小学生の頃からファン歴15年。お笑いトリオ「ロバート」を真っすぐ追っかけ続ける"ホワイトストーカー"篠田直哉氏。中学時代、ロバートのライブ中にメモを取っている姿をメンバーの秋山竜次氏に発見され、「メモ少年」と名づけられた。それ以降、ロバート界隈(かいわい)では知られた存在に。
大学卒業後、ロバート愛が高じて、名古屋テレビ(メ~テレ)に入局。昨年には、秋山氏扮(ふん)する企業レスキューコンサルタント・沖田義盛の一日を追ったドキュメンタリー番組『低迷するテレビ業界 ~沖田コンサルの奇跡~』を制作し、YouTubeで公開された秋山氏との対談動画は590万回再生(7月4日時点)を超える大バズリ。
このたび、そんな「メモ少年」の人生を記した書籍が刊行された。"推し"を推し続けるとはどういうことか。著者を直撃した。
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──書籍を出された経緯は?
篠田 昨年、メ~テレでロバートさんの番組を作らせていただきました。その番組のスピンオフ企画として、YouTubeで秋山さんと対談をさせていただき、「演出の僕と出演者の秋山さんは、もともとファンとタレントの関係だった」と話したら、その動画がものすごくバズりまして。
多くの反響をいただけて、そのなかで「そのお話、本にしませんか?」とまさかのオファーをいただきました。
──書籍を出すことについて、周りはどのような反応を?
篠田 ロバートが好きだと小学生の頃から周りに言っていたんですけど、「まさか篠田じゃないよね?」と思って見たら僕だった、と驚く人がけっこう多くて。ほかにも、お笑いナタリーで僕の写真が出てきてびっくりしたみたいな(笑)。
会社の先輩からも「先生」と呼ばれていじられるようになりましたね。カタチはさまざまですが、いろいろな人が祝ってくれました。
ロバートの馬場(裕之)さんと(山本)博さんはSNS上で「おめでとう」「楽しみにしているよ」と言ってくれました。秋山さんには別件でお会いした際に「昔からヤバいやつだと思っていたけど、本を出すのはさすがにヤバすぎるよ」と優しくツッコんでいただきました。
──本を作るためのインタビューは30時間にも及んだとか。
篠田 基本的にロバートさんのことを話していたので、僕は楽しかったですが、編集者の方は大変だったと思います(笑)。おかしかったのは僕の人生を話しているのに、気がついたらすべての話がロバートにつながっていること。「この頃はこのネタに影響されて、こういうことをやり始めました」みたいな。
例えば、小学生の頃にはクラスに「トゥトゥトゥサークル」をつくりました。独特のリズムに合わせてしゃべり続ける、ロバートのコントに出てくる不思議なサークルです。僕はロバートファンとして、トゥトゥトゥサークルをつくるのは普通のことだと思っていたんですけど、どうやら違ったらしいです(笑)。
大学のサークルもロバートさんの影響で決めました。あるトークライブで「フラッシュモブは外国の人が楽しむものであって、日本でやる文化じゃない」と秋山さんが話されていて。僕もそれを味わおうとフラッシュモブサークルに入りました。
こんな感じで自分の人生を語ると必ずロバートさんの話に脱線していって......。それが30時間もかかった理由です(笑)。
──大学時代には秋山さんのお父さまのハンバーグ店「ファンキータイガー」でバイトをして親交を深められたとか。
篠田 そうなんですよ。地元・大阪から大学進学を機に上京する際、お金がないという話をしたら、「うちの店を手伝いに来いよ」と言ってくださいました。
あと、大学生活では「ロバートさんを呼べるかも」と思って学園祭の実行委員になり、実際にロバートさんのライブを開催できたんですよ。3000人もの人が来てくれたんですけど、そのライブでロバートさんが僕をステージに上げて紹介してくれて。まさに夢のようでした。
──別のライブでは博さん役として秋山さん、馬場さんとコントをしたとか。大勢の人の前に出るのは緊張しませんか?
篠田 もちろん緊張はするんですけど、ロバートさんの布教のためなら前に出られるタイプです。恥も捨てられるというか、「ロバートさんがやっていることが恥ずかしいわけない」という感覚は昔からありましたね。
──そもそもロバートさんのどこに魅力を感じていますか?
篠田 一般的に、構成を立ててからどこでボケるかを計算していく芸人さんが多いと思いますが、ロバートさんはやりたいボケをひとつ決めたら、それを強引に広げてコントを作っていく珍しいタイプです。本当にやりたいことをまずはやってみる、というところが魅力です。
──そんなロバートさんとモノ作りをしたいという思いでメ~テレに入局された篠田さん。2年目には若手ディレクターとして局のYouTubeチャンネルを任され、秋山さんにも出演していただけたんですよね。
篠田 『テレビ局の生活』という局員の生活を紹介するチャンネルを任されました。そこで秋山さん演じるテレビプロデューサー・唐沢佐吉というキャラクターを絡められるかもと思い、依頼したら出演していただけて。
反響があったおかげで、沖田義盛という企業コンサルタントのキャラクターでも番組を作れました。冒頭でも触れましたが、秋山さんとの対談動画が予想外にバズってうれしかったです。
──秋山さんだけではなく、ロバートの3人を生かせるような企画が今後の目標とのことですが、企画案はあるんですか?
篠田 もちろん、あります。でも、ロバートさんに提案するまでは言えないですね(笑)。秋山さんがやりたいけど、どの局でもできないような狭い企画をやりたいと思っています。
──最後に、全国のオタクの方々にアドバイスを。
篠田 全然アドバイスできるような立場ではないですが......。なんの役にも立たないと思っていたメモや、好きなだけでやっていたことが偶然良い結果につながることもあります。僕は本当に運が良くて、人にも恵まれてここまでやらせてもらっているだけです。
本を書く上で何かメッセージを込めたつもりは全然なくて、ただただロバートさんの話をしていただけですけど、なぜか「泣ける」という感想もいただく気持ち悪い本なので(笑)。いろんな方に読んでもらえるとうれしいです。
●篠田直哉(しのだ・なおや)
1996年5月12日生まれ、大阪府出身。メ~テレ(名古屋テレビ)コンテンツビジネス局コンテンツプロデュース部兼イベントコンテンツ部所属。これまでの担当番組は『デルサタ』、『UP!』料理コーナー「ロバート馬場ちゃんの楽楽ごはん」(AD)、単発特番『唐沢佐吉のメ~テレ大爆発TV!!』『ロバート秋山の虚構ドキュメンタリー』(企画・演出)など。現在は、『BomberE』(隔週火曜、深夜0時57分~、愛知・岐阜・三重の東海3県で放送)のディレクター、『LET'S HOT EVENT パパラピーズ』(毎週火曜、深夜1時29分~放送)のプロデューサーを務める
■『ロバートの元ストーカーがテレビ局員になる。~メモ少年~』
東京ニュース通信社 1760円(税込)
お笑いトリオ「ロバート」にほれ込んだ少年が学生時代、青春のすべてをロバートにささげ、新卒でテレビ局に就職し、ディレクターとしてロバートと番組を制作するまでに至った15年の軌跡をまとめた一冊。ロバートのマネジャーになるため進学校を目指して猛勉強したり、大学の学園祭実行委員になってロバート単独ライブを開催したり。その行動力と実現力、そして推しへの愛は、お笑いファンのみならず、推しを持つすべての人に刺さるはずだ