いつもはあまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していく連載コラム『グラビアの読みかたーWPBカメラマンインタビューズー』が、『週プレ プラス!』にて好評連載中だ。
"カメラマン側から見た視点"が語られることで、グラビアの新たな魅力に迫る。週プレに縁の深い人物が月一ゲストとして登場し、全4回にわたってお送りする。
第8回目のゲストは、週プレ名物・創刊53周年スペシャル企画「NIPPONグラドル53人」などの大人数グラビアには欠かせないLUCKMAN(樂滿直城)氏が登場!
明るく現場を盛り上げる意識のほか、えなこ扮する『ONE PIECE』キャラクターのコスプレグラビア『PRINCESS』や週プレで初水着グラビアに挑戦した大型新人・吉田あかりの『2022年のヒロイン。』などの撮影裏話も聞いてみた。
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――早速、カメラマンになるまでの経緯をお聞かせください。学生時代は何をされていたんでしょうか?
LUCKMAN ほぼ男子校の工業高校に通う普通の高校生でした。部活動やスポーツは特に何も。バイクが好きだったから、学校終わりはひたすらガソリンスタンドでアルバイトをしていましたね。あとは、高校在学中に単車の免許を取っていたので、乗り回して遊んだり、本当はダメだったけど、学校の近くまでコッソリ単車で通ったりもしていました。
――バイクがお好きだったんですね。何かきっかけがあったんですか?
LUCKMAN いや、単純にカッコいいなぁって(笑)。中学生の頃に流行っていた『ビー・バップ・ハイスクール』のようなヤンキー漫画から影響を受けた部分もあると思います。ちょっとヤンチャなことに憧れていたというか。
――では、学生時代はカメラとの縁もなく?
LUCKMAN いま思い返すと、中学時代に「写ルンです」ブームがあって、よく学校に持って行っては、ロックバンドのジャケ写を真似て、友達をパシャパシャ撮っていた記憶はありますね。ワクワクしながら現像に出すものの、全然ちゃんと写っていなくて。
でも、そこでさらに写真を突き詰めようと思うこともなく、ただ撮ることだけを楽しんでいた感じです。その後、スーッと「写ルンです」ブームが過ぎ去ってからは、カメラに触れることも無くなりましたしね。
――学生時代に"写真を撮る"といっても、ブームにあやかった遊び感覚だったんですね。そのような学生時代から、どうカメラマンへの道に繋がっていくんでしょう。
LUCKMAN 高校卒業後に建設関係の仕事に就いたんですけど、あるとき怪我をして現場に行けなくなり、内勤の仕事しかできない僕の代わりに、他の人が現場に行くようになったんですね。それを見たときに、ふと「ここは自分がいなくても大丈夫なんだ」「だったらもっと自分にしかできないことがしたい」と思い、勢いで会社を辞めたんです。
そのあとは、とにかくどこでもいいから海外に行こうと。アメ車も好きだし、アメリカに行けたら最高だなぁと思いつつ、現実的に見るとだいぶお金がかかりそうで、就労ビザも取れそうになかったから、就労ビザが取れそうなカナダとオーストラリアに候補を絞って。
ちょうどその頃、母親が六星占術にハマっていて「南へ行け」と言われたこともあって(笑)、結果的にオーストラリアに行くことになったんですよね。
――かなり思い切った決断ですね!
LUCKMAN 当時19歳にして、一度も地元以外の場所で暮らしたことがなかったし、一人暮らしの経験もなかったから、何も知らない場所で、自分を試してみたくなったんですよね。カッコよく言うと、"自分探しの旅"みたいな(笑)。
それで、オーストラリアに渡って仕事を探していると、新聞広告に、観光写真を扱っている写真館のカメラマンアシスタントの求人が載っていたんです。
「なんかカメラマンってカッコいいな? そう言えば昔、『写ルンです』で写真を撮って遊んだこともあったよなぁ」と、妙にカメラマンの仕事に惹かれて。面接を受けて、そこでアルバイトをすることになったんですよね。
――偶然見つけた求人が、カメラマンになろうと思った最初のきっかけだったと。単なる好奇心が職業に繋がるなんて、"自分探しの旅"としては大成功じゃないですか!
LUCKMAN 観光写真だからグラビアとは全然違いますけどね(笑)。まぁ、僕のカメラマン人生の原点であることは間違い無いです。
――観光写真ということは、オーストラリアに遊びに来た観光客を撮るのがお仕事だったんですか?
