ナルト役の竹内順子さん(右)とサスケ役の杉山紀彰(左)さんナルト役の竹内順子さん(右)とサスケ役の杉山紀彰(左)さん
アニメ『NARUTO -ナルト-』の20周年を記念した展示イベント「NARUTO THE GALLERY」が秋葉原UDXにて1月31日(火)まで開催中だ。

2015年の「NARUTO-ナルト-展」以来、約7年ぶりとなる大規模展示イベントの開催に際して今回、うずまきナルト役の竹内順子さん、うちはサスケ役の杉山紀彰さんの特別対談が実現。今もなお続く大人気アニメシリーズの歴史を振り返っていただいた。

■「杉山くんがいないと困る!」

――まず、ナルトやサスケを演じ続けたこの20年は、ひと言で振り返るとお二人にとってどんな時間でしたか?

竹内 ひと言で言うのは......難しいですよね。それだけ密度が濃い、すっごく幸せな時間だったと思います。

杉山 僕としては「もうそんなに経ったのか」というのが正直な実感です。気がついたら、という感じで、すごく長い距離を歩いてきたという感覚はなくて。

この前、ゲームの収録で音響監督の神尾(千春)さんと久しぶりにお会いしたとき、「演者が重ねた年齢と一緒にキャラクターも歳を重ねていく作品っていうのは、本当にありがたいよね」という言葉をいただいたんですが、まさにそのとおりだと思います。

竹内 杉山くん、ひと言じゃありません(笑)。

杉山 ごめんなさい(笑)。

絶賛開催中の『NARUTO THE GALLERY』。入場口のすぐ横では巨大なビジュアルが出迎えてくれる絶賛開催中の『NARUTO THE GALLERY』。入場口のすぐ横では巨大なビジュアルが出迎えてくれる

――お二人の関係性は、この20年で変わってきましたか?

竹内 この作品が初対面だったよね?

杉山 そうですね。

竹内 それから現場でいろいろ話すようになって。猫のことで盛り上がったり。

杉山 お互いに猫を飼っているので、猫友になりました。

竹内 で、原作でわからないところがあると、「今どういう展開?」「この技ってどんなのだっけ?」と杉山くんに聞くのが定番になって。これはみんなそうでした(笑)。

竹内さんが演じる主人公のナルト。作中では落ちこぼれの忍者だったナルトが成長していく姿が描かれている竹内さんが演じる主人公のナルト。作中では落ちこぼれの忍者だったナルトが成長していく姿が描かれている

――それだけ原作に詳しかった?

杉山 いやいや(苦笑)。僕は毎回、収録前に原作を読み直していたので、たまたま覚えていただけなんですよ。それがいつの間にか、僕が詳しいやつっていう空気になって。細かいところまで聞かれて困りました。

竹内 途中でサスケが長期離脱したときなんか、「杉山くんがいない!」ってみんな困っていましたからね。

杉山 けっこう長い期間いなかったですからね。

竹内 そんな感じで、杉山くんとはどんどん仲良くなっていきました。

竹内順子

■「竹内さんは天才肌」

――杉山さんから見た竹内さんの印象は?

杉山 竹内さんは音響監督からの信頼がものすごく厚い方でした。これは最初からで、「じゅんちゃんは大丈夫だから任せたよ」という感じだったんです。僕はアニメシリーズのレギュラーは初めてだったので、同じ年代の役者さんとして、竹内さんの安定感がすごく印象に残っています。

竹内 今の言葉、そのまま使ってください(笑)。ただ、私は昔からアニメがメインで、杉山くんは外画の吹き替えがメインだった。その差が出ていただけじゃないかとは思います。それに私はよく神尾さんに言われていましたよ。「じゅんちゃんは"言いづらい"とか"わかんない"っていうのが、そのまま演技に出ちゃうよね」って(笑)。

杉山 だから、竹内さんは野生の勘みたいなものがすごく......。

竹内 ちょっと、だんだん褒め言葉からズレてきているぞ(笑)。

杉山 違うんです。要するに、竹内さんは天才肌なんです。僕はそうじゃないから事前に何度も練習して収録に臨むんですけど、それっていいことばかりではないんですよね。

イメージを固めすぎてしまうと、いざ収録で「そうじゃない」って言われたときに、「どうしよう」となってしまう。でも、竹内さんはその場ですぐに対応できる。現場の勢いや雰囲気を大事にされていて、これはすごいなと思ったんです。

竹内 それもアニメと外画の現場の違いだと思いますよ。外画の吹き替えって、実際の人間の演技に声をあてるわけじゃないですか。だから、より細かい芝居が要求されるわけで。

杉山 実際、僕は細かいところまで何回も映像をチェックしてから収録するクセがついちゃっていますね。

竹内 でしょう?

