9月に千葉県の幕張メッセにて4日間にわたり開催された日本最大のゲーム見本市『東京ゲームショウ2022』(以下、TGS)。コロナ禍の影響で、実に3年ぶりのリアル開催となった同イベントは4日間で総来場者数13万8192人を集め、盛況のうちに幕を閉じた。
今年は任天堂やソニー・インタラクティブエンタテインメントといったプラットフォーマーは出展していなかったものの、カプコンやスクウェア・エニックス、バンダイナムコエンターテインメント、KONAMI、セガ/アトラスと言った大手ゲームメーカーが多数出展。
それ以外にも、新進のゲームメーカーやインディーゲームメーカーなどが出展していたほか、TikTokやPCパーツのメーカーといったゲーム以外の企業も出展し、幅広いジャンルのブースそれぞれが、趣向を凝らした展示方法で来場者を楽しませていた。
そんなTGSに初出展を果たしたのが、集英社ゲームズだ。同社は今年2月に設立されたばかりのゲームメーカーで、今回は6タイトルのゲームをプレイアブル出展。大手のゲームメーカーに並び大規模なブースを展開したことでも大きなインパクトを残していた。
初出展のゲームメーカーから見て、今年のTGSはどのように映ったのか? 後日、あらためて集英社ゲームズの森通治氏に今年のTGSを振り返ってもらった。
――今回、TGSに出展してみてどのような感想を抱きましたか?
森 来場されたユーザーさんのゲームに対しての熱量が感じられて、日本で一番注目度の高いゲーム見本市だというのは間違いないなとあらためて実感しました。
――今年の展示全体を見まわしてどんなことが印象に残りました?
森 新しい挑戦が比較的に多かったなと思いましたね。たとえば、出展している企業の目新しさもそうです。もちろん、大手のゲームメーカーさんも多く出展していますが、3年前のような日本のメーカーだけが中心となったゲームショウではなく、海外の企業も多く入っていたのが印象的でしたね。
あと、今まではインディーゲームは別館での展示だったのですが、今回は本館側に入ったのも大きな変化だと感じました。そのおかげで、大中小とそれぞれの規模感のゲームが同じ場所に並んでいる感じが、TGSの新しい見せ方になっているのかなと。
――たしかに、インディーゲームへの注目度の高まりを感じさせますね。
森 インディーゲームのエリアが、展示フロアの中で大手企業と地続きにあるっていうのはすごいことだと思うんですよね。業界全体として、インディーゲームをフックアップしなくてはいけないという機運がある、ということだと思います。
――ほかに目についた展示はありましたか?
森 VRを押し出しているメーカーさんが多くて、そこは時代の変わり目を感じさせるような展示になっていて、面白い変化だと感じました。あと、ストリーマーを使ったイベントも面白いと思いました。
――ストリーマーとはどのような人たちなのでしょうか?
森 すごく簡単に言うと、プロゲーマーとゲーム実況配信者の中間のような方たちで、YouTubeだったり動画配信サイトでゲーム実況プレイのライブ配信しています。今では、かなり文化として浸透してきていて、人気のストリーマーが配信を始めると、1万人以上の視聴者がいることもありますね。
今回のゲームショウでは、いろいろなブースがストリーマーによるライブ配信を、イベントとして行っていたのが印象的でした。しかも、それぞれのストリーマーのイベントを、ちゃんとファンが見に来ているんです。
――実況配信のイベントを、ファンは会場まで見にくるということですか?
森 そうなんです。イベントのゲームプレイ自体は、YouTubeなどでも配信しているので、家で見ることもできるのに、わざわざプレイしている現場に来て、そのストリーマーを生で見る。そういったライブ感も含めて楽しんでいるのが、すごく新鮮に映りました。見に来ているユーザーの年齢層もすごく若くて、今の時代は、こういったゲームの広がりが浸透しているんだなと、あらためて実感しましたね。
そういう意味でTGSは、もう単純にゲームを発表するだけのゲームショウではなく、ゲーム業界を取り巻く環境を含めた一連の流れを展示する場所になってきているのではないでしょうか。
――なるほど、今がゲーム業界の新しい転換点なのかもしれないということですね。集英社ゲームズについてもお聞かせいただきたいのですが、出展社として参加した感想は?
森 本当に出展してよかったです。僕らの目的は、新参者のメーカーなので、ゲーム業界に認知してもらうことが何より重要でした。そこで存在感を示せたっていうのが、抜群によかったなと。集英社ゲームズは本気でゲームを作ろうとしている、というのを理解していただけたと思います。
――TGSに出典することには、どのような意味があるのでしょうか?
森 もちろん、業界に対してのアプローチ的な意味合いもありますが、東京ゲームショウは日本最大のゲームショウであるがゆえに、コアからライトまで様々なゲーマーの方たちが来場する。そういった方々の生の反応を見られるのが、何よりもありがたいです。
手厳しい意見もいただきながら、そこは改善点として直すポイントにもなりますし、逆に評判のいいポイントに関しては自信につながります。
――実際、お客さんの反応はいかがでした?
森 今回は、『ハテナの塔 -The Tower of Children-』を中心に、いくつかプレイアブル(プレイ可能な)タイトルを展示していたのですが、すごくポジティブな反応を多くいただけました。
――『ハテナの塔』というワードが出てきましたが、今回の出典タイトルについても、いくつか簡単にお教えください。
森 『ハテナの塔』は年明けの発売を目指している、ローグライクカードバトルゲームです。キャラクターデザインを、週刊少年ジャンプで『ルリドラゴン』を連載している眞藤雅興先生に務めていただいていまして、実は『ルリドラゴン』が始まる前からご協力いただいておりました。
また、『unVEIL the world(アンベイル ザ ワールド)』は配信日未定ですが、すごく期待されているスマートフォン向けの冒険活劇ストラテジックRPGです。こちらは、『荒野行動』などを手がけるNetEase Gamesさんとの共同開発作品となります。キャラクターデザインは、『約束のネバーランド』の出水ぽすかさんに手がけていただいています。
ほかにも少年ジャンプ+作品に登場するヒーローと共に冒険する『キャプテン・ベルベット・メテオ ジャンプ+ 異世界の小冒険』、宇佐崎しろ先生がキャラクターを担当しているスマホゲーム『SOULVARS』の移植版なども控えています。
――キャラクターデザインは特に顕著ですが、集英社ならではという取り組みが並びますね。
森 そうですね。やはり、集英社グループの強みというものは、僕たちの個性として出していきたいと思っています。ただ、それ以外にも独自性の強いゲームも展開していきます。それが、今回展示していた『浮世/Ukiyo』だったり『ONI-空と風の哀歌』だったり、ビジュアル的にも、個性を放つようなオリジナリティあふれるゲームをどんどん制作していく予定ですので、楽しみにしていてください。
――ありがとうございました。最後に集英社ゲームズのこれからの展望をお教えください。
森 今の時代は、個人であったり少人数の開発チームでも素晴らしいゲームを作れる時代になってきました。そういった才能をより大きな規模で商業的にも展開できるようにする架け橋に、僕たちがなれたいいなと思っています。