制作の裏側と特撮哲学を語る上堀内監督 制作の裏側と特撮哲学を語る上堀内監督

すでに特撮ファンの間で大評判! その秘密はスケールの大きいCG映像とこだわり抜かれた演出にあった!? 東映が導入した新しい技術も大活躍! しかし、その裏にはスタッフ陣の苦労も......。東映特撮に新風を巻き起こす若き才能・上堀内佳寿也(かみほりうち・かずや)氏に制作の裏側と特撮哲学を聞いた。

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■アセットの物量は例年の10倍

©テレビ朝日・東映AG・東映 ©テレビ朝日・東映AG・東映

――スーパー戦隊ファンの間では、〝王道回帰〟との声もあります。

上堀内 前作(『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』)、前々作(『機界戦隊ゼンカイジャー』)はスーパー戦隊の可能性を広げるチャレンジングな作品でしたからね。

ただプロデューサーから企画の話をもらったときは難しい案件だと思いました。戦隊って団結がテーマだけど、今回は全員が王様で主張が激しくて団結をしない。だから今までとは違うけど、どこか脳裏で「王道の戦隊を見ている」と視聴者に感じてもらわなくてはいけないなと考えていました。

――制作においてこだわった部分はありますか?

上堀内 5つの王国が登場するという世界観の性質上、CGは駆使しなくてはならない。でも、視聴者が「これCGだよね」と思ってしまったら没入できない。だから、プロデューサーには最初に「本当にその空間で人物が動いているように見えないとこの作品は終わります」と、クオリティを高めたいことは伝えました。

――王国の設計や背景など、ものすごいCGです。

上堀内 グリーンバックの「リアルタイム合成」は『ドンブラザーズ』以前から導入されていましたが、技術レベルの段階でいうと当時は〝ホップ・ステップ・ジャンプ〟の〝ホップ〟でした。それが本作では〝ステップ・ジャンプ〟を飛び越えて〝テイクオフ〟くらいのレベルになっていた。

さらにLEDウォールを使った「インカメラVFX」も本格的に導入されるタイミング。この技術を使うなら壮大な設定も表現できるかもと思いました。

――準備はやはり大変だった?

上堀内 アセット(3DCG素材や空間)の物量は例年の10倍は作る必要がありました。なので、僕は半年以上前から準備していましたが、現場スタッフはクランクインの1ヵ月半前くらいから徐々に合流してくるので、その間、膨大な情報をひとりで抱えて、放出できない苦しみはありました。

第1話で4人の王がシュゴッダム国に集結して入城するシーンでの撮影で上堀内監督も手応えをつかむ。「この瞬間にキングオージャーを成立させられると自信が持てた」(上堀内監督) ©テレビ朝日・東映AG・東映 第1話で4人の王がシュゴッダム国に集結して入城するシーンでの撮影で上堀内監督も手応えをつかむ。「この瞬間にキングオージャーを成立させられると自信が持てた」(上堀内監督) ©テレビ朝日・東映AG・東映

――撮影で手応えをつかんだ瞬間はありましたか?

上堀内 1話のトウフ国で、最初にカグラギ・ディボウスキがおにぎりを掲げるカットは、木漏れ日がかかったおにぎりを背景とうまくなじませることができましたし、同じく1話で4人の王様がシュゴッダム国に集結して入場するシーンも人物がまるで本当にそこにいるような空間が作れて、「スゲー」と純粋に感動しました。こういう瞬間があると現場がひとつになるんですよ。

――CGもさることながら、アクションもすごい迫力です。

上堀内 「キングオージャーといえばこういうアクションだよね」と思われるものを作りたかった。だから、いつも面白いことを考えてくださる渡辺(淳)さんにアクション監督をお願いして「アニメのカット割りや編集を取り入れたい」とお話をしました。

――なぜアニメ?

上堀内 最近のアニメって本当にクオリティが高くて、見てる人の感情を動かす作り方をしている。例えば、夕景のシーンでは、実写だとありえないところにフレア(光源)がきていたり、嘘みたいに人物の影が伸びていたりして、演出のクオリティが実写を超えてるんじゃないかと思うことがよくあります。

スーツをまとって動く特撮にも、実写の感覚にアニメのアクション演出を取り入れれば、実写とアニメのいいとこどりができる。そうすれば、もっとすごいものができるんじゃないかと思ったんです。

――具体的にはどんな演出?

上堀内 淳さんとアニメーターさんのところに「アニメはどうやって〝つなぎ〟を決めているのか」ということを勉強しに行きました。新しい発見ばかりでしたが、特に「アニメは実写の逆輸入だから、カッコいいところしか見せない」という発想は本作でも参考にしています。

スーツアクションでいうと、斬る前と斬った後だけ見せて、実際に斬るシーンは見せない演出などは多用しています。それと説明が難しいですが、コマやエフェクトの使い方をアニメの編集点でやっていたりと、1コマ1コマ、かなり勝負したつくりになっていると思います。

■女優に「嫌いでした」と言われたことも......

――このようなCGとリアルをうまく融合させる上堀内監督の〝カミホリ演出〟は多くの特撮ファンに受け入れられています。

上堀内 僕自身も映像に違和感があると話に集中できないタイプなので、極限まで空間を追求すれば、見るほうも作品に没入できるという考えです。それが本作にも露骨に出ていると思います。お芝居も一緒で、僕は〝ぽい演技〟が一番伝わらないと思ってるので、そこは妥協できないですね。

――監督は厳しい演技指導でも知られていて、ある仮面ライダーのヒロインの方は監督にかなり泣かされたとか......?

上堀内 クランクアップのときに、「監督のことが嫌いでした」と言われたこともありますね(笑)。まぁ、僕は嫌われていいと思ってやってます。それで1年後にその俳優さんが別の作品に行って認められたほうがいいじゃないですか。

――本作でもかなり厳しく?

上堀内 う~ん、ギラ(酒井大成)とかヒメノ(村上愛花)はけっこう追い込んだかな(笑)。でもがんばって食らいついてきてくれてますよ。オーディションから口出しさせてもらいましたけど、本当に彼らを選んで良かったと思ってます。

――そんな期待のメインキャスト5人に求めるものは?

上堀内 特撮はキャリアが浅い人が起用されることから、芝居ができないなりにその成長を見守るという楽しみ方をするファンもいます。でも、『キングオージャー』はみんな王様という設定だからそれが許されない。

演技がうまくなくてもいいから、どこかに人を率いるに足る人物であることを感じさせないと、この作品は成立しないんです。だから5人には1年を通して、1秒の隙もなくずっと王であってほしいですね。

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●『王様戦隊 キングオージャー』 
シリーズ初「昆虫」をモチーフとしながら、5つの王国の王様が集結した"全員がリーダー"の最強のスーパー戦隊が誕生。圧倒的映像美と大迫力アクションがシリーズに革命を起こす。毎週日曜9時30分よりテレビ朝日系列で放映中。

●上堀内佳寿也(かみほりうち・かずや) 
1986年生まれ、鹿児島県出身。地方局のAD経験を経て、当時日活プロデューサーの伊地智啓の紹介で特撮の制作会社へ。『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(2019~20年)で初のパイロット監督(シリーズの方向性を決める監督)を担当。