杉山 竹内さんは『NARUTO -ナルト-』でも本番前に1回通して見るだけでしたよね?

竹内 だって私、裏技を知っちゃったんだもの。本番前に通して見て、テストで合わせて、合わなかったところだけ、「また見せてください」と言えばいいんだって(笑)。

杉山 それはそうなんですけど、僕も現場が若手ばかりなら言えますよ。でも、大先輩の方々を差し置いて、「もう1回見せて」は言いづらいじゃないですか。

竹内 わかるよ、気持ちはわかる。ただ、「言えばいいんだ」って気づいちゃったのよ(笑)。あとはやっぱり慣れだよね。私はアニメの現場に慣れていたっていうだけだと思うな。

杉山さんが演じるうちはサスケは、クールな性格のエリート忍者だが暗い過去を持つ。ナルトの友人でありライバル杉山さんが演じるうちはサスケは、クールな性格のエリート忍者だが暗い過去を持つ。ナルトの友人でありライバル

■「杉山くんはサスケっぽい」

竹内 でも、私も最近は収録前に映像をチェックするようになりました。杉山くんみたいに細かいところまで確認してから現場に行っています。

――それはナルトが作中で成長していくに従って、竹内さんの演じ方も変わってきたということなんでしょうか?

竹内 違いますね。竹内順子が歳をとったからです(笑)。

――20年の重みがそんなところにも。

竹内 若い頃の瞬発力はない。やりたいことは増えたのに思うようにできない。よし、事前に見ておこう。そういうことです(笑)。

――しかし、こうやってお話を聞いていると、竹内さんは演技面だけでなく、人柄も含めて、まさにうずまきナルトを演じるのにぴったりな方だったんだと感じます。

竹内 言われてみればそうかもしれない(笑)。杉山くんはサスケっぽいしね。

――天才キャラに見えて、実は真面目な努力家なのがサスケですからね。

杉山 というより、サスケはイタチ兄さんが天才すぎるので、努力せざるを得なかったんですよ。

竹内 そういうところが、まさに杉山くんだよね。

――この20年でナルトもサスケも成長し、続編の『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』では、ついに子を持つ親にもなりました。お二人の演技面での変化はありますか?

竹内 私が意識的にナルトの声のトーンを変えたタイミングは、身長が伸びて変声期を迎えたときでした。精神面での成長については、そのつど台本から読み取って感じたことを演技に反映しています。

大人になってからは、『BORUTO-ボルト-』を観ていただくとわかりやすいと思います。たまに回想として子ども時代を演じることがあるんですけど、子どものときは気楽なんですよ。思ったことをそのまま言えば、「うずまきナルト」になるから。

でも、大人は頭の中で考えていることと、実際に話すことが違っているなんて当たり前じゃないですか。だから、今はナルトを演じていても思いがストレートには出ないようになっています。その差が大きく変わってきたところですね。

杉山紀彰

■「水樹奈々ちゃんと結婚しちゃったんですよ!」

――サスケに関してはいかがでしょう?

杉山 サスケが最初に出てきたときって、12歳くらいでしたよね。だから本来であれば、もっと子どもっぽい演技になるのが自然だったと思うんです。でも、実はサスケには両親を殺されたという暗い過去があって、彼はそこで他の子よりも早く成長してしまった。

それでサスケはナルトに比べると、アニメのスタート時から精神年齢的にはそれほど大きくは変わっていないと思って演じてきました。

ただ、親になってからはやっぱり違っています。ずっと復讐のために生きてきたけど、今は自分の家族や里の仲間たちのために戦っているのだという意識をすごく感じます。昔から自身の内面について多くは語らない人物ですけど、そういう包容力が出てきたと思っています。

竹内 私は正直、ナルトに子どもができたことよりも、結婚したことがショックでした。

――それはなぜでしょう?

竹内 だって私、女ですよ。それなのに水樹奈々ちゃんと結婚しちゃったんですよ!

――あ、なるほど! 妻のヒナタを演じている水樹さんも女性だから......。

竹内 夫婦っぽく、「ナルトくん」「ヒナタ」とか奈々ちゃんと言い合うたびに、「なんだこれは!」って困惑しています。

――言われてみればたしかに、ですね。

杉山 現場でも時折、竹内さんが言うんですよ。「みなさん、忘れているかもしれませんが、私は女性なんです」って(笑)。

竹内 うずまき家の声優は全員、女性ですからね。旦那も妻も息子も女性が演じているので、現場はもう倒錯の世界です(笑)。それに比べたら、サスケに娘ができたなんて普通だよね?