LUCKMAN そうです。楽しいアルバイトでしたよ。オペラハウスとハーバーブリッジが一望できるシドニーの岬で、「はい! シドニー!」とか言いながら観光客の写真を撮っていくんです。
当日の夕方、現像に出しては、観光客の人たちが夕食を食べに行っている時間帯に、それぞれが滞在しているホテルに行って、バーッとあがった写真を配りに行って。アルバイトをはじめたての頃は、そんな写真配達やお金の集金が主な仕事でした。
――そんなサービスがあったんですね。
LUCKMAN 僕が見てきた観光客は、久々の夫婦旅行を楽しむおじいちゃんおばあちゃんや、新婚旅行を楽しむ若いカップルなど、一生に一度あるかないかの旅を楽しんでいる人たちがほとんどでした。
まだデジタルカメラもない時代。自分の撮った写真が、"すてきな1日の思い出"として誰かの家のアルバムに残っていくんだなぁと思うと、ますますカメラマンのお仕事が魅力的に見えてきちゃって。
そう思っていると、アルバイトをはじめて3~4ヵ月経ったタイミングで、僕がアシスタントにつかせてもらっていた日本人のカメラマンさんが実は不法滞在だったとバレて、急遽日本に帰ってしまったんです。「仕方ない。カメラマンひとりいなくなったから、お前やれ!」と、一気にカメラマンに昇進することになってしまって(笑)。
――いきなり夢が叶ってしまったんですね。アルバイトをはじめるまで、ほとんどカメラに触れていなかったことを考えると、無茶振り感は否めませんが(笑)。
LUCKMAN それでも、アシスタントを通して"写真で生きていきたい気持ち"は固まってきていたので、僕としてはチャンスでもあったんですよ。
当然、プロと呼ぶには知識も技術も経験も足りていませんでしたが、個人的に、街角のポストカード屋さんに並んであるポストカードを見ては、街並みや風景の撮り方を参考にして、パシャパシャとモノクロのフィルムで写真を撮っていましたし、確かに無茶振りとはいえ、何となくできちゃっていましたね。
――カメラ歴3~4ヵ月でお仕事として写真を撮られるなんて、相当スゴいことですよ!
LUCKMAN と言いつつ、ヘマをしたこともありますよ。韓国人のお客さんを撮ったとき、曇り空だったにもかかわらず、ストロボをちゃんとたけていなかったせいで、後ろのオペラハウスが真っ白に飛んじゃったんです。
「さすがにヤバいぞ」と、現像をお願いしている人に相談したら、ほかのネガの写真からオペラハウスだけを切り取って、うまく焼き込んでくれて。どうにか、うっすらオペラハウスが見える感じにはなったんですけど(笑)。
――そんな修復方法があるんですね(笑)。
LUCKMAN それくらい未熟なまま、突然カメラマンとしてのキャリアがスタートしてしまったわけですけど、いくつか仕事をこなすなかで、本格的に写真で生計を立てるにはどうしたらいいか、真剣に考えるようになったんですね。
で、お世話になっていた写真館の人たちに相談したら、「本気でやるんだったら、日本に帰って、東京のスタジオでプロの仕事を見た方がいい」と、ひとりのカメラマンの方からアドバイスをいただいて、さらには、かつてその方が勤めていた六本木のアートセンターというスタジオまで紹介してもらえることになって。
渡豪した当初は「うまくいけば、一生シドニーで暮らすぞ!」くらいの気持ちだったのに、結局1年ちょっとの滞在で帰国しました。日本に戻ると、今度は、地元の福岡から東京に行く資金を貯めるため、コンビニのアルバイトをはじめて、いつしか夜の店長になっていて。
――夜の店長!?
LUCKMAN 一応アルバイトなんですけど、上から「夜は全部お前が仕切れ」と言われて、夜の支配人みたいなポジションになったんです(笑)。何なら、棚卸しまで任されていました。
しかも、めちゃくちゃ万引きの多いコンビニだったので、「万引きを撲滅させて、損害を50万円以内にしたらボーナスをやる」と言われたので、「ヨッシャ!」と思って、全力で万引き犯を捕まえていましたね(笑)。
――将来のためとはいえ、観光写真カメラマンから夜のコンビニ店長兼万引きGメンになるとは(笑)。面白い経歴ですね。
LUCKMAN 頑張った甲斐があったのか、ピタリと万引き犯が来なくなって、僕も無事にボーナス獲得。目標資金だった100万円を1年で貯めて、すぐさま上京しました。そして、オーストラリアで出会ったカメラマンさんに紹介された通り、アートセンターでスタジオマンをすることになったんです。
★LUCKMAN編・第二話以降は『週プレ プラス!』にて配信中! 師匠・渡辺達生氏とともに、アシスタント時代を振り返る。
●LUCKMAN(樂滿直城)
らっくまん(らくまん・なおき)
カメラマン。1976年生まれ、福岡県出身。
趣味=ギター、自粛期間中ピアノも始めました。
カメラマン・渡辺達生氏に師事し、2006年に独立。
主な作品は、井上真央『井上真央 2007』、安倍なつみ『Cam on』、永尾まりや『マブイ!まりや。』、天木じゅん『Jun limited』、菅井友香『フィアンセ』、長澤茉里奈『ポッチポッチ イケナイ・スイッチ』、橋本梨菜『RIRIKOI』、市川美織『PRIVATE』、えなこ『えなこカレンダーブック 2020.4~2021.3』、寺本莉緒『CURIOSITY』など。明るく楽しげなグラビアもさることながら、コスプレなどの作り込んだ世界観でも空間を活かした構図で印象的な絵を作る。
★『グラビアの読みかた-WPBカメラマンインタビューズ-』は
【週プレ プラス!】+コラムにて毎週金曜配信中(会員限定)【https://www.grajapa.shueisha.co.jp/plus】
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