「お母さんは変ですね。お父さんの給料を2、3日で全部使います。お父さんも変ですね。小学生のときに海で溺れたんですけど、背泳ぎで助けに来ましたから(笑)」と語る国崎☆和也氏「お母さんは変ですね。お父さんの給料を2、3日で全部使います。お父さんも変ですね。小学生のときに海で溺れたんですけど、背泳ぎで助けに来ましたから(笑)」と語る国崎☆和也氏

自由奔放にボケまくるランジャタイ国崎(くにざき)和也さんが、自身の思い出をつづった初エッセイ集『へんなの』を刊行した。

国崎さんらしい奇怪なオモシロ話はもちろん、意外にも(!?)涙あり感動ありのエピソードが盛りだくさんで、心が揺さぶられる一冊だ。国崎さん本人にお話を伺った。

* * *

──国崎さんのキャラクターに合わない感動的な話も書かれていて驚きました。

国崎 本の最後に、漫☆画太郎先生のマンガが載るんで、感動でもなんでも、そのオチめがけて書きました。

──なんでもありでいこう、と。

国崎 そうです。ゴーストライターもいるかもしれません。

──ゴーストライターはダメでしょ(笑)。

国崎 もう先に言っときます。ゴーストライターの可能性があります。

──炎上しますよ(笑)。ちなみに本書では、行間に「、」が挟まれている箇所がいくつかあるんですよ。あれはどういう意味ですか?

国崎 (本書を読み返して)本当だ。ある。わかんないですね。

──自分のことなのに! 本当にゴーストライターがいるんですか?(笑)

国崎 (笑)。わかんないな。

──エッセイを書く上で、こだわった点はありますか?

国崎 小学生が読みやすいように、なるべく文章が行またぎしないできっちり一番下の位置で終わるように心がけました。

──それはなかなか大変ですね。

国崎 芸人仲間の本田らいだ~のこともこの本で書いたんですけど、書き終わった後に、「正式な表記は『本田らいだ~△』だよ」って言われて。その「△」のせいで全部1文字ずつずれて、どんどんぐちゃぐちゃになっていって......。

──難儀しますね。

国崎 挙句の果てに、今は本田らいだ~△でもなく、剣崎実だそうで。それは勘弁してくれって言いました(笑)。

──家族は変だと思いますか?

国崎 お母さんは変ですね。お父さんの給料を2、3日で全部使います。

──え!? 何に使うんですか?

国崎 ミーハーだから、ファービー人形を8体買ってきたりして。あとは猫のアメリカンショートヘアを買ってきたり、ほかにも犬や猫を拾ってきたり、もらってきたりして、一時期、犬2匹、猫8匹、ファービー人形8体で家の中がめちゃくちゃうるさかったです。

──(笑)。散財するお母さんにお父さんは怒りませんか?

国崎 それが、お母さんが自分のことを「体が弱い」って言うから、お父さんも「好きなことをやらせてあげたい」ってことで怒らないんです。

──優しいですね。

国崎 そうなんですけど、おととし、僕が実家に帰ったときに、お父さんが首をかしげながら、「お母さん、全然死ぬ予兆がない」って言ってました(笑)。

──何よりですけどね(笑)。

国崎 そう思うと、お父さんも変ですね。僕が小学生のときに海で溺れたんですけど、背泳ぎで助けに来ましたから(笑)。

──救助ではあまり見ない泳ぎ方ですね(笑)。

国崎 背泳ぎが一番得意で速かったから、そうしたらしいです。

──ご兄弟はどうですか?

国崎 妹がいますが変ですね。30歳で自分のことを「カニは~」って言ってるんです。

――一人称がカニ? まさか名前がカニじゃないですよね?

国崎 違います。妹はカニが好きなんですよ。だから「カニって呼んで」って(笑)。

──変わってますね(笑)。

国崎 周りからも「カニさん」と呼ばれていて。このあいだ番組のロケで地元に帰ったら、行く先々で「カニさんにはお世話になっています」って言われて。

──顔が広いんですね。

国崎 前に妹から電話がかかってきたとき、「今、副市長と飲んでる」って言ってました(笑)。

──国崎さんはウッチャンナンチャンさんやオール巨人師匠のような大御所の方を、等身大パネルを使ってよくいじっていますが、怒られないんですか?

国崎 皆さん寛大なんですよ。このあいだなんて、オール阪神・巨人師匠の単独ライブに呼んでいただいて漫才をやったんですけど、僕らの漫才中に巨人師匠が登場してくれました。

──え? 急遽(きゅうきょ)ですか?

国崎 はい。袖に置いてある巨人師匠の3体目の等身大パネルを出そうと思ったら、巨人師匠がそのパネルを持って舞台袖で待っていて。「何してんだろう、この人?」と思って頭が真っ白になって。

──それは驚きますよね(笑)。

国崎 それで巨人師匠が僕らに目配せで「俺が今から舞台に出るから」ってやってくれて。一番盛り上がるところで師匠に出てもらいました。めちゃくちゃうれしかったです。

──『M-1グランプリ2021』決勝でランジャタイに96点の高得点をつけ、大絶賛してくれた立川志らく師匠の独演会にも呼ばれたそうですね。

国崎 ありがたかったです。本当はふたりのお弟子さんが落語をやって、その後に僕らが漫才をやって、最後に師匠が落語をやるという構成だったんです。でも、師匠が僕らのネタの時間を短くしたくないって言って、お弟子さんの出番をなくしたんですよ。

──え!? それはすごいですね。

国崎 僕らの出番前に師匠自らお客さんの前に行って、「この人たちはめちゃくちゃやってるようで、番組のルール内でちゃんとやってる人たちですから怖くないですよ」って説明を30分くらいしてくれたんです。

──師匠が前説をやってくれてるじゃないですか(笑)。

国崎 はい。だから、めちゃくちゃやりやすかったです。

──本書でも、漫☆画太郎先生がマンガを描くなど、国崎さんは周りに恵まれていますね。

国崎 先生のマンガを載せてもらえたのが一番うれしかったです。24ページあるんですが、最初は3ページくらいの予定で。でも、僕が「頼むから全部入れてくれ」ってお願いしたら、いろんな関係者の方たちがOKを出してくださって。

──今回初執筆でしたが、今後も本を書いていきたいですか?

国崎 僕は今回で終わりに......。ありがとうございました。

──なんでですか? 1冊でペンをおくのは早くないですか?

国崎 僕はもう本は書かない。100万部売れようが、書かない。

──いや、なんでですか!?(笑)

国崎 (笑)

●国崎☆和也(くにざき・かずや)
1987年生まれ、富山県出身。お笑いコンビ、ランジャタイのひとり。『ゴッドタン』(テレビ東京系)で芸人が選ぶ天才芸人2位に選出。『M-1グランプリ2021』決勝出場。趣味はマンガ

■『へんなの』
太田出版 1760円(税込)
はちゃめちゃにボケまくる芸風のランジャタイ国崎和也さん。1ページに「ぺっ!」のひと言だけだったり、どこかの星の芸能人のWikipediaを紹介したり、本書でも持ち味を存分に発揮している一方で、そのようなキテレツな内容だけではなく、少年時代の友達やおじいちゃんとのハートウオーミングな思い出話もたくさんつづられているのだ。いつもの芸風とはまた違う、国崎さんの新たな一面が垣間見える一冊

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