松田るか
初代『仮面ライダー』(1971~1973)の放送以降、いまなお高い人気を誇る仮面ライダーシリーズ。最新作『仮面ライダーギーツ』も大きな話題を呼んでいる。10月3日に発売された「週刊プレイボーイ」42・43合併号には「歴代仮面ライダーが大集結」と題し、歴代の仮面ライダー女優たちが登場。最新水着グラビアに加え、インタビューを収録し、各々がシリーズへの想いを披露している。

その特集より、歴代ヒロイン4名のインタビューを、4日間連続で週プレNEWSに再掲載。今回は『仮面ライダーエグゼイド』(2016~2017)で、ポッピーピポパポ/仮野明日那役を演じた松田るかさんが登場。ポッピーピポパポ/仮野明日那は作中に登場する音ゲーから生まれた良性のバグスター(怪人)。普段は、看護師の仮野明日那として、主人公・宝生永夢らとともに、バグスターウイルスに感染した患者を救う。作品から得たものや当時の心境、そして仮面ライダーシリーズの魅力を語る。

――小学生の頃から地元・沖縄で芸能活動をされていた松田さん。大学進学と同時に上京されたのは、『仮面ライダーエグゼイド』が放送される2年前の2014年のことです。

松田 お芝居の経験がほぼゼロに近い中、女優を目指して上京しました。最低でも5年は頑張って、ダメだったら沖縄に戻ろうと考えていたので、『エグゼイド』への出演が決まったのは本当に幸運でしたね。

――『エグゼイド』の前に、『仮面ライダーゴースト』(2015年~2016年)のスピンオフ(註)にも出演されていたんだとか?

松田 そうなんです。雑誌『てれびくん』(小学館)の付録DVDに収録された作品に少しだけ。実はこれ、『てれびくん』の編集者さんが、週プレさんに掲載していただいた私の初水着グラビア(2015年8月31日発売号)を見てオファーしてくださったらしいんです。ですから、もとを辿れば、週プレさんのおかげでライダーに出演できたと言っても過言ではないんですよね。

(註)「てれびくん 超バトルDVD 仮面ライダーゴースト 一休入魂!めざめよ、オレのとんち力!!」(2015)

――そ、そんなご縁があったとは! とはいえ、ヒロインのポッピーピポパポ/仮野明日那は松田さんが自らオーディションで掴んだ役柄ですよね。決め手は何だったと思いますか?

松田 アニメ声を出せたことが大きいんじゃないですかね? ポッピーは、作中に登場するリズムゲーム「ドレミファビート」から誕生したバグスター(怪人)。オーディションの時からゲームキャラクターを擬人化した役だとは聞いていたので、渡された台本から私なりに想像して演じたポッピーの感じが、うまくハマったんじゃないかと思います。

松田るかさんが演じたポッピーピポパポ(©石森プロ・東映)松田るかさんが演じたポッピーピポパポ(©石森プロ・東映)

――確かに、松田さんのキーの高い特徴的な声を無くしてポッピーは語れないですよね。

松田 私、特徴的な声がずっとコンプレックスだったんです。でも「私が仮面ライダーのヒロインになれたのは、この声のおかげかもしれない」と思うと、ポッピーという役に巡りあえた喜びを改めて感じるというか。いつしか自分の声が強みに変わっていました。

「ピプペポパニックだよー!」や「ポパピプペナルティ、退場」など「パ行」だらけのセリフも、もとから滑舌が良いので難なく言えていましたし、ポッピーの衣装である高いヒールでも平気で走り回れたので、役作りへの苦労はほとんどありませんでしたね。そういう意味では、われながら適役だった気がします(笑)。

――そもそも『エグゼイド』は、登場するライダーの個性的なビジュアルでも話題になりました。松田さん演じるポッピーも、ピンクのカツラに黄色と緑の衣装と、かなり奇抜ですよね。

松田 歴代シリーズの中でも、飛び抜けて見た目のインパクトが強い作品ですよね。個人的には、そういう常識に囚われない自由なデザインが大好きなんですけど(笑)。実際、序盤から個性豊かなライダーが5人も登場する中、メインの男の子たちに負けず劣らずの存在になれたのは、ポッピーのキャラクターとあの強烈なビジュアルのおかげだと思っています。結果的に、仮面ライダーポッピーとして、自分専用のアイテムで変身する初のヒロインという名誉までいただいて。当初は変身する予定なんてなかったそうなので、お話をいただいた時はビックリしましたよ。

――仮面ライダーポッピーが初登場するのは第26話でした。やはり、当時の撮影は思い出深いですか?

