気象予報士としても活躍する武藤十夢、ステージに虹をかけた 気象予報士としても活躍する武藤十夢、ステージに虹をかけた

AKB48メンバーで、気象予報士としても活躍する武藤十夢が2月28日(火)、東京・立川ステージガーデンで『武藤十夢卒業コンサート~やるだけやったから後悔なんかねぇ!~』を開催。AKB48のコンサートとしては3年ぶりの声出し解禁。集まったファン2300人が彼女の門出を全力のコールで祝った。

オープニング「ゴゴゴー」と会場に鳴り響く重低音。『1994年の雷鳴』だ。1994年は武藤の生まれ年。「武藤十夢卒業コンサート行くぞー!!」と武藤の叫びとともにコンサートが始まった。『最終ベルが鳴る』『スクラップ&ビルド』とチームKの代表曲が続く。

拳を掲げて気合を入れるメンバーたち 拳を掲げて気合を入れるメンバーたち
加入当初から大島優子に可愛がられていた武藤。大島の卒業に合わせて「優魂継承」というキャッチコピーを掲げ、熱い魂でチームKにとって欠かせない人物となっていた。そんな彼女を応援すべく、ファンはペンライトを武藤のメンバーカラーかつ、チームKカラーの緑にして会場を染め上げる。

OGの倉持明日香、藤田奈那と『純愛のクレッシェンド』を踊る OGの倉持明日香、藤田奈那と『純愛のクレッシェンド』を踊る

ユニットパートでは岩立沙穂、茂木忍など、武藤と仲の良いメンバーで息ぴったりなパフォーマンスを見せる。そしてサプライズで登場したのはチームKの先輩である4期生の倉持明日香と10期生の藤田奈那。ふたりともAKB48のステージに立つのは久しぶり。

倉持はファンからSNS上で「コンサート行かないの?」と聞かれるも「立川遠いな」と答え、サプライズが成功したと笑顔。現在ミュージカル女優の藤田は、リハーサルで「歌い方がミュージカルすぎる」と言われ、裏でアイドルらしい歌い方の練習をしていたことを明かした。

サプライズも成功し、ユニットパート終了かと思いきや「ちょっと待った!」と妹の武藤小麟が登場。イントロが流れ出し始まったのは、十夢がずっと「絶対にやりたくない」と言っていた、姉妹の禁断の関係を描いた『おしべとめしべと夜の蝶々』。あわてて一旦ストップさせるも、ファンからのリクエストもあり続行! 妖艶なパフォーマンスで会場を魅了した。

武藤姉妹による『おしべとめしべと夜の蝶々』 武藤姉妹による『おしべとめしべと夜の蝶々』

ステージも終盤となりスペシャルゲストとして武藤の所属事務所の会長・生島ヒロシが登場! AKB48のコンサートに来たのは初めてとのことで「ヒロシ感激!」と絶叫。そして「普段の十夢ちゃんは努力家で事務所でも優等生。これからも楽しみ」とエールを送った。

武藤の所属事務所の生島ヒロシ会長がサプライズ出演 武藤の所属事務所の生島ヒロシ会長がサプライズ出演

本編ラスト、チームK魂を体現する曲『転がる石になれ』でファンとともに全力で拳を突き上げ、『ひこうき雲』ではタオルを振り回して、会場がひとつになって終了。

アンコールは「十夢ちゃん」コール。声が出せなかった3年間の思いぶつけるように今日イチの叫びが会場に響く。そして黒いドレスに身を包んた武藤が登場しスピーチ。

「アイドルとしての最後がこんな素敵なものになるとは思いませんでした。この時間がずっと終わらなければいいのに」としみじみ。そして「心から楽しいと思えるようになったのはこの2、3年。それまでは修行の場でした」と明かす。

「期待に答えられない自分が嫌でした。劣等感を感じることが多くて、何もいいことないと思ってた。でもどんなときでも愛してくれるみんながいたから頑張らなきゃいけないと思ったし、応援してもらった人に後悔してほしくないと続けてこれました」と話す。

「優魂継承」については「結局、優子さんになることはできませんでした。でもその過程で自分らしさということを見つけました」と振り返る。最後に「これからAKB48ではなくなりますが、アイドルでない私もみなさんの心を晴れ模様にしてみせると誓うので、そばにいてくれたらうれしいなと思います」とファンに語りかけた。

