見たいものが全部詰まっている! インド発「最強の映画」『RRR(アールアールアール)』©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED. 見たいものが全部詰まっている! インド発「最強の映画」『RRR(アールアールアール)』©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

11月、大型映画が日本の劇場をジャックする中、インド映画『RRR(アールアールアール)』が強烈な輝きを放っている。今回、本作の魅力を解剖するとともに、インド映画界の現在をガイド。発展著しいこの国の、エンタメの底力をぜひ体験してみてほしい!

■最先端の「マサラ映画」

10月21日から公開されているインド映画の超大作『RRR』の勢いが止まらない。同作の配給を手がける株式会社ツインの担当者はこう話す。

「公開初週の土日には洋画興行収入第1位を記録しました。公開4週目に入ってから、ほかの大作映画が封切られたことで公開館数は減りましたが、熱はまだ冷めておらず、都内の劇場ではむしろ満席が続出、見られない方が出るほどの状況になっております。

おかげさまで現時点(11月16日)の累計興行収入は2.3億円を超えました。日本で公開されたインド映画では史上最速のペースです」

ちなみに日本で上映されたインド映画の中で過去最高の興行収入を記録したのは『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1998年公開)の約4億円。『RRR』がそれにどこまで迫れるか、注目されている。

「本作のド派手なアクションや、劇中歌『ナートゥ・ナートゥ』にキレのあるダンスシーン(通称・ナートゥダンス)は、大スクリーンと高音響でご覧いただけるといっそう楽しめます。浴びるような映画体験を、ひとりでも多くの方に味わっていただきたいです」(担当者)

『RRR』のイメージカット。この映画の神話の一場面を思わすような「キマっている」画の連続に陶酔することしきり©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED. 『RRR』のイメージカット。この映画の神話の一場面を思わすような「キマっている」画の連続に陶酔することしきり©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

『RRR』のヒット要因について、インド映画とヒンドゥー音楽に詳しい映画評論家のバフィー吉川氏はこう話す。

「ふたつあると思います。ひとつはラージャマウリ監督の前作『バーフバリ』2部作のヒットで増えたファン層が、そのままスライド式に今作の人気を支えていること。

実は『RRR』の製作が発表された頃から、『バーフバリ』ファンの方々が継続的にSNSなどで話題にし出しており、その熱量が一般にも浸透した、と考えられるでしょう」

『バーフバリ』は古代インドの架空の王国を舞台にした史劇。その第2部『王の凱旋(がいせん)』(2017年)は日本でも興行収入2.5億円を超えるヒット作となった。『RRR』は、当時のファンを維持しながら、雪だるま式に客を増やしているのだ。

「もうひとつは、作品自体のクオリティの高さです。大英帝国の植民地下にあった1920年頃のインドを舞台に、圧政を敷く権力者に対してふたりのヒーローが立ち向かう王道のストーリーや、昨今のハリウッドでもなかなか見られない派手なアクションなども大いに魅力的ですが、その上で日本の映画ファンが考える"インド映画らしさ"もたっぷり詰まっていた」(吉川氏、以下同)

『RRR』©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED. 『RRR』©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

インド映画らしさって?

「いわゆる『マサラ映画』と呼ばれるものです。アクション、コメディ、ラブコメ、ミュージカルなど、たくさんのエンタメのジャンルが合体したような映画を指します」

マサラとはカレーなどに使われるスパイスのこと。インドで取れる多種多様な香辛料を混ぜたやつで、その"ごちゃ混ぜ感"を指して、「マサラ映画」と呼んでいるわけだ。

「日本でヒットした『ムトゥ 踊るマハラジャ』もマサラ映画です。『RRR』はアクションあり、男の友情ドラマあり、動物パニックあり、歌とダンスありと、これもマサラ映画の系譜に連なる一作です。

このジャンルはなんでもアリで楽しいけれど、唐突感のあるミュージカルシーンや勢い任せで整合性の悪い物語など、慣れていない観客が置いてけぼりにされがち。

しかし、近年のマサラ映画は、そういった弱点がない作品も増えてきており、『RRR』はその象徴的な一作。例えば、歌やダンスのシーンは物語に沿うように工夫されていました」

『RRR』©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED. 『RRR』©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

■インド映画流の音楽の使い方

吉川氏によると、以前からインド映画には物語の進行に関係あろうとなかろうと、いきなり登場人物に歌わせたり、踊らせたりすることがよくあったという。

「そのときに使われる曲は『アイテムソング(アイテムナンバー)』と呼ばれます。インド映画特有の用語で、映画製作に音楽レーベルが参加していて、プロモーションとして使えるように挿入するわけです。大きな商業作品となると、たいてい音楽レーベルが絡むので、アイテムソングをゼロにするのは難しい」

ただ、その慣習は残りつつも、近年は"前進"が見られるみたい。

「ストーリー展開を崩してまで入れなくてOK、というふうにレーベル側の意識が変わってきているようです。物語を重視しつつ、適所で使ってください、と。製作サイドは、例えば結婚式や祝い事のような自然に歌えるシーンを入れる、という形で応じています。突発的ではなく理由づけすることが多くなっていますね。

