日本の国民的特撮シリーズとして長きにわたって愛される「スーパー戦隊シリーズ」。その最新作『王様戦隊キングオージャー』が話題を呼んでいる。
去る3月20日に発売された『週刊プレイボーイ14号』では「スーパー戦隊ヒロイン大集合」と題し、歴代のスーパー戦隊ヒロインたちが登場。最新水着グラビアやインタビューを通して、各々のスーパー戦隊シリーズ愛を披露してくれた。
その特集ではすべてを掲載できなかった歴代ヒロイン4名のインタビュー全文を、撮り下ろし写真とともに週プレNEWSで掲載。今回はシリーズ第40作『動物戦隊ジュウオウジャー』(2016~17年)で、アム/ジュウオウタイガー役を演じた立石晴香さんが登場。
アムは異世界『ジューランド』からやってきたホワイトタイガーのジューマン(異世界人)。マイペースな性格ながら、他者の気持ちを察知し、みんなを支えることもある心優しい戦士だ。作品から得たものや当時の心境、そしてスーパー戦隊シリーズの魅力を語る。
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――13歳からモデル活動を始め、19歳の頃に一時芸能活動を休止された立石さんにとって、『動物戦隊ジュウオウジャー』は本格的な女優デビュー作であり、芸能活動復帰作でもあるんですよね。
立石 そうなんです。芸能活動をお休みしていたのは、家庭の事情が理由でした。でも、モデル時代から女優になるのが夢だったんです。当時は、大阪の実家から通いで仕事をしていたので、なかなか女優業に踏み切れなかったのですが、やっぱり諦めきれなくて。
その後、上京が叶ったのをきっかけに、新しく事務所に所属することになり、約3ヶ月間、週に2~3回ほど演技レッスンを受けさせていただくことになりました。
そんななか、いきなり事務所の方から「明日、(オーディションがあるから)行ってきてね」と言われて受けた作品が『ジュウオウジャー』でした。合格のご連絡をいただいた夜から、瞬く間に人生が変わったのを覚えています。
その3日後には衣装合わせをして、半月も経たないうちにクランクインしたので、喜びも不安も感じる間がありませんでした。
――『ジュウオウジャー』は、動物学者の人間とジューマンによるスーパー戦隊の物語でした。立石さんが演じられたアム/ジュウオウタイガーは、ホワイトタイガーがモチーフとなったジューマン。役の決め手は、何だったと思いますか?
立石 単純に、相性が良かったんじゃないですかね。私、どちらかといえば"つり目"な方だし、ネコ科の動物っぽい顔立ちじゃないですか(笑)。当時は、お芝居を勉強している真っ最中で、実力も手応えもまったくなかったですから。偶然、役のイメージにハマったんだと思います。
――アムは、かわいいものが大好きな、あざとい小悪魔的なキャラクターでしたよね。実際に演じられてみて、共通点は感じられましたか?
立石 どうなんでしょう。あざとさは似ていないと思いますけど、初めてのメイン回となった第3話「帰りたいけど帰れない」でアムの合理的な一面が見えたときは、かなり親近感が湧きましたね。
――ジューマンの故郷であるジューランドに帰れなくなって、みんなが焦るなか、アムだけは「どうせすぐには帰れないだろうから、人間界に馴染む方法を考えてみるよ」と、ひとり冷静だったんですよね。
立石 そうそう。悩んでも仕方がないことは悩まない。前向きに、とにかく今できることをやってみる。そういう考え方は、私も同じです。
――そのドッシリとした身構え方も、役の決め手になっていたりして。とはいえ、本格的なドラマ出演は初めてだったはずです。役作りは、どのようにして?
立石 事務所で受けていた演技レッスンで、「役のバックボーンを考えた上で台本を読むと、キャラクターにリアリティが増す」と教わっていたので、自分なりに、いろいろ調べた覚えがあります。
例えば、「ホワイトタイガーは現実世界でも希少な動物だから、ジューランドでも、トラはたくさんいても白いトラは珍しかったんじゃないか。そこでチヤホヤされていたから、あざとい言動が目立つのかもしれないし、逆に浮いた経験があるからこそ、人の気持ちに敏感に察知してあざとく振る舞えるのかも」みたいな。
――そこまでしっかり土台を作っていかれたんですね! ほぼ初めてのドラマ出演とは思えないです。
立石 憧れていた女優業への大きな第一歩でしたから。それだけ気合いも入っていたし、「誰よりも評価されたい」「絶対、次に繋げたい」と、必死だったんです。とはいえ、(アムのスーツアクターである)下園愛弓さんの存在なくして、アムの役作りは語れないです。
というのも『ジュウオウジャー』は、人間の姿(日常シーン)と変身後の姿(戦闘シーン)に加えて、ジューマンの姿(日常シーンに登場する頭部が獣のカタチをした獣人姿)がある分、他の戦隊シリーズに比べて、スーツアクターさんとのコミュニケーションが多いんです。
ありがたいことに第1話(「どきどき動物ランド」)は、ほとんどがジューマン姿のシーンだったので、自分がアムを演じる前に、下園さんのお芝居を見学することができて。
――その後も、日常シーンの中で、人間の姿とジューマンの姿が切り替わる場面が多々ありますもんね。
立石 下園さんの動きは、とても参考になりました。「軽い猫背&やや内股を基本姿勢にすれば、アムの女の子らしさとトラっぽさを同時に演出できるぞ」って。同じ役を演じる大先輩が身近にいてくださったことは、役のイメージが掴みやすかっただけでなく、女優一年生として、ものすごく勉強になる体験でしたね。
――1年を通して同じ役を演じられたのも初めてだったと思います。アムへの印象や演じ方が変わった回などはありましたか?