大島優子からの手紙に思わず涙 大島優子からの手紙に思わず涙

最後に武藤へのサプライズで大島優子からの手紙が向井地美音から読み上げられる。

「当時は不器用でポンコツでした。でもそこが愛おしい。一生懸命取り組む姿勢があって、口うるさく言う私に文句を言わずついてきてくれました。12年間走り続けた十夢は優魂継承を体現してくれたひとりだと思います。いつか一緒にお芝居できることを楽しみにしています」「子分である武藤十夢を応援してくれてありがとうございます」

オープニングからずっと先輩として強い姿を見せていた武藤だったが、これには思わず「優子さーん」と叫んで涙を浮かべた。

ラストソングは『After rain』。長い雨のあとに虹がかかる。決して順風満帆ではなかった彼女のAKB人生をなぞるかのような曲だ。そして最後に武藤は「12年間ありがとうございました。完全燃焼!」と叫んだ。完全燃焼というワードは彼女のセンター曲『Show Fight!』のラストの歌詞。すべてをやりきり最高の笑顔でコンサートは幕を閉じたのだった。 

卒業ドレスでは珍しい黒をリクエストした武藤 卒業ドレスでは珍しい黒をリクエストした武藤
終了後、囲み会見に登場し、取材陣からの質問に応じた。

――卒業コンサートを終えて今の感想を聞かせてください。

武藤 もう完全燃焼ですね、ほんとにやり切ったと思います。私のやりたいことをたくさん詰め込んだコンサートだったので、もう悔いはないです。幸せでした

ーー11年半を振り返っていちばん心に残ってる思い出は?

武藤 こういう時にみんな楽しい思い出を言ったりすると思うんですけど、私、結構辛かったことの方が覚えていて。総選挙の感謝祭の時にサプライズで次の選抜発表がされたんですけど、総選挙で選抜入りしたメンバーの中で私だけ選抜落ちして。一生忘れないと思いますね。あんまりいい話じゃないかもしれないです(苦笑)。

ーーでは、いい思い出は?

武藤 でも今日が1番になってくるのかな。あとは総選挙で何回もランクインさせていただきましたけど、7位でランクインした時はすごく印象に残ってますし。それと気象予報士の資格を取った時かな。

ーーコンサート終えて、終わったっていう感じか、それともスタートみたいな感じですか。

武藤 卒業発表させていただいてから、卒業に向けてずっと駆け抜けてきた期間だったので、とりあえず終わったっていう感じが強いですかね。まだ卒業公演がありますけど、気を抜かずに楽しくできたらなと思ってます。

――コンサートの最後に、これからのことを「期待しかない」と言ってました。

武藤 それはもちろんです。これからも頑張っていきたいと思ってますし、「この人AKBだったんだ」って活躍をできたらいいなって思います。

――具体的にどういった方向で頑張っていきたい?

武藤 お芝居のお仕事ももちろんしたいですし、資格を活かしたお仕事とかもしたいですし、朝ドラ出てみたいなとか、帯でお天気やってみたいなとか、あとは本を出してみたりとか、セミナーやってみたいなとか、やりたいことはたくさんありますね。

――自己肯定感がないから、色々資格に挑戦したと言ってましたが、自信や肯定感ってつきました?

武藤 つきましたね。この数年ですけど。ほんとにずっと自信がなくて、自分のことが嫌いなAKB人生が大半だったので。でも資格を取って、それがお仕事だったり、自分のやってきたことが色んなものに結びついてきました。

――今では可能性しかないように見えます。

武藤 本当ですか、嬉しい。でも別に資格があるないとか、そういうのは関係なくて。ただ私が自信なくて、何か明確なものが欲しいって思ったから、資格っていう1つの手段を選んだだけで。AKBのメンバーだったら、歌が上手なメンバーもいるし、ダンスを極めてるメンバーだったり、それぞれの魅力がある。私のはそのうちのひとつだと思います。

ーー卒業して恋愛のほうは?

武藤 どうでしょうね。まあ、機会があればというか、ご縁があればという感じですかね。とはいえ、私は楽しいことがたくさんあって、充実した日々を送っているので。その中でそういうところが充実してくるのであれば、まあ、それはそれでいいんじゃないかなって。

ーー結婚願望は?

