『仮面ライダービルド』に出演した高田夏帆
初代『仮面ライダー』(1971~1973)の放送以降、いまなお高い人気を誇る仮面ライダーシリーズ。最新作『仮面ライダーギーツ』も大きな話題を呼んでいる。10月3日に発売された『週刊プレイボーイ』42・43合併号には「歴代仮面ライダーが大集結」と題し、歴代の仮面ライダー女優たちが登場。最新水着グラビアに加え、インタビューを収録し、各々がシリーズへの想いを披露している。

その特集より、歴代ヒロイン4名のインタビューを、4日間連続で週プレNEWSに再掲載。今回は『仮面ライダービルド』(2017~2018)で、石動美空役を演じた高田夏帆さんが登場。石動美空はスマッシュ(怪人)の成分からエネルギーを生成する特殊能力を持ち、主人公・桐生戦兎たちを支える女のコ。ネットアイドル・みーたんとしての裏の顔を持ち、情報収集やカンパなどにも務めている。作品から得たものや当時の心境などを語る。

――『仮面ライダービルド』への出演はオーディションがきっかけだったそうですが、仮面ライダーはご覧になっていましたか?

高田 いえ、まったく。小さい頃はプリキュア派だったので知識ゼロでした。オーディションも事務所から「仮面ライダー(のオーディション)があるから受けてきて」と言われ、「はーい」って特別意識するわけでもない感じで。ライダーは役者の登竜門で応募者が多いと聞いていたので、自分が受かったと知った時は、まさかまさかでした(笑)。ヒロインは台詞は多いし、責任だって段違いに大きい。嬉しいというよりものすごく不安になりました。

――何が合格の決め手になったんでしょう。

高田 後にプロデューサーさんに聞いたら、私は「目が冷めてたから、かえって気になった」って(笑)。例えば「将来の目標」を聞かれた時とか、みんな必死にアピールしていましたけど、私は思い浮かばないから「特にありません」って正直に答えたんです。そういうのを見て「この子は一筋縄ではいかないぞ」みたく思っていただけたんじゃないか、って自分では解釈しています。

高田夏帆さんが演じた石動美空(©石森プロ・東映) 高田夏帆さんが演じた石動美空(©石森プロ・東映)

――力むことなく自然体なのがよかったんですかね。高田さん演じる石動美空は「疲れたし、眠いし、寝るし」が口癖の引きこもり。それでいてぶりっ子のネットアイドルでもあるという複雑なキャラクターでした。役作りはされましたか?

高田 台本を読んで、美空はダウナーなコなんだなと理解したけど、作り込んでは演じられなかったです。監督に「あまり笑わないで」など指摘されながら手探りでやっていきました。みーたんは口調やセリフの言い回しの特訓日があって、そこで土台を作らせてもらいました。でもアイドル口調もそうだし、あとカラフルで派手な衣装が、最初はものすごく恥ずかしくて(笑)。自分の殻を破るつもりで演じましたね。

――特に印象に残っているシーンは?

高田 泣くシーン全般です。美空は歴代ヒロインの中で一番と言われるほど、泣く芝居が多いんですけど、毎回、難しくて本当に苦労しました。中でも15話は忘れたくても、忘れられないです(笑)。

――正体が敵の怪人であったことを主人公・戦兎に見破られ、家から出ていこうとする父との別れのシーンがありましたね。

高田 すごく切ないシーンなんですけど、全然泣けなかったんです。なんとか泣かなきゃと必死になっていたら、今度は待ってくれているスタッフさんのことが気になってきて。

焦りもあるし、申し訳なさもあるし。一時間以上かかってやっと泣けた時は、一体何の涙なのかわからなかったです(笑)。あとビルドとグリス(3人目の仮面ライダー)が対決した時も印象に残っていますね。

