『仮面ライダーディケイド』に出演した森カンナ
初代『仮面ライダー』(1971~1973)の放送以降、いまなお高い人気を誇る仮面ライダーシリーズ。最新作『仮面ライダーギーツ』も大きな話題を呼んでいる。10月3日に発売された「週刊プレイボーイ」42・43合併号には「歴代仮面ライダーが大集結」と題し、歴代の仮面ライダー女優たちが登場。最新水着グラビアに加え、インタビューを収録し、各々がシリーズへの想いを披露している。

その特集より、歴代ヒロイン4名のインタビューを、4日間連続で週プレNEWSに再掲載。今回は『仮面ライダーディケイド』(2009)で、光夏海役を演じた森カンナさんが登場。光夏海は主人公の門矢士(かどやつかさ)が居候する光写真館の主人・光栄次郎の20歳になる孫娘。優しい性格の持ち主で、誰に対しても敬語で接する。士と一緒に9つの仮面ライダー世界を旅し、たくましく成長を遂げる。作品から得たものや当時の心境、そして仮面ライダーシリーズの魅力を語る。

──『仮面ライダーディケイド』に出演する前の森さんは、モデル業を中心に活動されていました。

 『ディケイド』の前に『うた魂♪』という映画に出演させていただいていたんですけど、そこまでシーンがあったわけではないので、お芝居はほとんどやったことがないという状況でした。でも、お芝居に興味があったので、とにかくあらゆるオーディションを受けていたんです。『何でもやってみよう!』という気持ちでした。

──その中の一つが、「仮面ライダーディケイド」だった。

 そうです。でも、オーディションの時の私は監督が言っていることが理解できませんでした。言われていたことが難しかったわけではないのですが、当時の私には言葉の汲み取り方もわからなければ、表現の仕方がわからず、オーディションは『下手こいたぁ......』って感じでした。

だから、合否も気にしていなかったんですよ。もちろん落ちたと思っていたから(笑)なので、うれしいよりもびっくり。そこから、あれよあれよと撮影がスタートして。

森カンナさんが演じた光夏海(©石森プロ・東映)森カンナさんが演じた光夏海(©石森プロ・東映)

──仮面ライダーシリーズについては?

 ほとんど知らなかったです。でも、『ディケイド』は平成仮面ライダーシリーズの10周年記念作で、『ディケイド』以前の9つの作品世界を行き来する内容なので、出演が決まってから過去の作品を勉強しました。

撮影に入って気づいたのは、私が演じる夏海はいろんな仮面ライダーの世界に行って、「ここは何の世界なの?」と驚く立場だということ。なので、むしろ過去作を知らないまま、夏海と一緒に知らない世界を旅をする感覚で演じることを意識しました。

──演技経験がほとんどない中で、どんなことを意識して夏海というキャラクターを作り上げていったんでしょう?

 右も左もわからない状態だったので、本当にゼロからですよね。共演していた小野寺ユウスケ役の村井良大さんに『こういう時はどう 表現をすればいいの?』って聞いたり、監督やプロデューサーに教えてもらったり、何かを意識して演じたというよりも、みんなに助けてもらいながら夏海を作っていった感じです。

──夏海は、繊細だけど芯が強く、行動力がある女性という印象があります。

 いろんなことに翻弄されながら、最初は弱かった夏海という女性がどんどん強くなっていった印象がありました。それは、戸惑いながらもがむしゃらにやるしかないという状況が、自分自身と重なる部分があったからだと思います。 そうして徐々に強くなって、最終的には映画で仮面ライダー(キバーラ)にも変身できて(笑)。

──夏海としての演技を重ねていく中で、苦労された部分は?

 ドラマの撮影と映画(『劇場版 超・仮面ライダー電王&ディケイド NEOジェネレーションズ 鬼ヶ島の戦艦』、『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』、「仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』)の撮影が重なったりもしたので、同時期に台本が何冊もあったりして、そこは大変だなーっていう感じでした。ただ、そういう経験が初めてだから、それが忙しいのかどうかもわからない(笑)。

あとは、苦労ではないんですが、歴代の平成仮面ライダーの世界に行くので、その作品のファンの人たちにがっかりしてほしくないなという想いでやっていました。イベントなどを通して、仮面ライダーシリーズには熱いファンがたくさんいることを徐々に実感していたので、ちゃんと演じないとダメだな、好きな作品を傷つけられた気持ちにしてしまったら嫌だなと。

夏海の祖父役の石橋蓮司さんをはじめ、映画版では大杉漣(『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』に、地獄大使役で出演)さんなど、先輩俳優の方たちも多く出演されていたので、撮影現場では先輩方が立っていたら椅子を見つけて持っていったり、とにかく気配りを忘れないように心がけていました。もともとバスケ部の体育会系なので(笑)。

──作品の中で、特に印象に残っているシーンを教えてください。

森 なんといっても、第1話の爆破シーンです。爆風の中心に立つ経験はもちろん初めてで、そのあまりの迫力にびっくりした記憶があります。

──撮影が進んでいく中での、演技面での転機は?

 特にこれという出来事があったわけではなく、積み重ねですね。積み重ねの中で大きかったのは、孫役として石橋さんとお芝居ができたこと。 何より俳優としての佇まいや言葉に表せない重みを、間近で感じさせていただきました。

第16話と第17話にゲスト出演された、佐々木すみ江さんもかっこよくてシビれました。モデルの世界だと、石橋さんや佐々木さんほど年上の方と共演することはなかったので、新鮮でしたし、すごく勉強になりました。

森カンナ

──演技経験の浅かった当時の森さんが、演じることの楽しさに気づいた作品でもある?

 正直、楽しさにはまだ気づけていなかったと思います。ただ演技として泣いたり、笑ったり、最初はうまくできなかったことがほんの少しでも表現できるようになるとうれしくはありました。

今考えてみると、『ディケイド』は俳優としてデビューしたばかりの私に、その後の俳優人生で克服するべき課題をたくさんくれた作品なんだと思います。始まりの始まりで、いきなりバーンと殴られた感じというか、だから忘れられないですよね。

劇中で旅をしてさまざまな世界を知り、夏海が強くなっていったように、私自身も夏海と一緒に 強くなれた。役を通して成長できる喜びを知った、私の原点です。
 
──人としての考え方、物事の捉え方にも影響はありましたか?

 自分だけじゃなく、みんなで作り上げる大切さは『ディケイド』の現場で染み付きました。夏海が持つものの準備を、撮影の前日からしてくれている人がいる。いろんな人に支えられて立っているのが、今の自分なんだなというか。

──最後に森さんが考える、「仮面ライダー」シリーズが長きにわたって愛されている理由を教えてください。

 何よりスタッフさんの熱量だと思います。仮面ライダーに憧れて、仮面ライダーの制作に携わりたい人も集まっていたり、 現場には仮面ライダー愛があふれている。そういう環境だから、当然キャストも愛を持って演じないと成り立たない。そういう愛がつながっていった歴史が、すごく美しく形になっている。だから、これだけ長く愛され続けているんだと思います。

●森カンナ(もり・かんな)
1988年6月22日生まれ 富山県出身 
俳優。映画やドラマなど数々の作品に出演。現在放送中のTBSドラマ「私のシてくれないフェロモン彼氏」(火曜深夜24:58~)に桃井美織役でレギュラー出演中。また、2023年2月23日(木・祝)公開の映画「湯道」への出演も先日発表された。