武藤 結婚願望以前に私、結婚できるかなっていう疑いがあって、誰ももらってくれないんじゃないかって。そこは不安ですね。

ーーアイドル活動。11年半は長かったですか。短かった?

武藤 あっという間でしたね、本当に光の速さだったなって思ってて、12年って小中高じゃないですか。とてもそんなふうには感じないです。

ーー卒業したら、ちょっと休憩に入るのか、そのままずっとお仕事ですか?

武藤 私はお仕事をしていたいんで、皆さんよろしくお願いします(笑)。今はお仕事がいちばんやってて楽しいし、やりがいを感じる瞬間でもあるので。これからいろんなことにチャレンジしていけたらいいなと思ってます。

ーー卒業コンサートを終えて、天気に例えるとしたら、何模様になりますか?

武藤 晴れ模様ですね、ピーカンです。もう虹がかかってます。最後のスクリーンに映ってた虹が私の気持ちです。

――以前とくらべてスピーチがだいぶスムーズだったように思いました。

武藤 めちゃめちゃ考えました。いろんなメンバーのスピーチとかも見ましたし、どうやって考えてたんだろうって、スタッフさんにも聞いて。3パターンくらい考えての今回のスピーチでした。でも自分よく飛ばさなかったなと思って。ハートが強くなったなって思いました。

――「自分は優子さんにはなれなかった」って話をしてましたけど、大島さんからの手紙では「優魂継承を体現してくれた」とありました。

武藤 嬉しかったですね。本当に優子さんがいたから、今の自分が本当にあると思っているので、こうやって直筆で手紙を書いてくださって、どこまでもお世話になっているなと思いながら。やっぱり優子さんの背中を追いかけることで、自分らしさっていうのを、このグループで見つけることができたので、これからも夢は優子さんとの共演かなと思って頑張っていきたいと思います。

コンサート終盤、涙をこらえきれない武藤小麟(右から3人目) コンサート終盤、涙をこらえきれない武藤小麟(右から3人目)

ーー妹(武藤小麟)さんにはどうなってほしい?

武藤 もう若手っていう感じじゃなく、中堅になってきていると思うんですけど、小麟には私にはない良さがあると思うので、そういうところを伸ばして頑張ってもらえたらなって思います。今日ひとりひとりにお手紙を書いて渡したんですけど、小麟には「時間は有限頑張れ」って書きました。

――生島ヒロシさんが来ましたけど、お願いしたんですか?

武藤 そうですね、ファンの方も幅広い年代だったりするので、会長が来たらみんな喜んでくれるんじゃないかなって。曲に入る前の紹介とか、さすが名司会者だなって思いましたし、メンバーともたくさんお話してくださって、ありがたいなという気持ちでいっぱいです。

ーー「優魂継承」が十夢さんだとしたら、「十夢魂継承」は?

武藤 個人的にはやっぱり小麟に継承してほしいです。『Show fight!』とか、私がずっとやってきた楽曲で、私がいなくなることで歌われなくなるのは寂しいので、歌ってくれたら嬉しいなって思います。

――昔はポンコツだったと言われてましたが、レベルアップするコツって?

武藤 私が大事だなって思ったのは、あきらめないことと、他の人のいいところを見つけることだと思います。あきらめていいやってなっちゃうと、伸びるものも伸びなくなってしまうので。

あとAKBってたくさんメンバーいて、それぞれいいところがあって、この人のこういうところいいなって、それに近づこうとすると、そこがだんだんレベルアップして、それが自分らしさになったりするんです。

私は優子さんがいちばん影響を受けた先輩だと思うんですけど、それ以外にも倉持さんには、握手会とかのファンの方への対応をすごい学びましたし、峯岸さんは後輩にすごい慕われていたので、どうやったらこんなに慕われるんだろうって思って見たりとか。そうやって少しずつ色んなメンバーからいいところを吸収していくっていうのがいいのかなって思います。

ーー最後に武藤さんに憧れる人に向けてメッセージを。

武藤 そんな人絶対いないと思ってるんですけど(笑)。でも今日みたいなステージを見て、いいなって思ってくれる方がいるんだったら、AKB48は力をつけて伸ばしていくには、とてもいい環境だと思うので、ぜひともAKBを盛り上げてくれたら嬉しいなと思います。