堀越耕平氏の同名コミックが原作の人気アニメ『僕のヒーローアカデミア』(以下、『ヒロアカ』)。待望の第6期シリーズが10月1日(土)より放送されることを記念して、主要キャラクターを演じる声優たちの連続インタビューが実現! 第1弾は主人公の「デク」こと緑谷出久役を務める山下大輝さんが登場する。
■「デクには演じている自分も励まされる」
――『ヒロアカ』のアニメが第6期に突入します。山下さんは6年以上もデクを演じてこられましたが、キャラクターの変化や成長を感じる場面はありますか?
山下 デクはめちゃくちゃ成長していると思います。第5期の時点で100話を超えましたけど、物語が進むほど成長するスピードも著しくなっていて、今でも収録に臨むたびに驚かされます。自分としても彼に負けないくらい強くならなければと思うし、その気持ちは1話からずっと変わらないですね。
――デクのどういったところに成長を感じていますか?
山下 デクは「考えるよりも先に体が動く」というキャラクターで、それが人助けをするヒーローとしての大切な資質になっています。でも、それは同時に弱点でもあるというか。最初はひたすら全力を出すだけで良かったのが、それだけはどうにもならない現実に直面して、徐々に"個性"である「ワン・フォー・オール」という巨大な力をコントロールする術を学んでいく。ここまでの彼の物語だったと思います。
そんな彼の成長に合わせて、僕も100%で大きな声を出すだけではない演じ方を工夫していきました。僕は性格がデクに似ているので、彼の課題が自分の課題に重なって見えちゃうんですよ。思いついたことをすぐ行動に移すところや、一つのことに集中しすぎて周りが見えなくなるところも、「わかるな~」って共感できる(笑)。だからこそ、デクを演じていると声優として学ぶことが多いんです。
――デクは、もともと超人的能力がない"無個性"だったのに、あこがれの存在であるオールマイトから「ワン・フォー・オール」という"個性"を受け継いでヒーローへの道を歩み始めました。その頃から大きく成長した今のデクは、山下さんにとってどういう存在でしょうか。
山下 「ワン・フォー・オール」を受け継ぐときにオールマイトからもらった「君はヒーローになれる」という言葉が彼の原点です。今のデクは、オールマイトにひたすらあこがれていた段階から、自分なりのヒーロー像を模索している最中なのだと思います。そのせいで何度も悩んだり迷ったりするんですけど、いつもオールマイトの言葉を支えに立ち上がってきました。
そうやって常に初心に戻ることで前に進んでいくデクの姿を見ていると、「自分はどうして声優になりたかったのか」という僕自身の原点も思い出すし、「自分も頑張らないと」って励まされます。今やデクは演じている僕も突き動かしてくれる存在ですね。
■「第6期はずっとクライマックスのような雰囲気」
――第6期ではヒーローと敵(ヴィラン)の全面戦争が描かれます。これまで以上の熾烈な戦いが展開していきますが、演じる上での意気込みは?
山下 第6期では、あえて事前に情報を入れず、台本をもらった時点で次の物語を知ってから演じさせていただいています。それは第5期の時点から、「これからただごとじゃないことが起こるぞ」という空気をひしひしと感じていたので、これからの一瞬一瞬の展開を、デクと一緒に感じていきたいと思ったからなんです。
実際、アフレコに入ってからはずっとクライマックスのような雰囲気が漂っています。ヒーロー側だけじゃなく、敵(ヴィラン)側もなにかを削って戦う展開が続くので、僕らも演じていて息をつくヒマがないほどです。もう本当に心がしんどくて、体力的にも精神的にも毎回グッタリします(笑)。
――第6期の最大の敵(ヴィラン)である死柄木弔(しがらき・とむら)は、デクからはどう見えているのでしょう。
山下 第5期で死柄木弔のオリジン(誕生ストーリー)が描かれましたが、あれを客観的に観ると、デクも境遇が違えば、ああなっていたのかもしれないと思うことがあるんです。だから、一概に純粋な悪とは言えない気はします。でも、死柄木弔の力は世の中を破壊してしまうものだから、ヒーローとしては何としても止めなければならない存在であることは間違いありません。死柄木弔はデクにとって、やはり宿敵なのだと思いますね。
――死柄木弔が宿敵ならば、幼なじみの爆豪勝己(かっちゃん)はデクにとってライバルといえる存在ですね。
山下 雄英高校に入学してから、デクとかっちゃんの関係はすごく変わったと思います。以前はいじめられていたこともあって、言いたいことも言えない相手だったんですけど、今では本音をストレートにぶつけられるようになっています。しかも、同級生たちの中で「ワン・フォー・オール」の秘密を共有する唯一の相手にもなりました。どんどん切り離せない関係になっていて、お互い言葉には出さないけど、共に影響し合うライバルというだけでなく、いい友達にもなってきたと思います。
――ちなみに、爆豪を演じる岡本信彦さんとはアフレコで一緒になることが多いと思いますが、2人の関係は?
