「関ケ原の戦いは意外に短くて、6時間で終わっているんです。8時スタートの14時終わりですから。元日の『爆笑ヒットパレード』くらいの長さなんです」と語る松村邦洋氏 「関ケ原の戦いは意外に短くて、6時間で終わっているんです。8時スタートの14時終わりですから。元日の『爆笑ヒットパレード』くらいの長さなんです」と語る松村邦洋氏

芸能界随一の歴史通としても知られるお笑い芸人、松村邦洋さん。

そんな彼が、1月の放送開始から話題を呼んでいる大河ドラマ『どうする家康』(NHK)に関する書籍『松村邦洋 今度は「どうする家康」を語る』を上梓(じょうし)した。

主な登場人物のキャラクター設定、今後の展開や注目シーンなど、ハンパない熱量で解説する!

* * *

――徳川家康にどんな印象を持っていますか?

松村 苦労人ですね。家康のお父さんの松平広忠、おじいさんの清康は家臣に殺されています。お母さんの於大(おだい)の方は広忠と離縁させられ、家康は4歳くらいでお母さんに会えなくなってしまった。こんなに苦労した人はいないですよ。やっぱり、人は苦労するとポイントがたまって、運が向いてくるんだなと思いますね。

――幼少期にため込んだ運のポイントが、人生の後半に生きてくるんですね。

松村 おびえて、おびえて、最後に天下を取るんです。豊臣秀吉が死ぬまでポイントをため込み続けて、秀吉が死んでから、そのポイントを少しずつ使っていくんです。秀吉がかわいがっていた加藤清正、福島正則に目配り、気配り、心配りしてね。いいお金の使い方をしたと思いますよ。

――家康は周りに気を使える人だったんですね。

松村 家康がえらいのは、秀吉が死んでから、高台院で静かに寂しく暮らしていた正室の北政所(きたのまんどころ/寧々[ねね])の顔を立てたこと。みんな、秀吉の後妻の淀殿の顔色をうかがうわけですよ。大坂城の淀殿に貢ぎ物を持っていってご機嫌を取って。

でも、家康は淀殿のところにも行きますが、ちゃんと北政所のところにも、「まんかか様(北政所のこと)、ご無沙汰しております」とご挨拶に行くんです。そうすると北政所も、加藤清正や福島正則に「家康殿につきなさい」って言うんですよね。 

――織田・今川両家で人質だった頃の家康はどんな感じだったんでしょうか?

松村 織田信長の下でいじめられていたと思うんですよ。『どうする家康』では、信長が家康に対して、「おい、白ウサギ! 早く会いてぇよ」と言っていましたが、もうジャイアンとのび太の関係ですよね。

――織田信長役の岡田准一さんの表情が怖かったですよね。

松村 怖いですね。あれが阪神タイガースの岡田彰布監督だったら、楽でしょうけど。「あのねぇ。白ウサギに早よぅ、会いたいですねぇ。竹千代、待っとけぇ。おまえ、元康とか勝手に名前変えんなぁ。今川の下で、ええ人質生活しとったんやろぉ。たっぷりいじめたるからなぁ」って。

――岡田監督が信長役をやるわけないでしょ(笑)。

松村 木村拓哉さんが映画『レジェンド&バタフライ』で、まさに今、信長役をやっているのも面白いですよね。それと、2020年の大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK)で染谷将太さんが演じる信長も、非常にサイコパス的で面白かったんです。皆さん、「俺だけの信長を見せよう!」と思ってやっているんでしょうね。

――岡田准一さんはジークンドー(截拳道)のインストラクター認定を受けているほどですからね。今後はアクションシーンも注目ですよね。

松村 岡田さんの信長はフルスイングでめちゃくちゃ暴れてほしいです。

――有村架純さんが演じる家康の妻・瀬名姫も注目です。

松村 今までの大河ドラマの徳川家康だと、瀬名姫は家康より年齢が7つ上で気位が高く描かれているんですよね。貴乃花さんと河野景子さんぐらいの年の差だし、僕と山田邦子さんが結婚するようなもんですよ。あとは大岡弥四郎という男と浮気したり、武田方と内通したりしていたという説もありますからね。

でも、『どうする家康』では、そんなに年齢も離れていない感じで、幼なじみのような関係性で、「いい人」の印象が強いです。これまでの瀬名姫のイメージを覆す描き方なので、面白いですよね。

――武田信玄役の阿部寛さんはいかがですか?