松田 変身シーンを撮影した時、初めてアクションスーツを着させてもらったんです。基本、変身後はスーツアクターさんのお芝居になるので、私たち役者は後から声をあてるだけ。アクションスーツに袖を通す機会なんて、ほとんどないんですよね。変身すること自体が珍しいヒロインなら尚更です。ライダーに変身した私だからできた貴重な体験になりましたよ。

――ポッピーが仮面ライダーに変身する過程として、闇落ちがあります。一時は洗脳により、主人公・宝生永夢たちと敵対。バグスターウイルスから人類を救ってきたナースの自分と、良性とはいえ人々の生命を脅かすバグスターである自分との間での葛藤が描かれるなど、ポッピーの感情に深く触れられるお話が続きました(24話~28話)。

松田 闇落ちするまでは、何より"明るくポップなゲームキャラクター"という存在だったのが、話数を経るごとに、少しずつポッピーの中にある熱い正義感や母性が明らかになって......。そういった脚本や演出が、ポッピーを深みのある愛されキャラに育ててくれた気がしています。

ポッピーに限らず、みんながそれぞれの正義を持って対立する場面が多いのも、『エグゼイド』の見どころのひとつです。敵対しているからといって、片方が正義で片方が悪とは必ずしも言い切れない。子どもたちにどこまで伝わっているかは分からないけど、そんな言葉では説明しづらい感覚が、ちゃんと描かれているんですよね。

――まさに! 『エグゼイド』は「ゲーム×医療」という命の捉え方が真逆のテーマを組み合わせた作品でもありますが、物語を通して、子どもたちにリアルな命の大切さをも伝えていますよね。

松田 ゲーム画面を再現したかのようなポップで独特な戦闘シーンに対して、ストーリーの軸はほぼ医療ドラマ。シリアスな場面は、大人が見てもハッとさせられる内容になっているので、私たちも台本をもらうたびにワクワクしていましたね。伏線回収もスゴかったですし。特に、第1話でみなさんに衝撃を与えたであろうレベル1(註)が終盤で活躍する展開は、私もガチで胸が熱くなりましたよ!

(註)3頭身にデフォルメされたライダーの姿。作中では、戦いに応じてレベルアップし形態を変えていく。

松田るか

――ちなみにライダーの現場は指導も厳しく、時に悔し涙を流す方もいると聞きます。松田さんは?

松田 私は平気でしたね。というより、いちいち凹んでいられなかったです。本当に忙しかった時期は、本編・映画・スピンオフと、台本は常に3本持ち。クヨクヨ反省している暇があったら、セリフを覚えないと追いつかなかったです。

――そうなんでしょうけど、かなり前向きですよね。

松田 歳の近い共演者の方々が常に近くにいてくれたことに加え、ポッピーという明るい役柄に支えられていたからこそ、前向きに頑張れていたんだと思います。本来の私は、根暗で落ち込みやすいですから。今も家の中では、テレビも音楽も流さずに、カーテンを閉め切って過ごしています。ポッピーのイメージからめちゃくちゃ明るい人だと勘違いされがちなだけで、むしろ真逆なんですよね。仕事となると、多少スイッチは入りますけど。

――意外すぎます(笑)。では、改めて聞きますけど、松田さんにとってポッピーとはどんな役だったんでしょう?

松田 「パ行」の訓練の場でした。というのは冗談で(笑)。一言で言うと"甲冑"(かっちゅう)ですね。

――"甲冑"?

松田 どんなにハードな撮影でも、あの衣装に袖を通してピンクのカツラを被った瞬間、「やれるぞ」と強い気持ちになれたので。あの格好で1年間も駆け抜けたんです。役から離れた今でも、当時ポッピーが与えてくれていた勇気や自信は、女優としての私自身に染み付いています。

――なるほど。今年は、東映特撮ファンクラブで配信中の『仮面ライダージャンヌ&仮面ライダーアギレラwithガールズリミックス』で、約6年半ぶりにポッピーを演じられていましたね。

松田 きれいな状態で衣装を保存してくれていたことに、東映さんの愛を感じましたね。指輪やら手袋やら、細々(こまごま)とした小物も全て当時のままで。勝手に領収書の保存期間と同様に数年も経てば処分されていてもおかしくないと思っていたので(笑)、単純にうれしかったです。

それに、懐かしのスタッフさんたちとの再会は安心感しかありませんでした。応援してくださっているファンの方含め、みなさんには絶えず前進している姿をお見せしていたいので、安心感に浸ってばかりはいられないですけど。

――前進というと、来年は生田絵梨花さん主演の『#MEANGIRLS』で初のミュージカルに出演されるそうじゃないですか。

松田 『#MEANGIRLS』のキーカラーも、ポッピーの髪色と同じピンク色なんです。私の役はブロンドヘアですけど(笑)。しかも、九条貴利矢/仮面ライダーレーザーを演じていた小野塚勇人くんとも『エグゼイド』ぶりに共演させていただきます。何だか不思議な縁を感じますね。

――初めての挑戦。緊張はあります?

松田 どちらかというとワクワクの方が強いですね。来年の1月末から約1ヶ月間の上演。風邪も流行りやすい時期ですし、体調管理と喉のケアは念入りにしなきゃと、今から気が引き締まります。まぁ、きっと大丈夫ですよ。超絶ハードなライダーのスケジュールだって最後までこなせたし。いざとなったら、私の中に眠っているポッピーの力を借りて駆け抜けたいと思います。

松田るか

●松田るか(まつだ・るか)
1995年10月30日生まれ 沖縄県出身
○特撮東映ファンクラブで配信中のスピンオフ『仮面ライダージャンヌ&仮面ライダーアギレラ withガールズリミックス』にて、約6年ぶりにポッピーピポパポを演じる。2023年1月より、自身初のミュージカル『MEAN GIRLS』が順次上演予定。