杉山 でも、結婚して子どもが生まれるまでの過程が、最初は原作でも描かれていなかったじゃないですか。それなのに夫婦別々に暮らしているから、僕も奥さんのサクラにどうやって接したらいいのかと悩みましたよ。ようやく『サスケ烈伝』で空白期間の説明がされたときには、「そういうことだったのか」ってホッとしましたね。

■「将来はおじいちゃんのサスケやナルト演じることになるかも」

――20年分の思い出があるだけに話は尽きませんが、展示の見どころについてもお聞きしたいです。

竹内 いっぱいあるよね。

杉山 見どころって言われると、本当にいっぱいあるんですよね。

竹内 展示には、アニメの20年が凝縮されています。セリフがずらっと並んでいる壁を見ているだけでも、いろんなことが思い出されて。

杉山 僕もその壁を見て、ごく初期のセリフまであって驚きました。

膨大な量のセリフが書かれた壁。作中の名台詞はもちろん、マニアックなものまで書かれている膨大な量のセリフが書かれた壁。作中の名台詞はもちろん、マニアックなものまで書かれている

――アニメの印象的な回をあげるなら?

竹内 それも数え切れないほどあるのですが、今回の展示で久しぶりに見た中では、自来也が旅立ってしまう回はやっぱり心に残っていますね。 あのとき、「芳忠さんがいなくなっちゃった~!」って泣きましたもの(笑)。

――自来也を演じた大塚芳忠さんですね。サスケのほうは?

杉山 こうやって20年の歴史を振り返ったとき、あらためてサスケのターニングポイントはどこだったろうかって思うと、やはりイタチ戦なんですよね。あのためにサスケは生きてきたと言っても過言ではないですから。会場では二人のセリフも書いてあったりして、久々にぐっと来ました。

会場には木の葉隠れの里のジオラマも展示。お馴染みの舞台を立体的に感じ取ることができる会場には木の葉隠れの里のジオラマも展示。お馴染みの舞台を立体的に感じ取ることができる

――会場ではどう見ていくのがおすすめでしょう?

竹内 まずは順番どおりに見て行ったほうがいいですよね。そうすると途中でナルト視点とサスケ視点に展示が分かれるところがあるのですが、私はナルト側から見て、次にサスケ側を見たほうがいいかなと思います。で、もう1回展示が分かれるところがあるので、そちらはサスケからナルトに行く。これがおすすめかな。

理由は、その展示がクシナとナルトのシーンになるんですよ。だから、この順番がいちばん流れは自然じゃないかなって。でも、もう見に行ったという方で、こういう見方のほうがいいよっていうアドバイスがあったら、ぜひ教えていただきたいですね。

――ありがとうございます。しかし、これほど長く続いて、かつキャラクターが大河ドラマのように成長し続けているアニメも珍しいですよね。

杉山 そうですね。何年後かには、我々はおじいちゃんのサスケやナルトを演じているかもしれません。

竹内 でも、演じる側としてはそうなってくれたほうが楽かもしれないね(笑)。

ナルト役の竹内順子さん(右)とサスケ役の杉山紀彰(左)さん

●竹内順子(たけうち・じゅんこ)
4月5日生まれ、埼玉県出身。
『NARUTO -ナルト-』のうずまきナルト役をはじめ、『イナズマイレブン』(円堂守)、『Yes!プリキュア5』(夏木りん役)、『デジモンアドベンチャー』(ゴマモン役)など数多くの人気作品で声優を担当。2011年に第5回声優アワードにてキッズファミリー賞を、2012年には第6回声優アワードにてシナジー賞を受賞した。最新情報は事務所公式サイトをチェック!

●杉山紀彰(すぎやま・のりあき)
3月9日生まれ、東京都出身。
声優デビュー後、すぐに洋画や海外ドラマの吹き替えを中心に活躍。その後、『NARUTO -ナルト-』で、うちはサスケ役を演じたことで注目を集め、以降多くのアニメ作品の声優を担当。主な作品に『Fate/stay night』(衛宮士郎)、『BLEACH』(石田雨竜)、『ヘタリア』(イギリス)など。
公式YouTubeチャンネル『杉山紀彰 (Noriaki Sugiyama)』

■「アニメ『NARUTO-ナルト-』20周年記念 NARUTO THE GALLERY」開催概要
アニメ『NARUTO-ナルト-』20周年記念 NARUTO THE GALLERY
会期:開催中~2023年1月31日(火) 10:00~20:00(最終入場19:30)
会場:AKIBA_SQUARE (秋葉原UDX内)
主催:NARUTO THE GALLERY実行委員会

(©岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ、©NARUTO THE GALLERY実行委員会)