また、『勇者は再び巡り会う』(15年)という作品では登場人物ごとに曲調を変えて、世代間のギャップを表現するなど、音楽の使い方も工夫されてきています。日本人にはまだ慣れないかもしれませんが、音楽自体を楽しめるようになってほしいですね」

確かに『RRR』の"ナートゥダンス"の場面は作品全体のテーマとも調和し、強烈な推進力を生み出していた。

『RRR』©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED. 『RRR』©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

■実は山ほどある「○リウッド」

そういえばインド映画は、「ボリウッド」とか「トリウッド」とかに分類されるって聞くけど、あれはなんなのか解説をお願いします。

「○リウッドというのは、インド国内の映画産業につけられた通称にして"自称"です。一番メジャーなのが『ボリウッド』ですね。これは北インド・ムンバイの映画産業を指します。ムンバイの旧称『ボンベイ』の『ボ』を取って、そう呼ぶわけです。

インドには合わせて22の指定言語がありますが、北インドではヒンディー語の話者が圧倒的多数。なので、ボリウッド=ヒンディー語の映画ということになります」

ただ、『RRR』はボリウッドではない。

「ボリウッドに次ぐ規模を誇る南インドの映画産業『トリウッド』に属します。こちらは西ベンガル州コルカタのトリガンジにちなんだ呼称で、言語はテルグ語が主です。

ボリウッドとトリウッドの作風の違いは、ボリウッドが都市生活に象徴される現代インドの先進性を見せる傾向があるのに対し、トリウッドは地域の伝承・神話を扱うなど、土着感を重視しています。

といっても、これはステレオタイプな見方であって、最近では両者の作品に、そこまで大きな違いはなくなってきたと感じています」

ちなみにインドには、タミル語の「コリウッド」、マラヤーラム語の「モリウッド」、オディア語の「オリウッド」など、各地・各言語ごとに映画産業があり、それぞれがんばっているそうだ。各言語を聞き分けるポイントは......と、それは「入門編」の域を超えてるからカット!

■インド映画ブームは来年が本番!

続いては世界共通の肉体言語、アクションについて。『RRR』のS・S・ラージャマウリ監督は同作について「10分に1度、身を乗り出して熱狂してもらえると思います」と話しているが、その言葉はハッタリではない。

共闘する主人公ふたりの活躍を神話的なシンボリズム増し増しにしたカットや、橋の上からの人間アメリカンクラッカーとでもいうべきアトラクションテイストのレスキューアクションといった前代未聞のシーンもあれば、殴る、蹴る、走る、飛ぶといった肉弾アクションも充実している。

『RRR』©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED. 『RRR』©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

では『RRR』以外のインド映画のアクションはどんな感じなのだろうか?

「インド映画のアクションは、ブルース・リー、ジャッキー・チェンといった中国(香港)映画が根底にあります。『燃えよスーリヤ!!』(18年)という作品では、その影響を前面に押し出した、香港映画オマージュ満載の本格的なマーシャルアーツアクションになっていますよ。

もちろんハリウッド映画を範にしているところも多々あります。前述した『勇者は再び巡り会う』のローヒト・シェッティ監督は、ハリウッドオマージュをちょいちょい盛り込んできますね。

ハリウッドに追いつけ追い越せの映像技術、さらにはインドには肉体派の俳優も多いですから、今後インド映画のアクションはさらに面白くなっていくと思います」

最後にインド映画の今後についても聞いておこう。

「実は今、コロナの影響で公開が延期になっていた大作が渋滞状態なんです。例えば今年はボリウッドがおとなしめだったのですが、来年からボリウッド最大のスター、シャー・ルク・カーン主演のスパイアクション『Pathaan(パサーン)』を皮切りに大作が次々と世界で公開されます。

それに加えて『RRR』がアカデミー賞にノミネートでもされればトリウッドも盛り上がるでしょう。『RRR』は始まりに過ぎず、インド映画の本当の勝負どころは来年だと思います」

配信作品も並行して増えてゆくだろう。

インド映画。この面白鉱脈を見つけたら、しばらく退屈しないで済みそうだ!

『RRR(アールアールアール) 』
監督・脚本:S.S.ラージャマウリ
出演:NTR Jr.、ラーム・チャランほか 上映時間:179分
1920年の英国植民地時代のインド。英国軍にさらわれた少女を救うために立ち上がった「ビーム」と、大義のため英国政府の警察となった「ラーマ」。熱い思いを胸に秘めたふたりの男が出会うことで運命が動き出す! アイデア満載のアクション、ノリノリの歌とキレキレのダンス、そして友情と使命の間で揺れる男たちの絆......。映像のケレン味と物語の勢いに圧倒される映画体験は、179分という上映時間を感じさせないほど特濃!
『RRR』©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED. 『RRR』©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.