今夏、Netflixで公開された話題作『呪詛』をはじめ、日本以外のアジア産ホラー作品が注目を集めている。そんな"アジアホラー"の魅力とオススメ作品をホラーマニア3人に聞く。

有村 昆さん、ジャガモンド・斉藤正伸さんに続き、登録者数60万人超えのゲーム実況者・柏木べるくらさんのオススメホラーを紹介!

■ゲーム界隈にもアジアホラーの波

私が紹介するのは韓国の『箪笥(たんす)』という作品。主人公である若い姉妹が入院生活を終え、ソウル郊外の一軒家に帰ってくる。そこで、継母と父の4人で暮らし始めるんですが、その家で怖い目に遭うという話です。

これだけだとよくあるホラー映画ですが、この作品には怪奇現象の原因がまったく読めないというミステリー要素もあるんです。

謎が恐怖を呼ぶサスペンスホラー 『箪笥』韓国《日本公開2004年》長期入院を終え退院した姉妹。父、継母と4人で暮らす家に怪奇現象が起き始める。韓国の古典怪談『薔花紅蓮伝』を題材に作られた。メロドラマとしての見どころもあり、韓国では「号泣ホラー」と称され、2009年にはハリウッドで『ゲスト』という題名でリメイクされた ©2003 I PICTURES, MASULPIRI PICTURES & B.O.M. FILM PRODUCTIONS. ALL RIGHTS RESERVED.

怪奇現象の主な原因は幽霊か狂った人間なのですが、この作品はどちらか最後までわからない。夜中に家の中に響き渡る何者かの走る足音は幽霊っぽい。でも、継母が深夜にテレビの砂嵐をただ見続けるシーンは人間がおかしくも見える。

また、家族以外にも、たまたま家に来た客もシンクの下をうごめく真っ黒な女の子を見てしまうんです。つまり、いつ、誰が怖い目に遭うのか予測不可能になっているため、緊張感がある。古い作品ですが、近年の作品にも怖さは負けません。

『箪笥』

続いて紹介したいのは日本公開2003年の香港、タイ、シンガポールの合作映画『the EYE』。主人公が角膜の移植手術を受けて視力を回復するんですけど、そこから霊が見えるようになる話。角膜は移植されてしまっているので、逃げようにも逃げられないという絶望感が最高。

『箪笥』と『the EYE』はどちらも昔の作品で、特殊なCG技術もないし、お金もそれほどかかってないのに、ちゃんと怖いんですよ。きっとそれは演出が優れているから。

子供の頃、少しだけ開いているふすまの隙間を見て、中から誰かが覗いているんじゃないかって怖くなることがありましたよね。2作品ともそういう観客の想像力を掻(か)き立てる撮り方などの工夫で怖く見せている。 

『箪笥』

今回はどちらも古い作品を紹介しましたが、近年のアジアホラーの流れは感じています。ゲーム実況者としてホラーゲームをよくやるんですけど、アジアの作品がちょくちょく評価されるようになってきているんですよ。

台湾の『返校』というホラーゲームなんかはNetflixで映像化されていますし。アジア発のホラー映画もホラーゲームも、今後もっと大きなブームになるかもしれません。

●柏木(かしわぎ)べるくら
76歳のおじいちゃんという設定で実年齢は非公開。2009年から運営している自身のYouTubeチャンネル『べるくら企画』で、ゲーム実況者として活動している