立石 第14話の「ウソつきドロボーおバカ系」は、私自身、よりアムを好きになれた回でした。妹の手術費用のため昼夜問わず働くお兄さんに、怪人・ドロボーズが「ジュウオウジャーを足止めしたら大金をやる」とウソをつくお話で。
その兄妹の事情を知っていたアムが、人の気持ちに付け込んで悪事を働こうとするドロボーズに激怒したとき、「人のためにここまで感情を剥き出しにすることがあるんだ」って、意外な人間性を知れてうれしく思ったんですよね。
しかも、このときだけは真ん中で変身ができたんです! いつもセンターに立っている主人公を羨ましく思っていたので、ひとつ夢が叶った瞬間でした(笑)。
――やっぱりセンターでの変身には憧れるものなんですね(笑)。少し話は戻りますが、本作は芸能活動復帰作ということで、当時はどんな意識で撮影に臨まれていたんですか?
立石 1年間、毎週メインでテレビに出られるありがたみを忘れないように。その気持ちだけは、変わらず持ち続けるよう意識していました。モデル時代に活動休止を経験していた分、レギュラーで仕事がもらえるありがたみを、人一倍、感じていたんだと思います。
連日の撮影を当たり前に思っちゃいけない。現場に慣れるのは大事だけど、それで緊張感がなくなるのは、自分にとっても、作品にとっても良くない。少しでも気が緩みかけたときは、自分を見つめ直す時間を作って、初心を取り戻した上で翌日の現場に向かっていましたね。
――す、スゴい! モデル時代の経験があるにしても、なかなかそこまで意識できる人は少ないと思います。同世代のキャストのみなさんとの関係性はいかがでしたか?
立石 セラ/ジュウオウシャーク役の柳美稀ちゃんは、現場で唯一の女のコ同士だったこともあり、飛び抜けて仲が良かったです。美稀ちゃんが出演している舞台を観に行ったり、たまに遊びに出かけたり、今でも大親友と呼べる存在ですね。
もちろん、男のコたちとも仲良しですよ。でも正直なところ、もし美稀ちゃんがいなかったら、私は現場で孤立していてもおかしくなかったです。
――そ、そうなんですか?
立石 良くも悪くも真面目すぎたんですよね。先ほどもお伝えした通り、私は、とにかく女優として結果を残したい気持ちが強かったから、自分の出番がないときでも、下園さんのお芝居を集中して見学していたんですよ。そんな私に対して美稀ちゃんは、「晴香ちゃん、一緒にお菓子食べよ?」って(笑)。
――作中では、立石さん演じるアムの方がマイペースで、柳さん演じるセラの方が真面目でクールなキャラクターでしたけど、リアルは真逆だったんですね(笑)。
立石 セラもわりと甘えん坊な一面があるので、真逆ってほどでもないですけど、初めのうちは「もっと現場に集中させてよ」と思いながら、そっと離れるようにしていました。
それでも美稀ちゃんは、空き時間のたびに私を探して、積極的に話しかけてくれたんです。「このコ、感じ悪いな」と思われてもおかしくない対応をしてしまっていたのに......。
――立石さんが「現場に集中したい」と思う気持ちも分かりますけどね。
立石 撮影期間が1年に渡る作品のなかで、いかに人間関係が大切か。当時は、私よりも美稀ちゃんの方がわかっていたのかもしれないですね。でも、安心してください。今となっては、私の方が美稀ちゃんへの愛が強いくらいなので(笑)。
他のキャストの方もそうですが、私からお芝居の相談を持ちかけることだってあるし、新しく舞台が決まったと聞いたら、自分のことのように嬉しくなります。みんな、今も繋がっている、かけがえのない仲間たちです。
素敵な出会いがあったという意味でも、活動復帰して最初に出演した作品が『ジュウオウジャー』で良かったなと、心から思います。
――最後に、立石さんが思う『ジュウオウジャー』及びスーパー戦隊シリーズの魅力を教えていただけますか?
立石 スーパー戦隊の魅力は、やっぱり誰が見てもカッコいいところじゃないですかね。私も、自分が『ジュウオウジャー』に出演したのをきっかけに、ほかのシリーズを見させていただくようになったんですけど、どの作品も仲間同士の絆や正義の在り方がきっちり描かれていて、つい夢中になってしまうんです。
特に好きなのは、『侍戦隊シンケンジャー』(2009~10年)、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011~12年)、『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(2018~19年)の3作品。敵の幹部にも悪に染まるなりの背景があったり、そのシリーズ特有の能力や戦闘シーンがカッコよかったり。子どもにも分かりやすく、大人にもグッとくるエピソードが多いんですよね。
その中でも『ジュウオウジャー』は、比較的王道な作品だと思っています。動物というモチーフも分かりやすいですし、"命の大切さ"や"人との繋がり"など、普遍的に大切なことを教えてくれる物語になっているので、10年後、20年後に見ても、感動できるはずです。
●立石晴香(たていし・はるか)
1994年9月28日生まれ 大阪府出身
○13歳で『nicola』専属モデルとしてデビュー。昨年、 ABEMAの恋愛番組『恋愛 ドラマな恋がしたい』に出演し話題に