「世界3大カスタムカーショー」のひとつに数えられ、日本のチューニングカー文化拡大の立役者となってきた「東京オートサロン」。1983年から始まり(当時は「東京エキサイティングカーショー」)、今年1月には41回目が開催された。そこに集まるカスタムカーや最新パーツもさることながら、出展企業が起用したコンパニオンにも注目が集まるこのイベント。コロナ禍を経た今、彼女たちの存在に変化はあるのだろうか。
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「彼女たちは"コンパニオン"と呼ばれていますけど、本来、ステージモデルとフロアコンパニオンに分かれているんですよ」
そう解説するのは、20年以上「オートサロン」を取材し、"コンパニオン"を撮り続けているカメラマン・矢沢隆則氏だ。
「そのふたつは役割が違っていて、出展各社のブースでパンフレットなどを配っているのが、フロアコンパニオン。一方、ステージモデルはショータイムの時間のみ出演して、クルマの横で"華"を添えPRするのが役目です」
ステージモデルの出演時間になると、カメラを構えたファンたちが集結。大きなブースであれば100人以上がステージ前を埋め尽くす。
「ステージモデルにはレースクイーンをしているコも多く、彼女たちは特に人が集まるんです。レースクイーンは各レーシングチームに所属しているわけですが、サーキットではチーム単位でグッズを作ったり写真集を作ったりして手売りしています。
市場規模は大きくないものの、それを購入してくれるくらい熱心なファンがいて確実なビジネスになっています。だからオートサロンでもしっかり集客できるんですよね」(矢沢氏)
実際、東京オートサロンのイメージガールである「A-CLASS」も、これまでのメンバーのほとんどがレースクイーン経験者だ。もちろんクルマとの親和性もあるが、イベントでの集客を考えるとレースクイーンの起用が確実なのだろう。
では、一方のフロアコンパニオンはどうか? こちらはまだ知名度も低く、あまり人気のないコが多いのか?
「人気がないコというよりは、そもそもタレント活動などをしていない大学生とか、立食パーティーなどでもコンパニオンをしているコたちが多いです。でも最近の傾向としては、コスプレイヤーやグラビアアイドルなど、異なるジャンルからピンポイントで参加しているケースも増えてきていますよ」(矢沢氏)
ちなみに今年はコスプレイヤーの小鳥遊(たかなし)くれあ、月野もも、グラビアアイドルの、ちとせよしのなどがフロアコンパニオンとして参加していた。ただし、必ずしも彼女たちが本来の"集客力"を発揮できるというわけではないようだ。
「いまどきレースクイーンよりSNSフォロワーが多いコスプレイヤーのコはたくさんいますけど、オートサロンのような場では何かのキャラになるわけではないので、コスプレ好きなファンにとっては、わざわざ来場するほどのモチベーションにはならないんだと思います」(矢沢氏)
オートサロンを舞台にした芸能プロダクションによるスカウト活動も、かつてとは様変わりしてきているという。
「それこそ昔は、最寄りの幕張駅の前に芸能事務所のスカウトたちが待ち構えていて、イベント終わりにはスカウト会場みたいになっていました。レースクイーンファンの間でも、『○○のブースにいたコがいいぞ!』ってネット掲示板で情報交換したりして、無名でも光るコを"発掘"みたいなことはよくありましたよ。
今はコロナもあって、フロアコンパニオン自体が減ってしまったので、そんな機会も少なくなったように感じます。それでもスカウトは何人か来ているので、フロアコンパニオンだったコがスカウトされてレースクイーンになったりする例もないわけではありませんが......」
少し寂しそうに、そう話す矢沢氏。東京オートサロンのフロアコンパニオンから"原石"が発掘される可能性は、ゼロではないものの以前よりもハードルが高くなっているようだ。