山下 デクとかっちゃんの関係とは違って、いつも僕がノブさんに癒やされています(笑)。これだけ長くやっていると本当に壁がなく話せるようになっていて、一緒にいるだけですごく安心できますね。でも、最初からそういうわけではなかったですから、それこそデクとかっちゃんみたいに、徐々にいい関係になっていったのだと思います。
■「ヒーローは、ハンバーグ」
――岡本さんのほかにも、麗日お茶子を演じる佐倉綾音さんなど、主要キャストのみなさんとは長い付き合いとなっています。コロナ禍の影響もあって一緒に収録することが難しい時期もあったかと思いますが、最近のアフレコ現場の雰囲気はどうですか?
山下 コロナが本当に大変だった時期は個別に収録することもありましたが、最近は5~6人なら一緒のブースで収録できるようにはなってきました。でも、そもそも『ヒロアカ』って収録の人数がものすごく多いアニメで、(デクが通う)雄英高校ヒーロー科の1年A組だけでもブースがいっぱいになっていました。(2期の)体育祭編のときなんて、もはや入り切らないくらい(笑)。
その頃から比べると、まだ寂しさはありますが、そうやってみんなで和気あいあいとやっていた時期を経ているから、今も一つのチームとしてアフレコに臨めています。最初から今みたいな状況だったら、こういう一体感は生まれなかったかもしれません。このメンバーでやれて良かったとあらためて思うと同時に、みんなそろって収録できる日が来たら、また一緒に笑い合いながらやりたいなと思いますね。
――現場での山下さんはどういった立ち位置なのでしょうか?
山下 僕が率先して引っ張るというわけでは......ないかな。意外と後輩のほうがしっかりしていたりします(笑)。僕の役割はデクというキャラクターにとにかく全力で挑むことだと思っているんですよ。お芝居に全力を注いでいる姿を見て、みんなも全力でついてきてくれる。そういう立ち位置でありたいですね。
――最後に、デクにとっての理想のヒーローはオールマイトですが、山下さんにとってのヒーローとは?
山下 僕にとってのヒーローはハンバーグなんですよ。
――食べ物のハンバーグ?
山下 そうです。実家の近所に「さわやか」という名店があって、そこのハンバーグが子どもの頃から大好きなんです。お父さん、お母さん、さわやかのハンバーグみたいな序列で、僕にとっての親でありヒーローでもあるんです。
――そういえばツイッターのアイコンもさわやかのハンバーグでしたね。
山下 そのくらい自分にとってなくてはならないものです。ヒーローって、人に「頑張ろう」と感じさせる存在だと思うんです。僕は部活の大会とかテストのたびに、「あのハンバーグを食べるために頑張ろう」と思ってきました。今もさわやかのハンバーグが心の支えだし、真剣に「いつも力をくれて、ありがとう」と伝えたい。だから、ハンバーグが僕のヒーローなんです。
●山下大輝(やました・だいき)
9月7日生まれ、静岡県出身。
2012年に声優デビュー。2014年には第8回声優アワード新人男優賞を受賞した。主な出演作品に『僕のヒーローアカデミア』、『弱虫ペダル』(小野田坂道役)、『ポケットモンスター』(ゴウ役)など。最新情報は公式サイトをチェック!