松村 教科書に載っている信玄の肖像画そっくりな顔で出てきましたよね。

――確かに、メイクで肖像画にだいぶ寄せていました(笑)。家康は信玄のことをどう思っていたんですか?

松村 家康は戦巧者の信玄を最も恐れていたんじゃないですかね。ものすごく尊敬もしていたから、信玄の息子・勝頼が戦に破れた後、武田家の家臣を受け入れているんです。

それで武田家のノウハウを徳川家の中に取り入れていくわけなんですよね。そこが家康らしいところ。家康は最初、戦にほとんど勝てないんですけど、負けからいろんなことを学んでいくんです。

――武田勝頼は眞栄田郷敦さんが演じますよね。

松村 勝頼は意外と戦巧者なんですよ。これまでは「信玄のダメ息子」みたいに描かれてきましたけど。野村克也元監督の名言「マー君、神の子、不思議な子」にかけた僕のネタで、「克則、俺の子、普通の子」じゃないですけど、お父さんの信玄が立派だから勝頼も情けないように描かれていたんです。

でも実際は、戦に勝ちまくっていた。だから、勝頼のときが一番、領地が広いんです。強すぎて負けを知らなかったからこそ、たった1回の負けで「ダメ息子」と言われるようになってしまったんです。逆に、負けをいっぱい知っていた家康は強いんですよね。

――ちなみに、今後、松村さんが注目しているのはどんなシーンですか?

松村 やっぱり関ケ原の合戦ですね。意外に短くて、6時間で終わっているんです。8時スタートの14時終わりですから。元日の『爆笑ヒットパレード』(フジテレビ系)ぐらいの長さなんです。

――思っていたよりかなり短いですね。

松村 平日だと『スッキリ』(日本テレビ系)の時間に大砲が鳴ってスタート。『徹子の部屋』(テレビ朝日系)ぐらいで小早川秀秋が裏切ります。それで『ミヤネ屋』(日本テレビ系)くらいで撤収です。

――お昼のテレビ番組表に照らし合わせるとわかりやすいですね(笑)。

松村 時間経過を数字で見せても面白いかも。海外ドラマの『24』みたいに(笑)。

●松村邦洋(まつむら・くにひろ)
1967年8月11日生まれ、山口県出身。お笑いタレント。大学生の頃、バイト先のテレビ局で片岡鶴太郎に認められ芸能界入りし、斬新な声帯模写で一躍有名に。ビートたけし、半沢直樹、"ひとりアウトレイジ"、阪神・掛布雅之、故野村克也監督など多彩なレパートリーを誇り、バラエティ、ドラマ、ラジオなどで活躍中。プロ野球好きで、大の阪神ファン。芸能界きっての歴史通で知られ、YouTubeで日本史全般を扱う『松村邦洋のタメにならないチャンネル』を開設。特にNHKの歴代「大河ドラマ」とそれにまつわる知識が豊富。著書に『松村邦洋「鎌倉殿の13人」を語る』『武将のボヤキ』『愛しの虎』などがある

■『松村邦洋 今度は「どうする家康」を語る』
プレジデント社 1540円(税込)
芸能界随一の歴史通と呼ばれる松村邦洋さん。本書では、徳川家康を主人公にした過去の大河ドラマの話を交えながら、『どうする家康』(NHK)のストーリーを想像する。織田・今川両家で過ごした人質時代のエピソード、家康の人生のうちで最も命の危機が迫ったエピソードなどを、さまざまなたとえ話を駆使しながら解説。『どうする家康』を何倍も深く味わうことができること間違いなしの一冊だ

★『“本”人襲撃!』は毎週火曜日更新!★