――22話。決死の覚悟で戦うビルドを美空が涙ながらに延々と見守り続けるシーンがありました。

高田 あの時は監督にめちゃくちゃ厳しく指導していただいたんです。やはりうまく泣けないでいたら監督に「カットの度に気持ちをリセットするな! ひたすら心を燃やせ!」って。さらに涙を出してもなかなかオーケーが出ない。「モニターで見て心が震えないぞ! 逆を言えば心が震えれば涙なんていらないんだから!」って。

――厳しいですね。

高田 一切妥協がないんです。その分、役へのアプローチの仕方をしっかりと学ばせていただきましたね。その後はしっかりと感情を出すあまり、顔がぐしゃぐしゃで不細工に泣いているシーンばかりになりましたけど(笑)。

高田夏帆

――作中ではグリスがみーたんの大ファンで、目の前にすると普段のクールな姿が一変、メロメロに。でもみーたんはいつもつれない。そんな楽しいシーンが頻繁に盛り込まれていました。

高田 グリスとの掛け合いは、演じた武田航平さんのアドリブがすごかったんですよ。「みーたん、みーたん」言ってくれて。私はそこまでスキルがないからリハでこういうのをやるよって聞いて、本番で私が受ける形。面白すぎて、笑いを堪えるのが大変でした。武田さん以外にもアドリブが飛び交っていて、現場はいつも楽しかったですね。

――キャストみんなの息が合っていたんですね。

高田 特にみんなでポップコーンを食べてながら動画を観るシーンや、夜の屋上でバーベキューや花火するシーンなどアドリブし放題でした。

ビルドはシリーズの中では珍しくキャスト全員が20代で、「大人チーム」と呼ばれていました。私が最年少で21歳。なのでみんな、余裕があったんです。撮影後にはお酒を飲みに行くこともあったし、お互いがリスペクトし合う居心地のよさが現場には漂っていました。今も連絡を取り合うし、いい関係が続いています。

――ちなみに高田さんの事務所公式プロフィールには「全日本忍者選手権大会優勝」と書いてあります。アクションにも自信がありそうですけど、本編でその類のシーンはありませんでしたよね。

高田 そうなんですよ! クランクイン前はやる気満々だったんですけど全然なくて。いつも戦っている男の子たちを羨ましく思っていました。唯一、映画(『劇場版 仮面ライダービルド Be The One』2018年公開)ではアクションをさせていただきましたけど。

――敵に操られる状態になった美空が、秘密基地内で戦兎に襲いかかるというシーンがありました。

高田 最初の打ち合わせの時、監督からスタントさんでいくと言われたんですけど、「全部自分でやりたいです!」ってお願いしました。ここぞとばかり戦兎を激しく攻撃しましたね(笑)。ちなみに変身したいとも言ったんです。一度だけスマッシュ(怪人)に変身したことはあるんですけど、やっぱりライダーになってかっこいい姿を見せたいじゃないですか! いつかスピンオフ作品に出演して、リベンジできたらいいなと密かに思っています。

――『仮面ライダービルド』にご出演されて、得たものはなんでしょう?

高田 たくさんありますけど、一番はお芝居に対する考え方ですかね。小手先だけじゃダメなんだって。心から自分の役柄を愛し、考えて動き、何よりも気持ちを伝えるんだって。その上で楽しさ、悲しさ、切なさ、あらゆるものを一緒に共感してもらう。そこまでの意識は『ビルド』に出演する前にはなかった気がします。

――最後に高田さんにとって『仮面ライダービルド』とは?

高田 その質問、作品が終了する際、何かの取材でも聞かれました(笑)。当時は「学校」みたいな言い方をした気がするけど、なんだろう......。今、改めて観直すと、自分の稚拙さがたくさん目についてしまいます。でもやっぱりあの時にしかできない精一杯のお芝居だったと思うんです。だから、私にとって『ビルド』は、21歳の高田夏帆そのものなんだと思います。

高田夏帆

●高田夏帆(たかだ・かほ)
1996年5月31日生まれ 東京都出身
○NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』に出演し、話題に。阿部真央書き下ろし楽曲『風の唄』をリリースするなど多方面で活躍中。