身の方が多いですし、同じ地域で育ってきた人たちが力を合わせて、地元で一緒に仕事ができるというのが、すごくうれしかったですね。

――埼玉の魅力も伝わると。

井上 そうですね。あとはコロナ禍で、次の時代を作っていく若い世代の方々が今、とても生きづらくなっているように感じることがあります。でも、自分の好きなものや憧れを大事にする気持ちは、常にちゃんと持ち続けてほしいと思います。この映画には、そんなメッセージも含まれている気がします。

夢を諦めてしまいそうだったり、壁にぶち当たっている大人たちにも、きっと刺さる作品になっていると思います。子供を持つ親御さんにとっても、子供たちへの向き合い方が学べるような物語だと思うので、老若男女、より多くの皆さんに見ていただきたけたら嬉しいです!

■井上小百合(いのうえ・さゆり)
1994年12月14日生まれ 埼玉県出身 
〇2011年、乃木坂46に加入。グループ在籍時から多くの舞台に出演。
7月6日(水)から放送されるドラマ『みなと商事コインランドリー』(テレビ東京)に出演。25日(月)からはミュージカル『BE MORE CHILL(ビー・モア・チル)』にも出演。また、17年より自身の出身地・本庄市の広報観光大使、はにぽんアンバサダーを務める。
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