日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! 今週は「TRPGの元祖」が原作のファンタジー映画と庵野秀明監督による『仮面ライダー』のリブート作だ!

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『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』

評点:★4点(5点満点)

© 2022 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, DUNGEONS & DRAGONS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO. © 2022 HASBRO.© 2022 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, DUNGEONS & DRAGONS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO. © 2022 HASBRO.

にぎやかでハッピーなファンタジー世界は楽しい!

テーブルトークRPGの嚆矢にして決定版ともいえる『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』、4回目の映像化だ......が、どれも全く気にする必要はない。

ゲーム『D&D』になじんでいる人も、そうでない人も同じように楽しめるお気楽でユーモラスでときに胸に迫る、早い話がよくできた「万人向けエンターテインメント」である(念のため、これは文字通りの意味であり皮肉ではない)。

RPGの定番ということで内容もおなじみの感じである。泥棒、女戦士、半人前の魔法使い、エルフ(ではないが便宜上)らが「パーティ」を組んでモンスターやドラゴン、魔導士といったさまざまな敵に立ち向かう。もちろん同種の映画はこれまでにも無数に作られてきたが、高度な映像技術が物語への没入を妨げないこと、ユーモア70%、シリアス30%くらいのバランスの絶妙さ、そして何よりキャスト陣の魅力によって本作は頭ひとつ抜けた「ニュークラシック」ともいうべき地点に到達した。

重厚でシリアスなファンタジー映画も良いが、ユニークなモンスターや魔法に満ちた、にぎやかでハッピーなファンタジー世界の楽しさを改めて教えてくれる本作には、かけがえのない魅力がある。

STORY:多種多様な種族やモンスターが生息する世界「フォーゴトン・レルム」。盗賊エドガンと戦士ホルガはある目的のために旅に出る。魔法使いサイモンや聖騎士ゼンクらを仲間に加え、手ごわい敵が潜む難攻不落のダンジョンに挑む

監督・脚本:ジョナサン・ゴールドスタイン&ジョン・フランシス・デイリー
出演:クリス・パイン、ミシェル・ロドリゲス、ジャスティス・スミスほか 
上映時間:134分

全国公開中

『シン・仮面ライダー』

評点:★3点(5点満点)

突出してハイコンテクストであることは「信じられないほど奇妙」だ

「信じられないほど奇妙な映画」(Incredibly Strange Films)というのは80年代、周縁文化を巡って各方面に多大な影響を与えた雑誌『RE/SEARCH』第10号(1986年)の特集タイトルだが、大勢に向けた〈ブロックバスター大作〉がそのようなものに感じられるということは皆無とは言わないまでも珍しいことだ。本作がそのように感じられる理由のひとつはそのハイコンテクスト性にある。

『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』と、「シン」のつく作品は常にそのハイコンテクスト性が特徴であり、それを作り手と観客の間のマニア的な結びつきをエクスプロイトするものだと見ることは可能だし妥当でもある。が、直接的なオリジン(テレビ番組・漫画)への参照を超えた、総体としての日本の周縁文化になじみ耽溺しているかどうかが鑑賞の前提とされていることは、やはり「信じられないほど奇妙」に思える。

だが「金太郎飴を切ったように紋切り型で代わり映えのしない」映画より「信じられないほど奇妙な映画」のほうを歓迎すべきなのは言うまでもない。そもそも「バッタの能力を持つ改造人間」という存在そのものが「信じられないほど奇妙な」アイデアなのだから。

STORY:謎の組織に人体改造された青年・本郷猛は、緑川ルリ子という女に促され、研究施設から脱出する。やがて、たどり着いた山荘には本郷の恩師である緑川弘が待っていた。本郷は緑川よりある使命を託されるが......

監督・脚本:庵野秀明
原作:石ノ森章太郎
出演:池松壮亮、浜辺美波、柄本佑、西野七瀬、塚本晋也、森山未來ほか
上映時間:121分

全国公開中

●高橋ヨシキ(たかはし・よしき)

デザイナー、映画ライター、サタニスト。長編初監督作品『激怒 RAGEAHOLIC』のBlu-ray&DVDが発売中。

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イラスト/Utomaru